111話 うさぎさん、シホさんの故郷へ向かう準備をする その1
久々にあのお方登場? です
【ニックネーム付けるのにネーミングセンスなんて関係ねえだろ】
日を改め次の日。
私が寝ている間にスーちゃん達は、ギルドに依頼の報告は済ませたようで聞いた話によると。
聞く限りまだ殲滅確認はできないため、今回のクエストは未達成にすまされた。まあ無限に自己再生を繰り返す敵だから、シホさんの力を持ってしてもまたヤツは再び、体を再生していることだろう。
だが、私達の調査でだいぶ情報が収集できたようで、報酬の10割中5割が支給された。……我ながらあの未確認モンスターことバイタスとの戦闘は無駄ではなかったということだ。
「それであの未確認生物の名前を決めてくれませんか?」
丁度今お姉さんに呼び出されて話している最中。
どうも未確認モンスターの名前をこの際だからつけちゃおうという、話の流れでスーちゃんとミヤリーはお姉さんに聞かれたようだが、困りに困った果てにその名付けは私が起きてからつけてもらうことにしたらしい。
そして今丁度名前を付けている最中だが。
「うーんそだね」
違う名前にしてもいいが、図鑑通りの名前にした方が覚えやすくていいでしょ。……元の名前もちょっと覚えづらくはあるがないよりはマシなので私は。
「バイタス」
「ふむふむバイタスですか。……承知しました。ではこれからそのモンスターは未確認モンスター改めバイタスと命名しておきますね。またバイタスの情報が入り次第クエストを用意しておきますのでよろしくお願いします」
「お、おうふ」
視線を1度逸らし感慨深い表情で慮る様子を見せた。それは染み染みと探偵さんが取り調べを行っているような感じで。そんな深い意味ないよお姉さん全部AIさんが教えてくれただけだから。
【愛理さんもう少し自分で考えてみたらいかがでしょうか?】
うっさい! 出し抜けにそんな露骨な事言われても困るからつうかウインドウ邪魔。自重しなさいAIさん。というかAIさんって性別どっちなんだろ。まあいいわ回りくどくなりそうだし聞くのはやめにしよ。
丁度お姉さんの目線にウインドウが重なり、モザイクのようになっている。……せめて上に付けてお姉さんかわいそうだから。
「バイタスね、意味はよく分かんないけど覚えたわバイタス!」
「因みに深い意味なんてあまりねえからな?」
「あ、そなの?」
ぽかんとするミヤリーを余所にギルドを後にするのだった。
☾ ☾ ☾
バイタスの事はギルド側で情報を冒険者達に流すらしい。注意を呼びかけ迂闊に興味本位で近づかないようにと。あぁ危険だからねあいつは。
山にマムシがいたら全員に注意を呼びかけるあんな感じでしょ。ま、私達もヤツの姿をみても無視することにする。
「それでようやくシホの故郷……剣練の里に行けるわね」
「……シホさんは宿屋で休ませていますが、彼女はどうしましょう」
このまま放置してお留守番させるのが彼女にとって安全ではあるが、どうせだし一緒にシホさんの故郷にいきたいな。……それに仮に起きたとして『なんで1人にしたんですかぁ~?』みたいな面倒くさい絡みが発生しそうな気がするので私は。
「うーん連れて行く。1人じゃかわいそうだしそれにみんなと一緒の方が楽しいでしょ」
「……いいですけど、どのように彼女をおぶれば」
「それはあれだスーちゃん! "気合い"で」
気合いでなんとかなるレベルじゃねぇぞおい! とは言わないの諸君。
まあ一応バッグを経由して彼女を休ませることは可能みたいだし……これは決して虐待ではないよ。
「……あ、そういえば愛理さん不思議なバッグ? 的な物がありましたよね。あれって大きさ問わずなんでも入っちゃったりします?」
「餅の論。シホさんには申し訳ないけど、暫くはそこに入ってもらおうかな」
ゆ、許せシホさん。起きたら美味しいおにぎりたくさん食べさせてあげるからさ!
「……なら安心しました。では準備ができ次第……明日でも出発しますか?」
「…………だね。シホさんには早く起きてもらわないと正直困るし、善は急げつうことで明日でも出発しよう」
「あ、私今のうちにドーピング系たくさん買ってくるわ」
そんなことを言っていると横からミヤリーが、汗水垂らしながら言い踵を返す。
おっとチキンモード発動ですか。まあ対策は大事だからね。おいでも無駄遣いはすんなよ?
