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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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番外編 うさぎさん、仮想空間に入る? その6

文中に愛理が言っているように、後編はこちらの話で書きます(指のHPが0になりそうなので)

【コマンド入力はよくよく考えて撃つべし】


 ミヤリーと再会しようやく4人揃った私達。

 とはいうものの、出合い頭にまたもや死亡とはこいつ期待だけは裏切らないな。

 スーちゃんに魔法を唱えてもらいようやく蘇生すると、ドット化したミヤリーが足踏みをしていた。

 するととち狂ったように四方を縦横無尽に歩き回る。


「ハハハハハハハハッこれよこれ! あいりのいうケ゛ームた゛っけ? ゲームでもやっぱり外が一番よね!」

「おいミヤリーよろこんて゛いるところもうしわけないか゛、あまりうろちょろすんな」

「なんて゛」


 なんでってそれ分かるだろ。ここまできているなら。

 迂闊に動き回ればエンカウントでモンスターに不意打ち食らうはめになるぞ。


「いやおまえわかるた゛ろ。ここまて゛きているなら。……あるいていたらきゅうにモンスターにそうく゛うしておそわれたりしなかった?」

「あいり、わたしのステータスみた?」


 え。

 ミヤリーに促されるままステータスを見てみる。

 するとその驚愕の数値に言葉を失った。


 ミヤリー レベル1


 HP1

 まりょく0

 こうけ゛き15

 ほ゛うき゛ょ5

 すばやさ


 数値が全体的にジリ貧で、縛りプレイでもしているかのような低さだった。

 ミヤリーならしゃーないって……レベル1? ……えどゆこと。


「……レヘ゛ルせ゛んせ゛んあか゛っていませんけと゛、なせ゛こんなにひくいんて゛すか」

「なにいってんのよスーちゃん。わたしはきてからここからいっほ゜もうこ゛いてないわよ? うこ゛こうとはしたんた゛けと゛ね、モンスターにやられてす゛っとここにいたわよ」

「え、おまえ、もちものと゛うしたんた゛よ?」

「あ、それね、きょうせいさんにきいたんた゛けと゛、もちもののか゛いねんか゛このせかいないらしくて……んて゛すく゛しんし゛ゃったわけ」


 おーまいが。

 なんてこった。じゃあこのゲームにおいてミヤリーは馬車生活を余儀なくされる待機キャラみたいなものじゃないか。

 結局ラスボス戦手前で馬車でお留守番させられ、パーティからのけ者に。……これでどうやって戦えばいいんだよ私は。


「んし゛ゃきをとりなおしていく……わよ?」


 てぃろろろろろろ!


 ミヤリーが喋っている最中にエンカウント。

 画面が真っ暗になり、戦闘になる。

 だから迂闊に動くんじゃないって言ったでしょうが。歩数は慎重に数えながら進まないとエンカウントしちゃうからね。


【ファイターがあらわれた!】


「ちょちょちょ!? わたしまた゛しゃへ゛っているとちゅうなんた゛けと゛! なんて゛よ」

「ミヤリーおまえはあるきすき゛た」

「……たしかに。すすめは゛すすむほと゛にモンスターとのそうく゛うりつはあがってしまいますよ」

「え、そうなの?」

「あいりさん、とりあえす゛ミヤリーさんか゛しなないようにまもりなか゛らたたかいますよ」


 ファイターというモンスターは、言ってみれば全身鎧武装の小型戦士。体色がちょい黄色を帯びた見た目だが、こいうモンスターに限って強かったりする。

 先ほどの戦闘にて、シホさんが新たに習得した技を使う。


【シホはせんしのうけみをつかった! てきのまとか゛シホいってんにさた゛められた】


 言わば身代わり……デコイ系の技である。

 シホさんはただでさえ、高耐久なステータスに恵まれているので彼女にとっては相性のいい技である。これにより大幅ミヤリーの死亡ケースが減ることになり、パーティ崩壊の事例からは避けられる。まあその代わり1ターン彼女は攻撃できないが。


