番外編 うさぎさん、仮想空間に入る? その1
今回はドットゲームを題材とした話です。
セリフ文の一部ドットゲームを再現するために『 ゛』と『° 』を使っているので少々読みづらいかもしれません。3まで続くかも。
【テストプレイって大事だよね。まずは1回通しでやってみるのが一番っていうし】
狂政からなにやら面白いものができたというので、急遽オタクシティへ。
友達の家に行くような感じで気軽に彼の住まう部屋へ入ると、入室数秒足らず耳元からとち狂った大声が唐突に響いてきたので透かさず黙らせたのだが。
彼の座る向かえ合うソファの向こう。テレビ明らかに数百インチはありそうなスケールの大きさでさすが金持ちといったところ。デカすぎだろ前も見たけど映画上映でもする気かこいつは。
とテレビの手前になにやら物騒なコンシューマー機が1台置いてある。
なんぞあれ。出オチ感半端ない異様なオーラを出しているが、とりまそれはさておきその機械(多分ゲーム機)に目を凝らしながら狂政の話に耳を傾けた。
「はは! よくぞ来てくれた 今日は君達に見せたい物があってここに来てもらったわけだ」
「あのさ、本題に移る前にもう既にネタバレしちゃってるけど大丈夫?」
「心配いらない。なぜなら読者達には見えないから問題ないだろう」
「さらっとメタ発言すんな!」
ここでバツ印の付いたマスクがあったらいいなと勘量してみる。
一言多いんだよ、モブのNPCでもまだセリフ文少ねえぞ。
「あの、ネタバレってなんですか? その……いつもお二人の会話から次々と不思議な言葉が出てくるんですが……あわわ」
隣にいるシホさんが目をぐるぐる巻き状態にし、顔を紅潮させていた。無理に会話についてこなくていいからねシホさんだからその沸騰するヤカンみたいにならなくていいから! 物理や数学の頭が痛くなるような魔法の呪文をみるよりかはまだイージーモードだからお願い頑張ってついてきて。
「落ち着きなさいシホ。あれはふたりにしかわからない言わば領域よ。きっと深い意味があるのよ」
「……はて、その深い意味とは一体。詳しく説明を求めます」
別に深い意味なんて微塵もないぞ?
というかなんでみんなして興味津々なのさ。……なんかこのままいくと話が脱線しそうなので話を進める。
「で、テレビの前にあるあの物体なに?」
「ふ、これはだな」
その謎の四角形に近づいてよくよく観察し始める。
なんというか、ピコピコと光りながら起動音をならしているがなにこの謎機械は。
上部にはディスクらしき物を収納させ読み込ませるトレイがあるのだが……明らかにこれゲーム機だろ。ところどころどこかで見たようなデザイン性だが、これに何があるというのか。
「見慣れぬ四角い物体ですね、なにやら魔力っぽい物かなにか光っているようですが」
「……私も見たことないですよこんな魔導具は。見知らぬ線のような物が何本か繋がれているようですがこれは一体」
気難しそうに考え出す異世界組の仲間。やっぱそういう解釈とっちゃうんだ。
主電源らしき配線は繋がれていないので、恐らくシホさんの思っている通り魔力で稼働しているのだろう。疑似的な無線機になっているが。
「実はな、最近また新しい新作ハードを作ったんだ」
新作ハード? 今さらっとまたとか言い出したぞ。まあ確かに以前来たときもゲームしていたし今更感はあるな。
「その名もVQ……バーチャルキューブ。コントローラーの代わりにVRがついている」
あの狂政さん予算今回いくら掛けたんすか。SFとかに出てきそうなメカニカルな構造になっていますけど! なんなら未来系によく出てきそうな電子ゴーグルにも見えなくも。
「……ゴーグルでしょうかね? 少し形状は違いますけど似てはいますけど」
「ぴぴ……。ちょっとなんかこのボタン! 癖になりそうなくらい押しまくれるわよ!」
「おいこらミヤリー壊れるからやめなさい」
人の物を大事にしようとする気持ちはないのだろうか。
取り敢えずVRのボタンを押しまくるミヤリーを止めよう諫め。
バーチャルキューブの方を見ると、端子がちょうど5つありその端子には私達の人数分用意されたVRが接続されている(何故にこれだけ有線なんだよ)。明らかに試用プレイをやれと言わんばかりの準備が整っているがまさかやれというのか?
