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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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94話 うさぎさん達と荒々しい魔法使い その1

スーちゃんの友達登場回です。

【久々に故郷へ帰省してきた友達に会うと非常に嬉しい。でも同じくとても顔合わせづらくて恥ずかしい気持ちにもならない?】


 翌日。

 朝は美味しいご馳走を味わう。

 彼女の振る舞う料理は、本当に家庭料理かと疑うようなレベルのクオリティで一品毎目を見張る物ばかり。

 パンに大きめの目玉焼き、肉料理には中くらいの焼き魚料理が食卓に並ぶ。

 初めてそれを目の当たりにした私はあまりの豪華さうえ言葉を失いかけた。


「さあ召し上がれ。手間暇かけて作った新鮮な朝ごはんですよ」


 自信満々な様子で急き立ててくるリーシエさん。

 両手を広げる様子、これ例のすしざんまいみたいなポーズだな。


「す、スーちゃん? 1ついいかな?」

「……なんでしょうかそんな困惑したような顔をして」


 私の隣に座るシホさんの向かえにいるスーちゃんに問う。

 首を傾げてこちらの質問を待つ顔色は愛撫を感じさせる。眩しい。

 “これがグリモア流の一般家庭料理なんですか?”みたいな都会人が過般来田舎に住み始めた人が、提供された田舎の朝食に対して驚嘆するような反応を私はとっている。

 矮小とした声で彼女に問うているが、なんだか気まずい感じではあるものの私は意を決し。


「こ、これがグリモアの家庭料理なの?」

「……昨日言ったじゃないですか。グリモアの支給額は他の場所より高めだって」


 そうやったな収入額が別段高いと。

 元都会人の私が言うのだが、田舎と都会だと最低賃金が全く違うんだよね。

 要するにグリモアは都会。ギルドのお姉さんの話によれば、並大陸は平均ぐらいの報酬金が支給されていて、その他の大きな大陸になっていくと、地域によっては高い金額がもらえる地域も中にはあるって。


 この中大陸の街だと、推奨ランクはBが1人以上と定められているもののこの上を行く場所がわんさかと大規模である大大陸にはあるんだとか。

 まだSランクに到達していない私には狭き門だから、とりあえずそれは後回しで。


「あ、ありがとう。いやこういう食卓見ると貴族のご飯かと勘違いするから」

「あらあら、愛理さん。嬉しいわね、グリモアの食卓は初めてかしら。この街ではこの量は普通よ」


 リーシエさんの地獄耳。

 小声で話していたつもりが、どんな聴力しているんだこの人は。


「……あと母はいくら小声で喋っていても聴こえてしまうくらいの聴力ですはい」

「え、まじ?」


 こくり。

 いやそれもう住んでいる次元が違うんじゃあねえの? 聖徳太子に匹敵するレベルよそれ⁉︎

 ひとまずグリモアは大金持ちだと再認識した私は、止まっていたとカトラリーを手に食事をとる。


(ミヤリー、猫舌か? ぷぷ馬鹿なやつめ息を吹き掛けてから飲めばいいものを)


 ミヤリーの方を見て私はスープを飲み熱さのあまりに舌を出す彼女を嘲笑う。


「……な、何よ愛理その目は」

「お前猫舌なんだな」

「猫舌って? 猫なんてどこもいないじゃないの」

「この低脳。要するに熱いのが苦手だってことだよ。フーフーしろよ」

「ちょっと愛理さん言い過ぎなんじゃないですか? パクパク」


 無知なミヤリーを指摘する。おかんみたいに指摘してくるシホさんが神経質っぽいけど……つうかシホさん咀嚼しながら喋るのはやめようね。私も言い過ぎたけどさ!