【あいりのふ゛んなく゛る! ファイターに356のタ゛メーシ゛!】

【ステシアはフレアをとなえた! ファイターに10ポイントのタ゛メーシ゛!】


「……まほうか゛よわすき゛る」


【ファイターはもうとっしんしてきた!】

【シホに100タ゛メーシ゛!】

【シホに103タ゛メーシ゛!】

【シホに98タ゛メーシ゛!】

【シホに105タ゛メーシ゛!】


 まさかの全体攻撃かよ。

 ていうか平均の火力高くないか。

 シホさん平気かなあんなタ゛メーシ゛食らって。


 シホHP150


 た、耐えやがった! そういえばさっきステータス確認したらHPが1000超えていたような。

 ゲームでも耐久は衰えないの!? シホさん有能すぎ。

 

【ミヤリーのこうけ゛き! ミス! ファイターにタ゛メーシ゛があたえられない!】

「えぇまたぁ~!? 1タ゛メーシくらいいいて゛しょ!」


 わがまま言うな。

 再びコマンドを入力する画面にうつり各々打ち始める。

 ピピピピ……。


【シホのきりは゛らい! ファイターに500ホ゜イントのタ゛メーシ゛!】

【あいりはラヒ゛ットハ゜ンチをつかった! クリティカル! ……ファイターに50おくタ゛メーシ゛! ファイターをたおした】


 おいおい クリティカルで50億とかおかしすぎだって。

 ダメージ計算式がこの世界どうなっているか知らんけど。でもさこれもうちょっと練り直した方がいいかもよ。


【ファイターをたおした! せ゛んいんに50ホ゜イントのけいけんちをかくとく 80Gをてにいれた】


 案外落とす金多くて草。

 ってミヤリーのレベル上がんないんかい!! まさかの経験値が多くて上がりづらいタイプのキャラだったりするのか? ……後で確認しとこ。


 戦闘終了後にまた幾度戦闘を交えながら、例の洞窟を目指した。

 途中ミヤリーが死にそうになったけど、そこはシホさんがうまくせんしのうけみを使って彼女を守ってくれた。

 スーちゃんが途中で回復魔法を覚えてくれたこともあり、戦闘が終了する度に彼女を回復回復と。

 大丈夫かな。ゲームとはいえ、シホさん過労死とかしないかね。

 ほどなくしてほこらっぽいドット絵が見えてくる。岩のドット絵にぽっくり小さな穴があいた場所が。


「なにかありますね」

「ここか゛と゛うくつし゛ゃない? たったとおわらせてはやくたいけんは゛んのホ゛スたおしにいくよ」


 こうして王様の言われた通りに洞窟の中に潜り、その元凶となるモンスターを倒しに向かうのだった。

 マップの中心部分にある洞窟にはどんなボスが待ち構えているか分からないけど、とにかくやるっきゃないよこれ。


☾ ☾ ☾


 洞窟内は作成中なためか、まだ所々手抜き感があった。

 でも出現モンスターやマップ構造は大方できていて、普通のRPGのダンジョンとしては丁度良い出来具合。

 洞窟内を回っていると宝箱が見えてきた。


「お、たからは゛こし゛ゃんラッキー!」

「また、ミミックとかて゛てくるんし゛ゃないの?」

「いやた゛いし゛ょうふ゛た゛って。し゛ょは゛んはそんなおにしようし゛ゃないから」

「そ、そう?」


 チキりだすミヤリーは私にミミックが出るのではないかと注意を促してきた。それってもう随分前の話じゃないかな。そうそうあれはスーちゃんが私のパーティに加入した直後だったよね。

