101話 うさぎさん達、ちょいとお散歩タイムです
【旅行から帰った後が一番切り替えが難しい案件】
旅行から帰ってきて数日が経った。
少し気が本調子でない私は今日、仲間と一緒に街の外にある草原を歩いていた。
歩くといってもちょっとしたピクニック気分。これといって強力なモンスターもでなければ、危険を促すクソモンスターにも出くわさない。なんという平凡な日だ。
みんなが私に手を振りながら遠くから声をかけてくる。
「あのー! 愛理さーん! そんな木陰なんかで寝てないでそろそろ動きましょうよ」
「ご、ごめん今日愛理さん眠いんだわ」
木の下で目を瞑りながら一休みする私を気にかけず、シホさんが私を呼ぶ。
出歩き始めたのは本の1時間前。丁度10時前くらいかな。今日は旅行の疲れがまだ残っているだろうという理由でクエストをするのはやめにして、代わりに気張らしに散歩することにしたわけだが。
最初はめんどくさいから出るの嫌だとシホさんに答えたら、彼女が拗ねた態度とったものだから後を引けず周り……ミヤリーとスーちゃんに気が引けるような目で見られ、なんだか背徳感を覚えた私は仕方なしに出歩くことにした。
本当は出歩きたくないんだけど。
「……あと5分くらい待ってすぐいくから」
とりま仲間に迷惑はかけられないので時間くらいを彼女に告げ、樹頭を見つめ始める。
この前もらった品物を手に上げながら。
「ったくとんでもない品物作りやがって。……まぁ悪くないんだけど」
重厚感あるこのカセット。
前回の話の続きになるけれど、あのあとひとまず狂政にこれを授かった。
ええと内容は。
☾ ☾ ☾
~数日前~
「え、ラビットフュージョンを改良した装置? こんなごついものが?」
「ふむ、まあそうだな。まだ試作器ではあるがな」
狂政からもらったそれを360度回しながら見て観察する。
近未来っぽい装置のような見た目に末端部分にはカセットのような差し込み口があった。
試作……ということはプロトタイプということでいいだろうか。またくだらない不備が過多あるような感じだと結局物語終盤まで使わず仕舞いに終わりそうだけど。
「ちゃんとした物だろうね?」
「当たり前だ。今回は愛理君に喜んでもらえる物前提に作ったから大体問題なーし」
「ふーんまあいいけど。それで中身の説明を教えてちょうらい」
狂政から聞いた話はこうだった。
これはラビット・ガジェットという特殊な変身アイテムで。ラビットフュージョンの機能を格段に向上させた物になる。
通常のラビットフュージョンだと2つのパーカーを1つにすることしかできないが、これはその数の制約がなく、いくつでも結合させることが可能。
ガジェットについているボタンを押すことで、起動しラビットパーカーチェンジが開始される。狂政曰くこの変身は通常の変身と異なって、コンマ1秒以下という凄まじい速さで変身を終えることができるんだとか。なにそのインチキ装置。
だがその機能には欠点が未だにいくつもありそれは。
「ふむ、推測の結果現段階でそれを使った場合、バグが発生する危険性があることがわかった」
「なぜに? どうしてそういうこと使ってもいないのにわかるのさ」
「我が友人サーセン博士に機械で割り出してもらったデータだ。……侮るなよ彼女の機械はなそこら辺の嘘っぱちの測定器より正確だ」
「まぢ?」
「うむ、例えば今日の天気を100%当てることが可能な機械があるからな。信頼性は高いぞ」
卑弥呼さん涙目。
でもそれほどに博士の実力は確かなものってことだ。……でその正確に割り出したデータからは今私がガジェットを使うと何かしら不具合が発生すると。
「どうも使うためには必要最低限のパーカーの数がいるらしくて……と愛理君今パーカーをいくつ持ってる?」
「ええと……今数えるから。うんと1、2、3……」
指を折り曲げながら今まで使ったパーカーの数を数える。
その数は。
「8かな。内1つは使い物ならなくて使っていないけれど」
「8かぁそうかそうか」
うんうんと頷きながら納得する様子を浮かべる狂政。
まさかとは思うけれど、使用条件にパーカーの数が関係しているとか。
すると指で数を作ってきて私に見せる。……4本指? この数は一体。
「使う為にはあと4つのパーカーが必要だ」
「よ、4つ? そんな最低上限あるんだ。なぜにそういう物が?」
「それはあれだろ、俗に言う"言わないお約束"的なノリで」
「あぁね。わかったよ」
なぜ12個のパーカーが使う為の最低条件なのかは不明だが、ツッコミ自重しろ的な発言でその辺は流すことにした。
まあこれはヒーロー物によくある究極変身系のアイテムみたいなものでしょ。なにかしらの条件という物がこれに要求されるわけだ。……うん! めんどくさい!