 横目でこちらを見る彼女──、ミヤリーは私の方を見ながら「ふん」とご機嫌斜めな態度をとる。

 おい拗ねるな。碌な大人になれねえぞ。


「わ、悪かったわね! ほらスーちゃんのお父さんが私を気遣いしたそうな表情で」

「あ、あのミヤリーさん心配はいらないぞ。誰だって長所短所はあるからな」


 お、お父さん。

 スーちゃんの隣に座る彼の様子はどこか誤魔化しているように見えた。

 そっぽを向いて知らんぷり。

 優しい面は親譲りなんだねスーちゃん。

 と浮かれていると、反対側のリーシエさんが。


「あ、な、たいつも言ってるでしょにんじんは残さないでって!」

「お、おとうさんまたなの? 根菜類いつも誤魔化そうとするよね」

「そうよねイルちゃん。こんなだめお父さんみたいにならないように好き嫌いせずなんでも食べましょうねはいイルちゃんあ〜ん」

「はあわかったよ。娘の前だし頑張って食べます。パクパク」

「よろしい。さあイルちゃん」


 リーシエさんはイルちゃんにご飯を食べさせる一方、横目で野菜にんじんを残すお父さんに対して、食べるように促す。一瞬声調が低くなりゾッとしたけど。

 そういえばスーちゃんも根菜類嫌いだったような。でも最近はだいぶ頑張って食べられるようになってきたが。

 まあここも親譲りなのかね。


「あらスーちゃん、根菜類食べられるようになったのね。前にんじん全く食べられなかったのに」

「……はい。愛理さんのおかげです。彼女のお陰で色んな物が好き嫌い食べられるようになって行き」

「あらそれはよかったわぁ愛理さんありがとうございます。……それとスーちゃん。ご褒美に」


 よしよしと我が子の頭を優しく撫でる母親。とても嬉しそうな表情をするスーちゃんは少々照れくさくいように顔を紅潮させながら答え。


「……べ、別にこれくらい普通ですよ。一流の世界最強の魔法使いを目指しているわけですからこれは1つの乗り越えなければならない修羅の道です」

「はい偉いえら〜い!えらいえらいえら〜い!」


 過褒するリーシエさん。

 で、溺愛し過ぎじゃあねえかお母さんん⁉︎


 そうして食事の中会話を交えながら、時間は過ぎていき。

 家で色々と羽を伸ばしているとあっという間に昼。美味しい昼食も頂いていざ外へ。

 午前中は前の世界みたいにぐーたらしちゃったけど、旅行中ぐらいはいいよね。私なんて旅行バスの休憩中ずっと中で篭って持参厳禁だったゲーム機を鞄から取り出してやってたし。はは。ばれなちゃズルって言わないんだぜ?


 昼からはリーシエさんに一言挨拶し外へ出る。


「うさぎのおねえちゃんもう行っちゃうの?」

「あ、うんちょっとね。明日まではまだいるよ」

「私達はいつでも待ってますからね愛理さん。スーちゃん迷子にならないように気をつけるのよ」

「……わ、わかっていますよ! っていつまで我が子を迷子呼ばりするんですか!!」

「ごめんごめん。それではよろしくお願いするわ愛理さん」


 なんというか理想的な家族構成だったなあ。

 口では言い出せないが、姉妹揃ってグーかわだし、リーシエさんは超美人で優しいまるで天国のような家だった。

 裕福っていいよね。これができの悪い妹だったら、家族の中で反発が生まれ次第に姉妹戦争にもなり得る。修羅場なんてやだそんな私からしたら楽園その物。仲睦まじいのはとてもいいこと。


「優しいご一家でしたね」

「うん、明日から住まないと言われれば、遠慮なしに引き受けるくらいによかったね」

「み、見捨てないでください!」

「見捨てないって。だからそんな力強く寄り添わないでシホさん! ぐはぐぅぐるぢぃい」

「ちょっとシホ愛理のジョーク! ジョークだからね!」


 昨日は学校出たら、もう日が沈んじゃっていたしあまりゆっくりできなかったんだよね……それもこの時間に出たのも理由の1つ。

 出航の日になるまでは少々厄介になろうと、仲間達と決め残った日数はこのグリモアで潰すことにした。


 故にランクがまだ低いせいか、大大陸の方なんかは外しか歩けない。

 上陸しただけで魔物の餌食だ。聞けばあそこに住むモンスター達はこことは比べものにならないヤツらが多いらしい。

 ならなおさら行く気が失せてくる。

 上陸直後即死モンスターとエンカして即死……はいガメオベラ。

 とか話にならないって。そうなるぐらいならここに留まった方がいいかと。


 決してチキっているわけではない。ほら逃げるが勝ちって言うじゃん? 誰がなんと言おうと私は最善策を選んだまで。みんなもモンスターが危険だとか言っていたし合点はいく。