 今でこそ私には透視のスキルがあるからいいものの、あのときスーちゃんの魔法がなかったらこいつはヤツの餌食になっていたのかもしれない。

 ここで私に注意してくれたのも、ミミックフラグが発生するのではないかという彼女なりの配慮か。


「と、とにかくあけましょうよ」

「お、おうふ」


 宝箱を開ける。


【あいりはたからは゛こをあけた!】


 おいスカだけはやめろよ。やくそうぐらいだったら許してやる。それ以外は捨てるわ。


【100Gをてにいれた!】


 いや金かい。

 アイテムだったらどうしようと思っていたけど金ならしゃーなし。

 分量はそこそこだが、序盤で拾える量としては十分な金額である。


「せ゛んめつしないようにしないとな。し゛ゃないとひろっとかねがはんふ゛んになるし」

「しんは゜いないって、いきてかえれは゛いいはなして゛しょ?」


「……」

「……」

「……」


「な、なによみんなた゛まりこんて゛え、わたしってそんなにしんか゛い(心外)!?」


 みな一同に彼女の言葉を果たして信じていいのか、不安にする様子をさせながら前へと進んだ。


 ☾ ☾ ☾


 ボスは4足歩行のドラゴンであった。名前はかえんりゅうという名前。

 全体攻撃と強力な物理攻撃を繰り出し、かつAI2回攻撃をしてくるモンスターだ。


【かえんりゅうはひのいきをはいた! せ゛んたいに50ホ゜イントのタ゛メーシ゛! ……ミヤリーはしんた゛】


 数分も経っていないうちにミヤリーがもろにダメージを食らい死亡する。いやばてるの早すぎだろ。バトルが始まってからそんなに時間は経っていないというのに。……まあせんしのうけみをシホさんに使うよう言わなかった私の判断ミスでもあるが。


「……あ、ミヤリーさんか゛」

「わ、わたしにかまわす゛あのト゛ラコ゛ンをこらしめちゃって」


 自分が足を引っ張っていると悟るミヤリーはかまわず倒してくれと言ってくる。

 いつもならギャーギャーはしゃぐのに、どんな風の吹き回しだ? まあいいや。


【ステシアはフレアをとなえた! かえんりゅうに5ホ゜イントのタ゛メーシ゛!】

【シホのきりは゛らい! かえんりゅうに590 ホ゜イントのタ゛メーシ゛!】


 次のターンが来て、再びコマンドを入力。

 早く戦闘を終わらせようとぶんなぐるのコマンドを入力し。


【あいりはふ゛んなく゛るをつかった! かえんりゅうは999999999999999タ゛メーシ゛をうけた。かえんりゅうはたおれた!】


 いやいやだからおかしいって。

 乱数調整しているわけでもないのに、即死するようなダメージを叩けたり叩けなかったりで数値はまちまち。

 とりまモンスターを倒し。


【かえんりゅうをたおした! それそ゛れ180けいけんちをかくとく】


 全体のレベルが1上がり。

 スーちゃんがなにか新しい魔法をまた覚える。


【ステシアはあらたにハイフレアをおほ゛えた!】

【シホはエクスターミネーションをおほ゛えた!】


 おっとシホさんは現実世界でも彼女の主力技と言っても過言でもない大技を覚えてくれた。

 空腹の仕様がないこの世界なら彼女は無敵なのだろうか。そうであってもらわないと困る。

 まあ死んでいるミヤリーは死んでいるためレベルは上がらなかったが。


 ミヤリーを蘇生させ、王様の元へと帰る。


「おぉあいりよ、よくそ゛かえんりゅうをたおしてくれた! おかけ゛でし゛ゆうにひとか゛いききて゛きるようになったそ゛! これはほんのおれいし゛ゃ」

【あいりはいわやまへのつうこうけんをてにいれた】

「それをつかえは゛まんなかにあるいわやまへとはいれるようになる。もんは゛んにみせさきへすすむか゛いい」


 チケット的ななにか?

 あ、狂政が言っていたな。あの山のボスを倒せば一応クリアって話。

 そうと決まれば向かうとするかな。


「んし゛ゃみんなそのいわやまにいこう。そこにいるホ゛スをたおせは゛このケ゛ームをクリアしたことになるらしいし」


 一同頷いて最初来たところへと戻り、そのいわやまへと入るのだった。

 というかいわやまって。もっとマシな名前があっただろうに。そんなこんなで最後のボスを倒しに向かう私達なのだった。


☾ ☾ ☾


 いわやまの中は広々とした空間であった。

 穴があるギミックがちらほらあり、気を抜くと。


「ちょっとあいりあわわわわわわわわわ!」

「ちょっとなんて゛あなに……! ってしてんか゛きりかわったんた゛けと゛」

『あぁひとつことわっておくと、なかまひとりて゛もちか゛うは゛しょにいってしまうとなかませ゛んいんか゛いっしょにそこへいと゛うするそ゛』


 唐突の狂政ログイン。

 まさかの一緒に連れて行かれるパターンかよ。

 じゃあ1人でもヘマこくと、面倒くさい場所へ再び行く羽目になるじゃないか。……これは仲間同士の精密な判断力と決断力が求められる頭脳戦みたいなものじゃないか。

 私気難しいことは得意ではないけど、それをここでやってくるか。謀っているだろ狂政。


 とまあこのように初見てこずるギミックを仲間と協力しながら、前へと進みゲームを只今攻略中でございます。

 始めてから感覚的に30分くらいかな、疲れはそんなに出てないので今のところ余裕。私からすれば徹夜になっても問題ないくらいに余地がある。文句云々言ってきたものの粗削りながらも面白く感じる。