レトロと現代危機のリミックスなハードだが、外見は正四角形のシンプルなゲーム機。コントローラーは帽子の骨組みのような形状になっており、それを被る仕様に見受けられた。
「このVRを被り、ゲームを起動させると意識がそのゲーム内に転送される。あっただろう私達の世界に……VRMMOというものが。私もやりたかったがなににせよ政治の仕事が忙しかったから中々私はできなかったが」
元総理ちゃんと政治の仕事しろ。
「うん、もちろんあるよくさーるほどめっちゃやった。……でこれをやれと? 言っておくけど某作品みたいに閉じ込められてリアルにガチ死にするような危険ゲームじゃないでしょうね⁉」
「案ずるな、私もあの作品は大好きだがあれほど危険ではないから大丈夫だ。……近々街の店にて一般販売する予定なんだがテスターが誰もいなくてな……それで君達をここに呼んでやってもらおうと思ったわけだが」
ふむふむなるへそ。
大体のことは旨は把握した。
要するにこのまま商品化して出しても大丈夫か自分では判断できないから、試しにやってくれないか。みたいな話だろうね。
でも異世界に来てゲームという存在から疎遠になってきたので、そろそろ恋しくなってきた気分。
なのでここはみんなにひとつ相談して。
「つーわけでみんな、狂政がなんかとんでもない世界に行ける装置を作ったみたいだからこれやってみない?」
「それって実際存在する世界に行けるとかそんな感じですか?」
「いや、疑似的に作られた世界だよ。でも安心して実際に現実で私達が死んだりはしないから」
「……ふむふむ。それが愛理さんのよく言うゲームなんですね、いいですよみなさんもやりますよね?」
一同首肯する。
「よくわからないけど、面白い品物だって事は分かったわ。そのゲームってどんな物かはしらないけどやるっきゃないわね」
お前はゲームの中でも真っ先に死にそうだから過信できねえんだけど。大体こういうことを先に口走るヤツが死亡フラグを立てるよね。
んで、どんなゲームやるんだ。RPG? FPS? ADV? 数百時間ゲームに浸った私はどんなジャンルのゲームでもこなせるぞ!
「狂政どんなゲームするの?」
「これだ!」
なにやらCDを取り出して、それをバーチャルキューブのトレイを開いてそこに装填。すると書き込む起動音がなり、画面が一瞬真っ黒に。……暫くしてゲーム画面が表示され独自のBGMがなり出す。
\ててて~ンてーんてーんててててーん♪/
懐かしみ感じる8ビット音源が鳴りだしロゴが下にスクロールされていく。
……その名前は。
ってこれちょ! ちょっとまったあああああああああ!!
【アイリクエスト うさぎと愉快な冒険者達】
おいこらてめぇ。
「狂政これなんなん?」
「すまん、乗りに乗って君の名前を使うことにした……ままままった! 勝手に使ったのは謝るからだから私の胸ぐらを掴まないでくれ!」
あまりにも唐突過ぎたので彼の胸ぐらを掴んでしまった。
なんだよ"アイリクエスト"って。テストどころの問題じゃねえだろ。
こんなのが世間に公表されでもしたら、ガチの公開処刑確定モラルやめれ。
掴んでいた手を離すと。
「ごほん。これは君の好きなRPGだ、まだゲームは途中までしか出来ていないんだが、十分に楽しめると思うぞ。ある程度プログラムは組んだまあバグがあるかは定かではないが」
「……そのぷろぐらむってよくわかりませんが、不調みたいなものでしょうか。私なら全然問題ありませんよ」
物分かりのいいスーちゃん。そこにしびれる憧れる。
な、なるほど。
少し危険はつきものだが、楽しみがいのあるRPGになっているようだな。
でもBGMが8ビット音源からすると大方察しはついてくる。
「因みに1つ忠告しておくが、このゲーム世界に留まっている間は体全てが8ビット変換されるから少し喋りづらいかもな」
「知ってた。じゃあこのヘルメットみたいなもの被ればいいのかな」
「うむ、ヘルメットを被れば、自動的に意識の転送が始まりゲームが開始されるぞ」
