117話 うさぎさん、いざ山岳地帯の里へ その2
一家揃って力持ちなんですよ byシホ
【友達の家に始めて上がるとき、非常に挨拶するの緊張するんだよねこの気持ちわかる?】
リホちゃんに誘導され、村一番に大きな屋敷に案内された。
シホさんの妹だけあって、力もそれなりに。
ギィィ!
「いって! ……あのリホちゃんもうちょっと加減しておなしゃす」
ふいっとリホちゃんは首を捻ると、私の方に顔を向けて呟く。 ?の疑問符を浮かべる仕草がとてもシホさん譲りっていうか。
「え、これで普通なんだけどな。痛いの愛理さん?」
「うん、あなたのお姉ちゃんにいつもそれくらいの力で握られるからさ。ちょっと落とせない?」
「……わかったよ。今よりちょっと緩めるから」
普通とは一体。この村に住む人達はみな、リホちゃんみたいに力量が高いのかな。……ええい剣練の里の里に住む人は全員化け物か。
というか今、私おなしゃすって言ったけど、通じたんだが……まじで?
シホさんに時々こういうスラング教えてはいるけど、なんで彼女が知っているのだろうか。少しお姉さん気になるよ。
「その愛理、あのリホちゃんって子。愛理の言葉を理解しているようだったわね。……どこで覚えたのかしら」
「…………あ、もしかして」
「スーちゃんなんかわかったん?」
後ろで必死についてくる愛らしいスーちゃんは何か思い当たる様子を浮かべていた。うんうんと首を縦に振りだして私に言う。
「……あの、シホさん言っていませんでしたっけ? 定期的に故郷当ての手紙を送っているって」
「たしかにそう言ってたね。ときたまひょいっとギルドに用事済ませてくるとか私に断ってるけど、もしかして手紙の郵送なのかね?」
時間が空いたとき、シホさんはいつも『すみません愛理さん、ちょっとギルドに用事あるので行ってきてもいいですか?』と、ときたま私に言い外へ出て行っていたが、もしかしたら手紙案件なのかもしれない。……とすると。
「……予想なんですが、故郷当てに愛理さんの面白話の中で彼女が教えたんじゃないですか?」
「か、かもね」
「あ、そろそろつくよ。お父さん待ってるから。入って入って」
豪華な装飾が目立つ、通り道を真っ先に進むと両面開きの大扉が。金箔で塗装されているが豪華すぎじゃね。
……ところどころ高そうな名画などが飾られてもいる。……おっとあれは。
丁度リホちゃんが止まっている間にあるものに目が止まった。
小さな写真立てのような画架に、シホさんらしき少女と、他4人が写った……記念写真のような集合絵? が描かれていた。
……やべえよやべえよ。この一家あと1人シホさんのような人いるの恐ろしすぎだろ。……というかママンわっか!? ……大人びたシホさんじゃん美人一家はいいぞ。
父親の方も端正でかっこよく髪のおろされたヘアスタイルが決まっていた。……抜け目ねえじゃん。
「お父さん連れてきたよ~」
「あ、リホちゃん!?」
見とれている間にリホちゃんが扉をオープン。時間はそう待ってくれなかったらしい。
と先ほど絵に描かれていたシホさんのお父さんが私の前に立っていた。若々し過ぎるハンサムな見た目に、腰に丈夫そうな剣を鞘に仕舞い携えている。
すぐ横にはシホさんのお母さん? の姿があり。……写真同様可愛すぎる見た目にどうみてもそれは「年齢詐欺って怖くね?」という気持ちで溢れる。年齢とは一体(哲学)
「ち、ちわ」
あ、やべいつもの癖が。
社交辞令? なにそれおいしいのしらんがな。
「……愛理さん少しは……」
「なんかごめん」
すると私の方をジロジロと。……気に障りましたかね?