「あいりさん、またか゛めんか゛まっくらになっていきますよ! うわああああああぁ」


 \ドゥルルルルルルルルー♪/


 再びエンカウントがかかり戦闘に。

 この場所に入ってから、以前よりエンカウント率が比較的に増したように思える。少し歩いただけでモンスターと出くわすしやたらとプレイヤーを襲う気満々に見え。


【スーパーマシンAがあらわれた!】

【スーパーマシンBがあらわれた!】

【スーパーマシンCがあらわれた!】


「ここってさなんかやたらとロホ゛ットおおくない?」

「そういえは゛きかいけいのモンスターたくさんて゛てきますよね」

『たいけんは゛んさいこ゛ということて゛ちょいとかっこいいロホ゛ットモンスターか゛たくさんて゛てくるタ゛ンシ゛ョンにしているのた゛。……あ、ちなみにそいつらはAI2かいこうけ゛きて゛こうかりょくをたたいてくるそ゛』

「ふぁ!?」


 考える隙もなく、目の前に立ち塞がる3体のパイプがたくさん繋がった剣を携えたロボット型のモンスター。スーパーマシンが一斉に攻撃してくる。


【スーパーマシンAのこうけ゛き! ミヤリーに697タ゛メーシ゛ミヤリーはしんた゛。スーパーマシンAのこうけ゛き! あいりに259タ゛メーシ゛!】


 Cまでの攻撃までに合計6回の攻撃が行われ私達のHPはギリギリに。

 6回攻撃とかなんなん? 頭おかしいからもうちょっと加減しやがれ!

 このとんでもないモンスターがうざくてうっとうしいのでさっさとおわらせたい。


 あ、そうだ。

 シホさんのあの大技使えばなんとかなるんじゃ。

 彼女のコマンド入力中に私は声をかけ。


「シホさん、あのわさ゛つかえは゛いいんし゛ゃない? てきいっそうて゛きるて゛しょ」

「あぁエクスターミネーションて゛すね。いっかいうこ゛けなくなりますけと゛よろしくて?」

「もちのろん」


 この世界における彼女の主力技エクスターミネーションの中身は。

 魔力0で打てる高火力かつ全体攻撃の大技である。破格な性能ではあるが1つだけ欠点がある。

 それは打った次のターンは動けなくなるというデメリットつきいわゆる反動系の技である。


 だが、道中色々試してみたが敵をバトル中に1体でも倒すとこの反動デメリットはなくなる仕様みたいで実質ずっと俺のターン状態になれる。

 因みに先制技である。

 戦闘画面にうつりシホさんが攻撃する。


【またたくまにひかりか゛みっしゅうしたこうけんか゛、すへ゛てをきりさく! エクスターミネーション! ……てきせ゛んたいに99999999999999タ゛メーシ゛! スーパーマシンたちはたおれた】


 一瞬にして派手なエフェクトが流れたあとに、先ほど苦戦したスーパーマシンは彼女の技によって瞬殺された。どうやらこの世界でも彼女の底知れぬパワーは健在な模様。

 勝利の曲が鳴り、戦闘終了の合図。


\テテテテーン♪/


「……あっさりかっちゃいましたね」

「いりょくハ゛ク゛し゛ゃない? た゛からさ」


 色々と調整が必要な技ではないかという問題を心の中で呟きながら前へと進んだ。

「ちょっとあいり、いくのはいいけと゛わたしのそんさ゛いわすれないて゛よね!」


 うるさいミヤリーが横でクソ長テキストを流しながら。頼むからお前棺桶の中ぐらいしゃべるの自重しやがれ。メッセージウィンドウが出てくる度に私の足が止まっちゃうからさ! だがそんなことを言っても彼女に声は届かず仕方なしにスーちゃんにお願いする私なのだった。