「とりあえず、そのガジェットは君に一旦預ける。でも定期的なメンテナンスをするために日が近づいたら電話をする……いいな?」
「おK メンテは大事よね」
整備を重ね重ねで完成品に近づけていくとかそんな感じだろうか。でもそれなら自分で管理しとけばいいのにね。未完成品を手渡されても使っているこっちとして非常に困る。
……なにか他に理由があるの?
「因みに持っていても何も無しというのも不便だったので、少し改造を加えた」
さすが狂政。私にできないことを平然とやってのける。そこにしびれはしないけど憧れはする。……嘘偽りもない事実を言ったまでだよ本当の本当。
「ちょっとボタンを長押ししてみろ」
「うい」
言われた通りにガジェットのボタンを長押しする。
【ガジェットプログラム】
と書いてあるウインドウの下に。
項目が5つほど。
【コードを入力】
【コード一覧】
【オプション】
【製品情報】
【閉じる】
「…………」
どっかで見たことあるぞこれ。
薄目に見ながら気になる項目をタッチしてみる。
「……じゃあこの項目を」
2番目のコード一覧を押す。
すると色々な一覧がズラリと出てきた。
【ケイケンチMAX】on/off
【ノウリョクチヲカンストスウチニする】on/off
【テキカラノダメージヲスベテムコウ】on/off
【ムゲンダイセキヲタイリョウゲット!】on/off
……など多岐に渡る。
「いやフロアクかよ!?」
「うむ、これがあれば困った時にいつでも……! って愛理君!?」
「私ね、ゲームはじっくり楽しみ派なんでこういうのいいから。別の機能しろ」
「は、はい」
結局フロアクの機能は撤去してもらい、私の能力をサポートする機能がついた一覧のある機能に書き直してもらった。
因みにあのチート機能はガチで反映されるみたいよ。
魔法より全然魔法していて草。もしもこんなチトコ(チートコードの略)をついた物を使うのであればみんなにどうやって説明すれば。因みに他の仲間にはちょっと大事な話があるということで街にあるゲーセンで時間つぶしするよう言った。……今頃はクレーンでもやっているんじゃないかな。
☾ ☾ ☾
そういうわけでこのラビットガジェットをもらった訳だが。
「お、カメラあんじゃん。……ちょいと使って見よ」
コード一覧(旧)改め機能一覧から【フルガシツカメラ 8K・4K】を選びカメラが起動。
目で見ている綺麗な光景一望が鮮明に小さな電子画面に映し出される。
試しに遊んでいるみんなの方を試しにパシャリ。
【ホゾンカンリョウ】
因みに写真は私のメニュー画面一覧にあるアルバムで見ることができるみたい。
印刷も私の力を介してやれば実物にすることもできるらしい。お便利。
そして楽しそうなみんなの写真を見ながら私はふと微笑んで。
「めっちゃ楽しそうだなみんな。……さてとそろそろいくか」
宙返りで立ち、みんなの方に大声で声をかけながらゆっくりと近づく。
「おーいみんな! ちょっといい物あるんだけどこれであそばなーい?」
「……えぇなんですか? ……それはこの間狂政さんにもらった。……いったいどんな物があるんですか?」
「それはやってからのお楽しみってことで」
「んもう愛理さん急に元気になっちゃって! さっきとは大違いですよ」
「まあそれが愛理らしくっていいんじゃないシホ。……ってその変な鏡気になるわねちょっと見せなさい!」
「頼む、みんなひとまず落ち着こうか!」
駆け寄ってみんなに記念撮影するよう言い、その日私達の集合写真を撮るのであった。
さて明日からまたクエストクエスト。愛理さんは明日も頑張って行くぜ。