「むむむ。……君が、愛理さんかな?」
「あ、そうですけど」
「そんなにかしこまらなくていい。……話はいつもシホの手紙で教えてもらっているよ。……まさか本当にうさぎの服をきているなんて」
優しい人でよかった。こういう所も親譲りなんだろうなシホさん。
っていうかシホさんいつも何手紙に書いて送っているんだろうか。まさか私の極秘情報を流しているんじゃ……。(ひひっと悍ましい顔をしたシホさんを思い浮かべる)
いやいやシホさんに限ってそれはありえないって。
険しい顔から柔らかめな表情になると私に近づいて、手を差し伸ばしてくる。
「これはどうも。……後ろにいるのが、ステシアのスーちゃん、その横はミヤリーっす」
私に続いてミヤリーとスーちゃんが首肯する。
「リホ。間違いなく愛理さんなんだな?」
「うん、だってうさぎの服着ているし、見かけたから一発でわかっちゃったよ」
判断基準そこなんだ。
私の横に立つリホちゃんがお父さんと会話をする。すると気にかけるようにお母さんも語りかけ。
「リホ? 力強く愛理さんを引っ張ったりなんかはしなかった? ……お母さん少し加減するよう言ったんだけどできた?」
「う、うーんとね。ちょっと怪しいかな」
「はぁほんと誰に似たんだか。愛理さん娘がご迷惑にならなかったかしら?」
「いえいえとんでもないですよ。……でも意外ですねお母さんもシホさんにとてもそっくりで」
「ところで、シホの姿が見えないんだが……どこにいるんだい?」
お父さんはキョロキョロと我が娘を探し始める。
と私は事情を説明し。
かくかくしかじか……。
「そ、それは本当か? ……シホがあの技を。申し遅れた私はここの族長だ。そしてシホの父親だ」
横にいるのはシホさんのお母さん。
5人の家族、シホさん、リホちゃん、長女(現在不在)、お母さん、お父さんの家族構成だ。
長い間、自給自足でこの村を立ち上げて行った代々続く家系の立派な名家みたい。
彼女がこの前禁術を使ったことを打ち明けると、お父さんの顔が危うくなり口ごもった様子を見せる。
「あのすみません、娘さんはいますよちょっと待っていてください」
バッグから眠っているシホさんを出す。
光のシルエットを作るように現れたのは、小さな吐息を吐くシホさんの姿。
それを見て、お父さんは彼女に駆け寄り、声をかける。
「し、シホぉ!? どうしたんだ! 目を目をあけてくれええええええ!!」
「お、おねえちゃん?」
「すーすー」
抱き起こし、必死に体を揺らしてやるがシホさんは一切起きない。
いやそのシリアスムードてんこ盛りなマンガやアニメによくありそうなシチュエーションされても困るんですがそれは。
このあと赤字で
THE END
って表示されたり……。
「愛理さん」
視線が私の方に向いて。やべ怒られるかこれ。
「ちょっとお話を頂けるかな? この子に関する事、そして彼女の秘密を」
「いいっすけど、どんな内容で?」
「でもあなた、あの子にも教えないといけないんじゃ」
「おっとそうだった。ごほん。だがその前に……だ。ちょっと連れてきてほしいやつがいる」
唐突にまたお使いイベントですか。……面倒なモンスター狩りは勘弁ですよ。
「長女……つまりはシホの姉である、サオを呼んできてくれないか。またあいつは山にこもって修行に励んでいるに違いない。シホの事を教えるためにもサオのいる、森にちょっと行ってきてほしい」
新キャラ登場フラグktkr。
サオさんねぇ。年齢がどれくらいか知らないけど、まあこれ家族問題案件だから私が断る理由はあるまい。
「……連れて帰ってくればいいんですか?」
「あぁ。だがあいつはちょいと変わった性格でな。用心してくれよ」
用心ってどういう意味? ってなんでそんな汗流してんのさお父さんん!?
それは行ってみてからのお楽しみということか。……いや逆に気になるわ! 福袋開封したくても開封できない状況に置かれた子供並に気になりすぎている!
「どういう意味かしら愛理? お父さんが気まずそうな顔をするなんて……」
「とりま、行けばわかるやつじゃね?」
「そっか」
「愛理さん、シホのことは気にしなくていいわ。この子は部屋に運んでおくから」
「ありがとうございます」
そう言うと、シホさんのお母さんは大きいシホさんの体を片手で持ち上げ……軽々と、奥の部屋に運んでいった。……え、真の力持ちは実は別にいたってパターン!?
お母さんを見送りながら呆然と立つ私にお父さんが話しかけきて、私は我に返る。
「愛理さん」
「うわぁ! お、お父さんどうしたんすか?」
「む、娘のためにもサオを……サオを必ず連れて帰ってきてください! お願いです!」
「あのお父さん! 分かった分かったからそんな大粒の涙ながさないでよ! ……あぁもう」
この一家はどんな事情を抱えているか知らないが、とりまそのシホさんの長女のいる近くの森へと向かうことに。
というかお父さん、見た目に似合わず娘さんを溺愛しすぎなんじゃね。