☾ ☾ ☾


【体験版と製品版の違いを比べながらゲームをやるのが楽しみ甲斐あるんじゃない?】


『よし、ついにさいしゅうめんた゛な。いいかよーくきいてくれよ』

「はいはい」

『そのモンスターちょいとスクリフ°トか゛また゛ふあんてい(不安定)て゛な、ちょいとハ゛ク゛か゛おおい。それて゛あえてよわくしてあるそこのところよろしくな』


 プログラム組むのってそんなに大変なのか。

 私はソースコードを見るだけで目がチカチカしてくるんだが。妹はバリバリスクリプトを組んでゲームを作っているらしいが……面白いのあれ。

 まあそんなことは一旦置いといてまだ実質"調整中"なモンスターと戦うことに。


「……あれし゛ゃないて゛すか? なんかすわっていますよ」

「ほんとた゛、おいミヤリーうかつにさわるなよ」

「………………………………なにこのスイッチちょっとおしてみよ。ぽちっと」


「あぁ!?」

「……ちょっと」

「えぇ!?」


 ロボットの傍にあった謎のスイッチを故意に押してしまったミヤリー。忠告する前にもう既に手遅れで、彼女の手はそのスイッチを触っていた。

 するとゴゴゴゴゴの起動音と共に。


「シサクテストスクリフ°トようのソースコート゛ニウワカ゛キ(上書き)シマス…………カンリョウ」


「「おいいいいいいいいいいいいミヤリーなにやってんた゛!」」

「こ゛めんあいり! しゃへ゛ってるあいた゛にもうおしちゃった! てへ」


 てへ

 じゃねえよ。お前絶対説明書読まない系のタイプだろ。まあ最近のゲームはソフト本体に付属していない物が大半だが。

 だとしてもだ、少しは迂闊に触るのはやめとことか思わないのか。……うーんミヤリーちょいと愛理さんだいぶ疲れてきたよ。無策のミヤリー恐るべしがた。


 モンスターが起き上がると。


「ピピピピピピピピピピ……!」


 戦闘が始まった。


【ハイハ°ーマシンがあらわれた!】


『あいりくんます゛いそ゛!』

「え、なにか゛」

「さっきミヤリーくんか゛おしたホ゛タン。あれはしさくスクリフ°トにおきかえるようのホ゛タンた゛」


 もうその先は嫌な予感しかしない。


『そいつは……な、な、な、な、なんと!!』


 テレショみたいな強調したしゃべり方やらんでいいからひとまず呂律を整えろ。


「いいからおちつけ」

『こ゛ほん。わたしのせっけいミスて゛そいつのこうと゛うかいすうは…………()()()()()()()()()()()た゛』


 ん?

 聞き間違えかなぁ。ちょいと耳を疑るような数値が聞こえたような。……空耳だよね、いやそうに違いない。どんなにクソゲー認定されているゲームでもそんなあたおかな数値を設定するわけないでしょ。だよね? そうだよね!? 狂政!?


『た゛・か・ら! 99かいこうと゛うするといっているた゛ろう!』

「うそやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」


 ここに新たなクソゲーが爆誕するのであった。

 なんだよAI99回行動って。小学生が考えた"ぼくの考えた最強モンスター"みたいな設定は。これで一体どうやって戦えと。

 先ほど戦ったスーパーマシンのどでかいバージョンで、4足歩行の足に、両手には巨大な大剣がついている。巨大な西洋鎧の奥からは赤い単眼が見え。……見た目はそうかっこいいかな。いや浮かれている場合じゃねえだろ。


『と、とにかくこいつをたおすことはシホくんのわさ゛をもってしてもふかのうた゛ろう……いますく゛にきょうせいしゅうりょうするコマント゛をうつからそれまて゛たえてくれ』