「使いすぎるなよ? もしそんなことしたら色々詰みになりかねないから」
「それじゃ! ひとっ走り行ってくるわ! んじゃまったあとでね!」
と土煙を巻き上げながら疾走していくミヤリー。
げほげほ。もうちょっと加減しやがれ。
☾ ☾ ☾
【旅先でトラブルあるのは当たり前だと思う。なのでメンテナンスはめっちゃ大事なんじゃね】
2人になった私はスーちゃんと時間潰しに街をぶらつく。
いつも通りに盛況だが、これがこの街の平常運転である。武器屋行くとまーた変な武器とか売れてないわな? 物によってはモザイク指定受けるかもしれないからそれだけは勘弁じゃ。
すると一軒の出窓店に立ち止まる。……メニュー表には
クレープ 各味 銅貨 5枚
パフェ 銀貨2枚
リーベルティー 金貨5枚
と洋菓子類がズラリと書いてあった。というかリーベルティーたっか!? 素材拘ってんのかな私はリッチ系の女子でもエンスタ映えを狙いに行くような柄じゃない。無理だこれはやめておこう。
「……お菓子がたくさんありますね。……このクレープというものを1つ頂きたいのですが」
「よし、それじゃ私はこのドーナツにしよう」
注文も決まったところで、私が店員に話しかけようとすると。
「すんませーーーん! あのこの……………………って」
カウンターの方に視線をやると、意外な人物がいたので唐突に言葉を失った。
「ふ! 貴様は仲宮愛理! ここであったが100年目! いざ尋常に!!」
「…………なんでお前こんなところにいるのさ」
店番をしていたのは。
頭部に2本の触覚が付いた……体色が黒い。
あれこいつは。
どこかで会ったことあるなと思っていたら、なんとそれはナメップ星人のブラフだった。
☾ ☾ ☾
「勝負なんかいいからさ。……というかお前こんなところで何やってんのさ」
「フン! 聞きたいか!? 聞きたいか……なら特別に答えてやってもいいぞ!!」
相変わらずこの態度が滅茶苦茶腹立つわぁ。殴っていいですかねみなさん。
「勿体振るなよ。……というかお前いつぶりよ。多分2章ぶりじゃね」
「そこは作者の都合ってやつだろ」
尖った顔をしながらこちらをちらちらと。胸なんか見ても薄い本展開はないからな。……やったら殴る逃げようとしても殴る。はい暴力で解決。いやそれはだめか。
「貴様を倒すため、再びこの地球を訪れた。途中まではよかったんだけどな」
途中まで?
なんか事故った系かな。
「整備が甘かったせいか、機械がパンクしてな運よくここに落ちたものの、資金もそんなになかった。……でだ」
「…………」
「仲宮愛理の対策も兼ねて、少々地球に暫く滞在し人々の観察も兼ねて、資金稼ぎをすることにしたのだ! ふふ俺って天才! 賢いだろぉ!? ほらそんな顔してないで褒めろ褒めろ!!」
う、うぜええええええええええ!
「つまりこうか。お前はUFOがなんらかの不備でぶっ壊れて直す金がなかったもんで暫く地球の観察も兼ねて資金稼ぎ……つまりバイトを始めたと」
「うむうむ」
「……なんという不幸な事故でしょうか。シリアス系の話だったら笑えませんね」
そういう話の展開はあまりないからスーちゃん。
「いや私の対策取らなくていいからさぁ。というか今仕事中でしょ? 真面目に働け!」
「フン、それはそれ。これはこれだ」
はい出たよ、別物にする系の言い訳。よしこーなったら!
大声で、奥の奥の部屋に聞こえるような大声で叫ぼうとする。
「すみませーん!! ちょっとこの店員めっちゃうざいんですけ……d」
「「わわわわわわわわわわ、わかった! わかったから! 言わないでおくれ……。ここの店長めっちゃ怖いからな。……代わりに好きな物それぞれ1つだけ無料でやろう!」」
慌てるようにブラフは私を止めようとする。口を塞がれたので息苦しい。
すぐに解放してくれたが、取引きとして好きな物1品くれると持ちかけてきた。……まあ丁度良い。では遠慮なく。
「んじゃ私はドーナツ」
「……私はクレープでチョコでお願いします」
注文品を食べている間、しばしそのバイトで地球滞在中のブラフに少々耳を傾けるのだった。
……もしかしたらこの間のバイタスの事を何か知っているかもだし。