 昨日リーシエさんの口から出た、アンコという人物の元へ向かおうと彼女について街を歩く。


「それでスーちゃん。そのアンコちゃんっていう人ってどんな子なの?」

「ですよね、感じ的にスーさんのご友人で?」

「……そうですね、学校時代の同期ですよ。今はこの街で冒険者家業を行い日々クエストをこなす日々を送っているらしいですが」

「精が出るねスーちゃんの友達」


 まさかのここで同期登場フラグですか。どんなタイプか知らないけど、陽キャ属性な人なのか。もしくはスーちゃんみたいな口数が少ない人の可能性も大いにありだが。

 こういうのに限って励ます系のキャラだったりするが、彼女のその友達とは一体どのような関係だろう。

 娯楽小説みたいに塀の十字路でじっと待っている、女の子だったり。もしくは。




〜愛理の脳内イメージ〜


▶︎ツンデレでいざというとき泣き崩れ主人公に抱きつく意外とかわいい子


 少年漫画みたいに1分でも遅れたらタイキックかましてくる高圧的な女の子


 急ぎでパンを咥えながら走って主人公とぶつかる属性



 いや1番はともかくそれ以外はテンプレじゃねえか。

 タイプにもよるがDQNしてこない子ならいいよ。急にしばくぞとか言ってくるあほんだらは嫌だねブッチります。

 クエストをこなしている点から私達とほぼ大して差はないと感じられる。……別にマウントを取ろうとかそんなくだらないことを考えては断じてない。単に気になっているだけ深い意味は全くないからな?


「……年齢は私と同様です。少々胸が私より大きいのが悔しくはあることですが」

「私も知りたいわ。そのアンコちゃんって人のこと」

「それには私も同意するよ。……ってスーちゃん胸気にしてんの?」

「……あ、愛理さん! そ、それは言わないでくださいよ胸のことで昔よく色々言われていましたから」



【愛理は『デリカシーのないKY(←大概にしとけよゴラァ)なうさぎ野郎』の称号を手に入れた!】



 いや、唐突に称号つけんな!


 ミヤリーもスーちゃんに教えてくれよと視線を送り、興味深そうに彼女を見つめる。

 現状想像もつかない未知の人物だが、スーちゃんは最年少で卒業したと聞いた。ということはそのアンコちゃんって子もスーちゃん同様に短期間で卒業した天才っ子?


 テレビでよく聞くよね『最年少で○○した子』だったり『衝撃生まれつき○○ができる子』みたいな。

 現実だとだからどうだっていう話になるがこの世界だと考え方が少し変わる。魔法の概念が存在する世界だしなきっと秀逸な魔法を持っているに違いないと胸を膨らませながら。


「……彼女はですね、私を学校でいつもライバル視していたんですよ。内心は友達だとおもっているらしいのですが……どうも正直になれないみたいで」


 まさかのツンデレかーい。

 出たよ、よくいる相手を永遠のライバル認定する思い上がる子。

 因みに私の妹もツンデレ属性だけど、あちらは隠すのが非常に下手くそなやつだが。

 スーちゃんの友達がどれほどかじっくり観察しようじゃあないか。

 自分の妹を悪く言うのもあれだけど、あいつはちょっと支離滅裂で世紀末……末期症状。あげたら切りがないほどに正確が終わっている豪華盛り合わせセットな妹だが。


「……テストのときも私と2点差。学力の順位は私に次いで2位でした」

「2点差ってスーちゃんすごいわね。というかその子結構負けず嫌いな子だったの?」

「えぇ。なんか点数に差が付く度に目の敵にしていたんですよ。まあ勝負事はほぼ私が圧勝でしたが」


 どんな次元の話をしているかしらないが、もしかしてほぼ同等の実力なのかな。

 魔法使いの友達なんだから凄腕の魔法使いとか? あぁでも魔力の燃費が激しい……例えば全魔力消費して撃つ魔法しか使えない魔法使いそれだけは勘弁。チ̶ー̶ト̶バ̶グ̶と̶か̶使̶え̶ば̶話̶は̶別̶だ̶が̶