一同言われたとおりにヘルメットを被ると、体が光に包まれ意識が次第に遠くなっていく。
ということは意識がゲームの中に転送されているってことでいいのかな。これはwktk。
すると狂政が私達がゲームの世界に行く前に1つ。
「おっと言い忘れていた。このゲームセーブシステムが未実装だから、全滅すると完全なるゲームオーバーなるからよろしく」
((いやそういうの先に言えよおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ‼‼‼‼))
「ちょおまああああああああ! がた」
文句を言おうとしたがちょうど意識がなくなって私は気を失った。
☾ ☾ ☾
【レトロゲームは一部のゲームは除いて全部神ゲーなんだよ‼】
気がつくとブロック状の世界が辺り一面に広がっていた。
よく昔みたようなレトロチックな絵が目の前に広がって。試しに体を動かしてみるとなんか違和感が。
…………体がドット化されていた。
【ト゛ット・ラヒ゛ットハ°ーカー アイリクエストせんようのラヒ゛ットハ°ーカー。のうりょくはフ°ロク゛ラムされていないのて゛ありません。】
ご丁寧なことに初代某RPG風にフォントが使われており、文字が各々独立していた。確かあのゲーム昔は濁点も1文字分としてカウントされてたような。……よくこんなの再現したなあと褒めてやりたいところ。というかこの世界でもAIさんは機能するようだなうん偉いぞ。
というか表面しかないグラで、常に歩いているモーションを取っているのだが非常に歩きづらい。踏んでいる感覚もちゃんとするから繊細な部分まで設計が丁寧。この点に関してはスペック高いよな。……まずは仲間を探さないとね。というかみんなどこだ。
草原をひたすら探していると髪長戦士のグラをしている人が。おやこれは。
「あ、あいりさん! ふし゛これたみたいて゛すね。というかこのわくみたいなものはなんて゛しょう」
ピピピとした音と共にメッセージウインドウが流れる。どうやらシホさんに間違いないようだ。世界に来て早々詰んだ状態に陥っているようだった。あるあるやり始めたら操作方法分からず戸惑う系の、なんか予想通りで笑いがこみ上げてきそうになる。う、うん彼女に悪いしここは辛抱して。
というかメッセージウィンドウ見えているんだ。うそやんとそう言ったコメントは控えておいて応対してみる。
「し、シホさん? そんなフ゛ロックし゛ょうのすか゛たになって。あぁそれはねメッセーシ゛ウィント゛ウといって、しゃへ゛ったことか゛ここにひょうし゛されるよ」
あぁもう。漢字使えないみたいだから喋りづらいし読みづらい。というかピコピコうるせえよ。
昔の人がどんな苦労をしてあのゲームをしていたか今なら分かるかも。
フォントみたいなのは変えられないか……。
「なるほと゛て゛す。そういえは゛、ほかのみなさんはと゛こにおられるかしりません?」
「こ゛めん、わかんない。わたしもいまきたは゛かりた゛からさ」
いやシホさんそんな今来た私が分かるわけないじゃん。
うーん、周りを見る限りそれっぽいグラは見当たらず。
そうして周囲を一瞥していると、反響する声が聞こえてきた。
「おーいきこえているかー! あいりくーん!」
空から聞こえてきたのは、紛れもない狂政の声だった。
甲高い声といい威勢のある声が特徴的であるため、彼だと一発でわかった。
「ふ゛し゛これたみたいた゛な」
「きょうせいさんて゛すか? いったいと゛うしたんて゛すか?」
「それは、きみたちのみちあんないするためにこうしてこえをかけているにきまっているた゛ろう」
このゲームから嫌なにおいがプンプンするのは私の気のせいだろうか。
またしても狂政が私達のサポートをしてくれることになった。作り主はあいつなんだし説明してもらわないとわからんわな。
そんな目の前に映るドットの世界を目に焼き付けながら、私達は狂政の説明を聞くのだった。
他のみんなは一体どこにいるのだろう。