108話 うさぎさんの戦士危険な賭けに出る その2
【あまり使いたくありませんでしたが、これは仕方ないかもです】
眼前に気絶する愛理さん。
私達3人(ミヤリーさんは棺桶の中)の中央には愛理さんそっくりな姿をした未確認モンスターが。体色が真っ黒なその敵はなんの躊躇もなく狙い撃ってきます。
ドドドドドドドド!
手に持っている銃をこちらの方面へと回すように撃ってきました。丁度その視角は私とスーさんが両隣に立つ位置。射程的には狙いやすい場所でした。
まずいです。このままではスーさんと私がやつの餌食に。私は剣を抜き高速で放たれる銃弾を。
「させません!」
自前の剣裁きで数百発にも及ぶ弾丸を垂直に切り落とし、攻撃を凌ぎました。その隙を突いて私は瞬間移動をし、敵の背後に回ります。愛用の剣を横に振るうように斬り裂き攻撃。
「…………ッ!」
ですが視線1つさえ変えず、拳でその攻撃を受け止めました。力量の高い私でも相手側が力は上ということを染み染みと感じました。
未確認モンスター片手で拳を作り私の胸元へパンチ。
カーン!
「…………ッ!?」
「ざ、残念でしたね、この胸当ては他の防具と違ってとても頑丈なんですよ!」
装備している胸当てに助けられました。頑丈さは普通に売られている防具と違い非常に耐久性能が高いです。まあその分非常に重いですがね。
背中に付けている中くらいの大きさをした盾を前に出して、敵を押しのけます。
防御が間に合わなかったのかそのまま向こうにある大木へとぶつかり距離を遠ざけるのに成功します。
「……なんとか1度ダメージを負わせることができましたね」
「スーさん、今のうちに愛理さんを。今救出しないとまた襲ってきますよ」
少し身震いしながら立つことが困難な様子。どうやら盾の衝撃が思った以上に効いたみたいですね。
この時間を使いスーさんに愛理さんの救出に向かわせれば助ける事ができます。……私も行きたいところですが、不意を突かれて攻撃を食らう可能性があるので、ここはスーさんに任せることにしました。
スーさんは魔法で愛理さんを移動させ近くまで下ろすと、魔力を感じ始めました。
生命確認か何かでしょうか。……そういえば魔法使いさんは魔力さえ感じられれば人の生死がわかるんだとか。……というか足で行かないんですね危険な相手ですからなおさらか。
「シホ、どうせなら私も助けて欲しいんだけどね。まあ後回しでいいけど。……それで秘策あるの?」
「いえ全然」
「ノープランなの!? みんなで仲良く棺桶送りとか私嫌よ!?」
「……ミヤリーさんいくらなんでもそれは大げさすぎですよ。移動魔法でこちらに移動させますから」
とスーさんがミヤリーさんの棺桶をスーさんの方へ。丁度私の後ろです。
ドンドンと棺桶を叩きながらなにやらしていますが、私には彼女が生きているのか死んでいるのか区別がつかないです。まあ愛理さんがいつも彼女のこと云々言っていますが、これが俗に言うご都合主義的なものなのでしょうか。
「……それでシホさん本当に何もないんですか? ……その……私にはシホさんがなにか秘策を持っていると感じますが」
「そうね、シホならなにかあるんでしょ、強力な技の1つや2つが」
「……」
「どうしたのシホ黙ったりして」
それに私は応じることができず、いつもの笑顔を彼女達に見せいいます。
「その1ついいでしょうか? ……もしも私が目覚めないことになっても私を見捨てないでもらえます?」
私のその質問にスーさんとミヤリーさんは。
「? ……どういう意味ですかそれ。よく分かりませんがそうなっても私達はあなたを見捨てませんよ仲間ですから」
「当然よ、シホは私達の大切な仲間だもん。……ていうかこんなときに演技でもないこと言わないでよ」
「……そうですかありがとうございます」
「シホ?」
「……シホさん?」
それを聞いて安心しました。もし見捨てるようでしたらどうしようかと。自ずと不安が希望へと変わっていき、気づく頃には恐怖すら忘れていました。
……秘策はあります1つだけ。それは私が昔封印した危険な大技です。
父からは本当に大切な者を守るときだけしか使ったらダメだと言われたことがありましたが、……そのときがどうやら来たみたいですね。
「先に謝っておくので聞いてください。きっとお二人……いえ愛理さんにもとても迷惑かけると思います。……それでもみなさんを守れるのなら私は」
私はその力の事を2人に打ち明け、ある程度のこの面々の打開策がこれだということを説明します。不安がこみ上げる様子でスーさんは愁眉を開こうとせず、ミヤリーさんは言葉を失うようなそんな声質でした。
「……それ本当ですか? …………そうですねきっと愛理さんが起きたらきっと悲しむと思います。でも今頼れるのはシホさんしかいませんし」
「ちょっとそれほんと危険ね…………」
「すみません」
「でももう時間ないんでしょ? ……この場を切り抜けられるっていうのならそれを存分に使って。……なあに後のことは私に任せないさいって」
ミヤリーさんが自信を持って答えてくれました。スーさんも納得が言ったかのようにうんうんと頷いてくれました。どうやらお2人は覚悟できたみたいです。
「……ほんと情けないです。私に魔力が殆ど残ってないせいかこんなことになるなんて。……でも私は信じていますよあなたがまた私達の元へ帰って来てくれるその日を」
「後のことは頼みましたよお2人共……では」
そう言って私はようやく立つ未確認モンスターの前に並びました。先ほどの攻撃が効かなかったような素振りをみせ、それは平然とした様子でした。
でもそう呑気になってられるのも今のうちです。なににせよこれから。
「…………!?」
「はああああああああああああああああ!」
精神を統一させ、体中に力を行き渡らせます。膨大なあふれ出るほどに感じさせるその力が漲ってくると強烈な衝撃波が私の周囲に幾度にも渡り発生します。十分に力が溜まった所で私は高々に唱えます。
「脅精の変異力!」
盾を180度回すと、爆音と共に体が真紅のオーラに包まれ辺りから赤い燐光が散乱しました。
もう恐れることはない。これで愛理さんとみなさんが守れるのなら。
私は愛理さんとの出会いと、今日までの事柄を思いふけながら戦いに臨みました。