「いやいやしぬって!」

【ステシアはハイフレアをとなえた! ……ハイハ°ーマシンはそのまほうをはねかえした! ステシアは1500のタ゛メーシ゛をうけた……ステシアはしんて゛しまった】


 なんか勝手に戦闘を…………ってスーちゃん!? なんでしんじゃっているのさ!? ……ってこいつ魔法効かねえんかよ。反射の数値でスーちゃんが。


「……すみません、なんとかおやくにたとうかとおもったのて゛すか゛むりて゛した。……あいりさんすみませんか゛あとはおねか゛いしますよ」

「ふん、さいきょうロホ゛ットかなんかしらないけと゛、とりゃああああああぁ!」


 あ、こいつ。


【ミヤリーのこうけ゛き! ミス! ハイハ°ーマシンにタ゛メーシ゛はあたえられない!】

【ハイハ°ーマシンのカウンター!】


【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

【ミヤリーに9999タ゛メーシ゛】

……


 99回のカウンター攻撃が続いてミヤリーは。


【ミヤリーはしんて゛しまった!】

『ちなみにカウンター率は100%た゛からな。』

「そ、それはやくいってぇ~」


もうなんでもありだろこのゲーム。


「た゛いしょうふ゛て゛すよ! わたしにまかせてくた゛さい!」


【シホはきょうこなうけみをつかった!】


 きょうこのうけみ。

 これは数ターンの間攻撃出来なくなる代わりに自分に目標を集中させ、かつダメージを0にするという防御クラスでは最強技である。因みにこれも魔力消費0である。


【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

【ハイハ°ーマシンのこうけ゛き! シホに0タ゛メーシ゛!】

……


 以下略。

 99回の攻撃を凌いだシホさんは無傷でステータス枠も赤になっていなかった。


「……いいかんし゛て゛す! これならし゛かんかせき゛て゛きます!」

「いまよあいりいっっけええええええ!」

「まかされた!」


 シホさんが囮になってくれたお陰で私は死なずに済み、攻撃は私のターンに回ってきた。

 ひとまずこのまま防御し続けて耐久するのもいいが、それだとゲーム的につまらないような気がする。

 そこで一発でも大きいのお見舞いしてやろうと、私は。


【あいりのふ゛んなく゛る! …………ハイハ°ーマシンに】


 とそのときだった。


 プツン。


 画面が真っ暗になると同時に意識が遠のいていった。

 どうやら狂政がスクリプトを実行させたようだな。……ちょいと悔いが残ってしまったがこの無念はいつか晴らすとしようか。


☾ ☾ ☾


「それで、このゲームいつ出すのさ」

「ええとだな」


 現実世界に帰ってきた私達は少し時間を空け狂政と会話をしていた。

 先を考えていなかったのか、彼は考え込んだ様子をしながら沈黙。


「まだ色々練り直す箇所がたくさんあるからな。正式なリリースはまだ先だな」

「でも面白かったですよ私は。それは問題は色々あるようにも見えましたけど……みなさんはどう思われますか?」


 ミヤリーとスーちゃんが隣で答えてくれる。綻ぶ顔をする素振りは満足げな曇りない顔色であった。

 とても楽しそう。


「えぇもちろん。まだ作っている最中とはいえ、これは上出来なんじゃないかしら。完成を楽しみにしているから気長に待っているわ」

「……私もです。冒険のイメージトレーニングにもなりましたし、また違うゲームができたらその都度私達にもやらせてはもらえないですか?」


 意外と彼の作った試作ゲーム『あいりクエスト』は好評であった。

 色々とツッコミどころはあったけれど完成版が…………気になりはする。それでも自分の名前が世間一般に公開され公開処刑されるのであればそれは遠慮してもらいたいけれども。


「……もちろんだ! 是非とも頑張って制作するとしよう。頑張って作るから待っていておくれ……ところで愛理君?」

「うん? なに?」

「ちょいとお詫びといってなんだがコレちょいとあげようか?」

「これは?」


 狂政が手渡してきた物。

 それは手の平にのせられるくらいのサイズを持つ、重量感ある巨大なカセットだった。

 側面には『EX RABBIT! FOAM CHANGE!』と書かれているまた独特な凝ったフォントが印象的だ。


「少し君の力をサポートする物を作ってな、よければ話だけでも聞いていかないか?」

「ちょっとそれkwsk」


 気になるその狂政が手渡してきたカセットの詳細を私は聞くことにした。

 だが今後これが私にとって非常に重要なアイテムになろうとは、この時の私はまだ知る由もなかった。

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