106話 うさぎさんの奥の手 その2
【著作権侵害? うさぎさんにとってはそんなもの守備範囲外だから】
目の前に姿を現したのは、私そっくりな真っ黒なラビットパーカーを身に纏った私。
顔色はモノクロみがかった色で、少々色褪せたような感じ。私と同様にグローブ(黒)を付けているが、ほんと私にそっくりだな。
固有武器っぽいものはあるかというと。
「………………!」
カチャという引き金を引く音が聞こえると、私に化けたバイタスは真っ黒なラビットライフルを私に向けてきた。……私の持つラビットライフルと対照的な色である。
「やんのかてめぇ」
鼻で笑い少々挑発させてみる。……自我はないみたいだが表情が悍ましく見えてくるのは気のせいか。
すると黒い弾丸を放ってきた。数弾それは普段私の撃つライフルの飛ぶスピードと大して差がないくらいの速度だった。透かさず避け……はせず、丁度いま降りかかっている兎双本能の能力値を活かして撃ってきた弾丸を。
「ゴルァ!」
ドゴーン!
差は歴然だった。50倍となった私の前ではその攻撃は無力と化し、軽く力も込めていない拳を突き出しただけでその弾丸は触れた途端周囲に散けた後に爆散した。
爆風によって発生する煙の中を利用して、私はバイタスの近くへと詰め寄る。……暗い森の中と言えどもマップ機能のある私にとっては敵ではない。
位置は……右、右……左。
「そこだ! たああああああああ!」
動く物体をマップで捉えると、ミラクルラビットパーカーの光速を極限まで引き上げ敵の居場所まで一気に加速し、渾身の一撃を敵の腹部目がけて入れる。
「隙だらけだぜ……ラビット・パンチ!」
気配に気づいていなかったバイタスは私の声に気づくと、ふとこちらを振り向き存在を感知する。(視界は見えていないが)
間も置かない瞬発的な高火力の拳がバイタスの身を貫き、木をドミノ状に倒していき遠くまで飛んでいく。引きずった跡を辿ると、片腕が欠損する敵の姿がそこにあった。
表情1つ変えないその無表情さが非常に気持ち悪かった。あぁ普段の私ってこんな感じなのかと。……自分で自分を見るのもあれだが、なんかめっちゃグロいんだけど。……リスナーとかいたら『自虐乙』とか変な目で見られそうだが。
しかしまたしても当然のように再生を始め、先ほどの攻撃がまるでなかったかのように完全に治った状態で再び私に対峙。……やはり再生能力はチートはっきりわかるね。
「!? お、ちょ! 待てや!! おらららららららららららららら!」
次は一体どんな攻撃をしてくるのかと様子を伺っていると、パンチのラッシュを叩き込んできた。バトル物マンガでよくあるシーンに直面するが唐突な展開にテンパり、気がついた時には私の腕もバイタスの方に飛んでいた。
案の定殴り合いである。
50倍になっているのにも関わらず、先ほどと違い力の度合いが違った。スピードが増している?
微量に量が増えたぐらいなのだが……なぜに。
……もしかしてこいつ。やられる度に強くなるパティーン系のモンスターなのか。組み替えていたのは強力な体を使用して私に対抗していたためとか。
ぶつかってはまた衝突し、ぶつかっては再び殴り合う。互いに力のこもった拳を激突させ攻撃を交えた。
ドスンドスン! という衝撃派が当たり一帯に木霊し、衝撃に耐えきれなかった木は次々となぎ倒されていく。
力の差は五分五分といったところ。やはり私の理屈はあながち間違ってはいなかったみたい。私も何回かカウンターパンチからの叩き落としを食らい、地面に叩きつけられたが……問題ない。
「お返しだ!」
チェンジしてノマアサへ。十分に距離を取った状態の立ち居。相手は空中で浮遊しながら私の出方をひたすら待ち続けていた。……ナメプか? ふん舐められたものだ。……ならとっておきの物を今から見せてやる。
……これは今度シホさんに見せてやろうと思っていた大技。能力を使っていきなり習得した物なのだが、欠点が1つ。高火力な分魔力の消費が激しいっす。
シホさん並にすぐバテるような大技ではないが、現時点でのレベルだと連発出来るほどの魔力はない。撃てて……今は1回か。
両手平を合わせて開かせる。そこに大玉をため込むイメージをする。
「ラビットぉぉぉぉ!」
マンガの有名技を見様見真似で作った技だが、火力を補うには十分過ぎるスペックであった。……その一撃をバイタスに向けて解き放つ。
大きな光弾が私の手にでき、丁度良い大きさになったそれを敵に目がけて宙へ傾ける。
「渾身の一撃受けてみやがれ! ラビット・カノン!」
「……ッ!?」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
危険を察知したバイタスは軌道を変え射程外へと逃げる。
避けられた。
と思うじゃん。
でも対策しているんだよねこれ。
「ほいさ!」
巨大な光弾をバイタスの方向へと向ける。すると光弾……ラビット・カノンの軌道も変わりバイタスを一瞬にして追い込む。
「追尾できるんだよね! ほらぁ!」
あと大体兎双本能の持続時間は1分を切った。どうせなら惜しみなくいきたいと思った私は出力を最大にして、ラビット・カノンの大きさを拡大させ巨大な木を数百本焼き払うぐらいの大きさへと拡張させた。
素早さに追いつくことができず、バイタスはそれに飲まれ光の中へと姿を消した。
☾ ☾ ☾
あと30秒ほど。
シホさんに今いる場所を伝え、もし遅くなるようだったら来るように言った。……保険って大事じゃん。また私ドジしそうだし多少はね。
もしかしたらやつが生きているかも知れないので……もしそうなったら残った彼女達に任せるとしよう。
「さ…………さて、手応えは…………あったか?」
意識が朦朧し始める。これも兎双本能による野生の本能に支配されかけている証拠だろうか。頭がズキズキする。サーセン博士が強制気絶させる効果をつけるのも納得がいく。
小歩ながらも黒煙の上がる場所へ。そこへ近づくと。
「な…………なんだと!?」
あれだけ最後の力を振り絞って出したのに。
「…………」
ヤツは再生を完了させた状態で疲れ果てる私の前に立っていた。
つ、詰みですはい。
ノロい動きをする私の前に黒いラビットパーカーが私の背後に立ち。
「…………!」
グーパンを食らうその時。
タイミングを狙ったのかは知らないけど、意識が途絶え私はその場で倒れた。
「…………へ。いいのかそれともこれは悪いのか。こりゃもうわかんねえな」
と呟きながらガクと。
後のことはシホさん達に任せて少々そこで眠りにつくのだった。
必ず助けに来てくれるシホさん達のことを信じて。
(あとのことは頼んだよみんな あ、でも見捨てて帰るかは厳禁だからな!)
とりまみんな頑張ってくれよ。その間私はおねんねするからさ。ノシ!




