120話 うさぎさんとプライドの高そうな人? その3
【自給自足できる人だからこそできる人知を超えた大技じゃね?】
腹ごしらえを済ませて地上へ。
サオさんの指示のもと、辺りに注意を払いながら大敵を目標に森の中を進む。
「注意してください。私が仕掛けた厳重な罠が結構たくさん森中にしかけてありますから」
「え、まじ? 見た感じなんの変哲もない感じだけど…………ってミヤリー!?」
先頭に立つサオさんと話していると、ミヤリーが横にある木で1度立ち止まる。
吊された、ステーキを目に付け、よだれをとろんと垂らしながら見苦しい格好する彼女は今にも、何かフラグを立てるような気がしていた。
「……あのミヤリーさん、それ絶対食べちゃダメなものなのでは?」
「いや大丈夫でしょ? ちょっとさ小腹空いていたしたーべよっと!」
「……み、ミヤリーさん!?」
ミヤリーがステーキに手を付けたその瞬間に。
草むらに忍んでいた、ワイヤーネットが作動し、ミヤリーを取り囲むように捕らえそのまま持ち上げられ細い木の枝に釣らされた。
「あ、ミヤリーさん? そ、それは」
音に反応し敏感にその木の方へ向くサオさん。
口に出さずとも、大方察しはつくがなんでコイツは罠の区別がつかないのだろう。
「それ私が仕掛けた食料モンスター捕獲用罠です。それとミヤリーさん迂闊に網を触らないようにしてください」
と注意をしたときには既にて手遅れで。
ミヤリーは興味本位で網を無理矢理こじ開けようと引っ張り出す。
すると。
ワイヤーが電熱を発するように網状に流れる。その電気はミヤリーの体へと一瞬にして流れていき。
「「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!!」」
ビリビリと感電し始めるミヤリー。
数十秒。彼女はもろにその電気を浴び続け電気が収まると、丸焦げになったミヤリーの姿がそこにあった。その姿はまるで黒く塗りつぶした人間みたいになりはて。
「ちょ! なによこれ死ぬかと思ったわ! アイテムなかったら今頃私棺桶化していたわよ!」
仕方ないので近寄り、1度スーちゃんと顔を居合わせて黒焦げミヤリー(仮)を鼻で笑うように見つめる。
おぉ哀れ哀れ。
「な、なによ2人してその目は……」
「ぷっ」
「ぷっ」
「ミヤリーお前地雷踏んだな。はいざまぁ」
「か、返すこ、言葉が見つからないわね。……ってちょ、ちょっと! 2人で置いて行かないでよ! た、助けなさいって!? あの~? ちょっとおおおおおおおおおおおおお!??」
置いて行くように無言でその場を立ち去る。
いや、単にサオさんに助けてもらおうと呼んでこようとしただけなんだが、うるせえ少しお黙り。
「私の注意が行き届いてなくてすみません。ミヤリーさんすぐ助けますね」
サオさんがすぐに駆けつけて、自前の剣裁きでワイヤーを切断し、黒焦げミヤリー(笑)を救出。……いやこれ明らかに……失敗した料理みたいなんだが……。ぷっ。
それが顔に出ていたのか、ミヤリーは私のそんな顔を見て鋭いガン付けをし近づき。
「な、何がおかしいのよ!? ってスーちゃんまで! 確かに黒焦げなっちゃったけど……あれなの? 私ってこういう笑いを取る立ち場という立ち場になってるの!??」
「うーんよくわからんけど、そういうことでいいんじゃね」
「よくないわよ!」
半ギレするミヤリーさん。
いや、君さぁ自業自得って言葉知っているかな。……お前絶対村人の話聞かないタイプだろ。ゲームの説明書はちゃんと最初読めって習わなかったのかい。まあ言っても話通じなさそうだから言わないけど。
「ふっ」
「だから笑わないで! ちゃちゃんと話は聞くから」
☾ ☾ ☾
巨大なモンスターと出くわす。
イモムシのモンスターだが、蛇体をぐねぐねと動かしているところが気色悪い。
「ジャイアントワームですね、しめつけ攻撃には要注意しながら戦いましょう」
どうでもいいけど、それ"幼虫"と"要注意"をかけたいわゆるダジャレなんですか?