 というかはよ。

 そのアンコちゃんていう子に会わせてくれ。名前からして可愛らしいネーミングだが、名前以外からは容姿や性格は想像できない。

 

スーちゃんは街中に建つ教会の入り口傍にあるベンチに足を止める。どうやら目的地についた模様。

 前夜。彼女に会う約束を交わしたらしく、今日ここで時間を合わせ調整したらしい。メール的な物があると推測できるが、そこは自重しておく。

 躊躇いなくスーちゃんは目の前の人物像に対して答える。


「……ここでしたか」


 そこに座るスーちゃんとは対照的な黒いマントと、長い紫髪が特徴的な少女はスーちゃんと目を合わせる。

 なんだこのただならぬ威圧感は。溢れる眼差しからは自ずと緊迫とした感覚を覚える。……強者感漂わせる殺気を放ち彼女は口を開いて喋る。


「ほうやっときたじゃねえですか。待っていたんですよスーちゃん」

「あぁアンコさんお久しぶりです。元気でしたか」


 また癖の強そうなキャラの登場だ⁉︎

 なんだその敬語と、荒い口調を混ぜたようなカオスな語尾は。逆に言いづらくね。独特な口調で喋るその彼女は立ち上がり、覆い被さる帽子を空に放り投げ素顔を見せた。

 自信に溢れた彼女の手には黒い杖が握られ、それをスーちゃんへと向ける。


「さぁ決着のときじゃねえですかスーちゃん! 今日こそ"あのときの約束"を果たすときです!」


 なんか始まったぞ。

 あのときの約束ってなに。会って早々展開が急すぎて何がなんだか。

 あれか、この子……スーちゃんをやはり因縁相手のあるライバルかなにかと思い込んでいるのか?


「……アンコさんいい加減正直に挨拶してくださいよ。本当は私が街に帰って来て嬉しかったんでしょう?」

「なななななな! 何を言う! 私とスーちゃんは未来永劫のライバル関係じゃねえですか。それ以外の何者でも……」


 照れくさがるように少々彼女の目から視線を逸らし目を横に。

 わっかりやす。隠すの下手くそ過ぎじゃねこの子。

 一言感想を述べると、軽度なツンデレ属性だなこれは。……うちの妹は一言では言い表せないほどにツンデレ度が深刻化している。それに比べたらまだかわいい方だよこれは。


「あの……アンコちゃんだっけ? 私は愛理それとその仲間のシホさんとミヤリー」

「む、あなた方はスーちゃんの仲間なのですか? ……私は日々1人で努力しているというのに」


 なんかごめん。少し雰囲気を整えようと自己紹介に持ち込んだはずが、却って気に障るような失言を。

 アンコちゃん分かるよその気持ち。……1人って心細いよなうん。

 同情するように私はそのまま黙りこくる。


「なんでそこで黙るんですかぁ! そこは『やーいやーいこのぼっちぃ!』とか言ってみろです!」

「いやそう言っている訳じゃないんだけど」


 私をヤンチャクソガキか何かと思っているんかい?


「……アンコさん初対面の人に失礼ですよ。この方々は私の大切な仲間ですから悪く言わないで下さい。さもないと()()しますよ?」


 一瞬スーちゃんの顔が、見開いた青い顔になったような感じがしたが気のせいだろうか。アンコちゃんがプルプルバイブ状態なっているし、そんなにスーちゃんの顔が怖かったのか?


「す、すまなかったです愛理さんとその仲間のお方」

「……正直でよろしい」

「いやいいんですよ! むしろスーさんの友達は個性的で魅力的だなぁと」

「私はその、アンコちゃんは面白いと思うわだってスーちゃんの友達だもの」


 やはりシホさんは聖人すぎる。いつどんな人に対しても優しくするところがより一層。私の年上だけなあって頼りがいあるなと今更ながら称揚。

 するとアンコちゃんは踵を返し首をこちらに向けて私達に言う。


「少し場所を変えねぇですか? ここだと中々話したいことも話せねえですし」


 咄嗟に登場した、少々口調が特徴的な少女アンコに連れられ私達は場所を移し拝聴するのであった。

 美々しい長髪が特徴的なスーちゃんのご友人さてさて一体何者なのやら。

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