なんでそんなくだらないことを私は考えてしまうんだと自分にツッコミを入れつつ。
「じゃあ挨拶代わりの攻撃でもしようかな……とぅ!」
地面を大きく蹴ってジャンプ。
今はノマアサを着ているので跳躍力を瞬発的に向上させてみた。片足を曲げもう片方の足はとことん伸ばす。
1度やってみたかった感はある。ヒーローものでよく怪物を仕留めるときに使うであろうあの技。
すると伸ばしている方の足が火の衣を纏い、地上に落下する隕石のように燃えたぎる。俊敏な速さで敵の体に突撃し、貫きはできなかったものの敵のムカつくキモ顔に一蹴入れる。
そうだまた技名言わないとな。
んじゃ単純に命名しましょうかね。
「ラビット・キック! ……ついでに10倍上乗せ」
気分で10倍上乗せした。すると小柄な私の攻撃に対して、ジャイアントワームは大粒の唾を辺りにまき散らしながらその場に伏する。
ちぇ仕留め損なったか。
「こ、これが愛理さんの攻撃。シホから聞いていましたがこれほどとは」
熟考するようにサオさんは考え込むポーズを取る。
そのタイミングをついて、ジャイアントワームは起き上がり考え込む彼女の方へと襲いかかる。
「ふぅ考える時間も与えてくれないわけですか。……まぁいいでしょうそんなに戦いたいのなら一瞬で仕留めてあげますよ」
今"一瞬"とか言わなかった?
そういえば、一寸剣術を使うとかどうとかって言ってたけど結局それって一体なんなんだろうか。
ジャイアントワームの体に悠々と地面から飛び乗り、そのまま蛇体の道を駆けながら自前の剣を鞘から抜いた。
確か名前あったよね? 剣の名前がさ。
一撃斬刀流っていう中二病心くすぐられそうな剣の名前。……それを抜くとその場から1歩も動かずひたすら暴れ狂うジャイアントワームの上で振り落とされることなく、何かを待ち続けるように目を瞑る。
「……な、何をしてるんですか!? サオさん何故動かないんです!?」
不安がるスーちゃん。だが彼女の顧慮に耳を傾けず、体制は変えず敵の出方を。
ジャイアントワームは、後ろにいるサオさんを察知すると。胴体を無理矢理ねじ曲げ。
数百本はあるであろう歯のある口を開いて飲み込もうと攻撃。
「今ッ!」
一瞬力の入ったサオさんは大声を発し瞑っていた目を開眼させ。
「一寸剣術……閃疾速斬!」
一瞬の敵に飲まれる寸前の出来事だった。
その瞬間に私達は目を丸くさせる。……飲み込まれそうになる直前にも関わらず彼女がその技を言い放つと、風を穿つような一瞬の斬撃が炸裂し。
バサァァァァァァアァァァ!!
ジャイアントワームの体は胴体ごと、6等分斬るように四方に飛び散った。
サオさんは後ろの方へと、しゃがみ込むように着地し、剣を鞘に収める。
「あ、愛理……! ありのまま今起こったことの感想を言うわ…………。気がついたときには敵は散けてた」
「そ、それなぁ。なんだよあの尋常ではない速さの剣裁きは」
驚愕するミヤリーも状況がまるで飲み込めない状況で、私達が気がついた時には敵は倒されていた。
いや、一体いつ倒したんだ? 時止めとかそんなチート能力とか使っているのでは……と思いもしたが、断じてそれはないと検討がついた。能力を多用する種族じゃなさそうだし。
それでも素であの剣の扱いは、並レベルの人間が使えるレベルには到底見えない。
「…………もしやあの剣に秘密が?」
サオさんがこちらへ詰め寄り。
「さてまずは1匹目討伐しましたね。ご協力感謝です。残りあと4匹ですかいずれも大型のモンスター狙いですので用心してくださいね。さぁ先へ進みましょう」
「う、うん」
先へ進む道中に、私は解析機能を起動させ少し彼女の持つ、武器の詳細を調べることにした。果たしてその武器の強さの秘密は一体。