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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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87話 うさぎさんの戦士、町のコロシアムに参加する その2

【ぶっ壊れキャラは使い方次第では許容できるものもある】


 円周の土俵から木霊するのは剣がぶつかり合う音。

 互いの刃と刃が相まみえる度、周りから熱狂の渦が響く。


「ぐぁ!」


 殊に尋常ではない数々繰り出される戦術に対し敵は、為す術もなく彼女の圧巻な手さばきによって蹂躙される。

 彼女を攻撃した瞬間、そのとき不思議なことが起こり相手の背後に急襲をしかける。

 しかもこの攻撃、息を殺したような無音の攻撃であり敵は彼女の存在すら感知していない様子だった。……気づいたのは攻撃された直後のことであり、その直前まで全く認知していないぐらいの精密な剣さばきである。


「ナンテコッタイ」

「……すごいですねシホさん。瞬間的に敵の背後に移動し繰り出す荒技の数々は驚くばかりですよ」

「いくらなんでもやりすぎなんじゃ……」


 あまりの変貌っぷりに言葉を失う。みんなで一同彼女の様子を言葉を紡ぎながら述べてはいるもののどれも高火力、反則級どれをとっても強すぎる技が過多なのだ。

 え、あれこれがシホさん? みたいな。

 そうそう久々に同窓会行ったら昔おとなしかった馴染みがすげー煩くなっていたようなそんな吃驚ぷりだ。


 少女が1人コロシアムでまた1人、襲いかかる敵を愛用の剣で返り討ちにする。

 襲いかかる敵はというと、彼女の指1本触れることもできず、再起不能になるくらいの致命傷を負うそんなオチが立て続けにテンプレ化していた。

 おいおいゲームの裏コマンド入力しているじゃあないんだからさ少しは加減してやっても。


「これでおわりです」


 彼女は中腰になり、剣を横に身構えると敵にとどめを刺すように思いっきりなぎ払った。

 これで3勝目。敗北を知らない腹ぺこ少女無双は止めどなく続く。はいずっと私のターンもはや的の方を応援したくなる。

 目に終えない斬撃のいくつもが、敵の体に襲いかかり切り傷を入れ。

 シホさんはまたしても勝利を収めた。


「ここまでで無傷って……腹ぺこないシホさんってあんなに強かったの?」

「いや私に振られても知らないわよ」

「別に聞いてないんだけどさ……もうシホさん1人でずっとあのままでいいんじゃあないかな?」


 誰1人して彼女に勝る者は一向に現れず、1試合1~3分くらいでケリがつく。

 ありのまま、今起こっていることを話すよ。


 普段腹ぺこで倒れる少女が今日は全然倒れない。

 急に倒れることもなければ、腹が減ったなどと抜かすこともあらずだ。

 何を言っているか分からないと思うが、普段とは違うその違和感を私は今覚えている。

 と心の中で言い聞かせる。


 うん、今日はこれぽっちも倒れない。

 あの博士が開発したとされる、無限ベルトはガチな仕様だったらしい。

 というか状態異常、腹ぺこと万能な耐性を付与するあの装備。

 改めて言うがチートじゃねえか?


 今日のシホさんは、私達の知っているシホさんじゃあない。

 勁風(けいふう)さながら過ぎ去る彼女はもはや風の化身そのもの。

 自ずと違和感を抱いている私達でございます。


「今日シホ全然倒れないわね。あのベルト効果覿面ってところかしら」

「……はったりじゃなかったみたいですね。始まってからもう3連勝、一度も苦戦することなく連勝してますよシホさん」


 瞠目しながら果敢に戦っていく様を見ている私達は、彼女の勇躍に感服していた。

 いつもはすぐ腹ぺこで倒れ込むのにさ今日に限ってはいつも以上にかっこよく見えるぜシホさん。

 ついでだ、あのベルト博士にお願いして譲ってもらおうかな。

 あ、でも試作だからストックないんじゃあないか? ならいいや暫しここは彼女の好きにやらせてあげよう。


 試合をながめること3時間ほど。

 大会もついに大詰め。

 勝ち残ったのは当然シホさん。


 ペースを1度も落とすことなく、無双し続けていた。

 というか、この作品一応私が主人公なんだけどな。


 まさか、主人公降板?

 んなのやだよ。これだとシホさんTUEEEEEE!! みたいな作品に変貌してしまう。

 大丈夫、大丈夫だよね?


「愛理、なにブツブツいってんのよ? この作品はあんたが主人公だから主人公じゃなくなるわけないじゃない」

「……そうですよ、今回はシホさんメインの回らしいのであなたはこういう扱いになっているみたいですが」


 2人共メタな発言漏れちゃっているよ! だから自重しろって毎回言っているでしょ!

 まあこれで私が。主人公の座を降ろされないことを確認できたしよしとしようQED。


 さて話を戻しコロシアムの方を見る。

 シホさんの相手はというと。


「うごおおおおおおおおお!」


 筋肉質な体をした、ハンマーの冒険者。

 自慢げに自分の筋肉を周りに見せびらかす。


「お前が俺の相手か。お前の戦いっぷりはこの目で見ていたぞ。凄い実力を持った剣士とみた」

「……」


「だがここまでだ! 俺はすごーーーーく力持ちだから勝つなんて不可能だ!」


 なんかさあ。

 悪役がよく言うテンプレの()()()()()台詞を言っているようにしか聞こえん。

 絶対これ彼の敗北は約束されたようなもの。大体脳筋キャラって大言吐いてことごとく散るのが鉄板の流れ。


……そして勝負が始まる。


(あ、死んだなこりゃ)


 相手の冒険者は鈍足ながらも巨大なハンマーを振り回しながら、シホさんの方へと猛突進。

 巨大なハンマーをシホさんは快走しながら繰り出される鉄球を果敢に避け機運を狙う。

 疾走しながら軽々と避ける彼女の姿は非常に美々しい。


 1度立ち止まり剣で受け止めると力押しに持ち込まれる。

 圧抑に押され気味になりながらもシホさんは一歩も引かない。敢闘する姿勢に心を打たれた観客達は彼女にエールを送る。めちゃくちゃファン増えているじゃあねえか。


「そんなもの!」

「ぐぅ! さすがここまで来た強者ではあるな。ならこれならどうだ!」


 客の声援もあってか重そうであろうハンマー諸とも剣で払い飛ばす。

 冒険者はバランスを崩しそうになるが、体制を整えると再び武器を構え始める。


「ふんぬッ!」


 一呼吸をすると鈍重なハンマーを振り落とし、地層を掘り上げた。

 まばらとした大中小の瓦礫がシホさんの行く手を阻む。

 だがそれでも彼女は諦めずに、盛り上がった瓦礫を足場にしながら違う場所へと場所を変えながらジャンプし距離を詰めていく。


「足場を悪くしたつもりでしょうが、悪いですねこういうの慣れているんで」

「なにおおおおおおおおおぉ!」


 彼女にはその攻撃は無力で優勢に変わりはなかった。

 策が通じず自棄になり始める冒険者。


 そういえばシホさんって、遠い田舎からはるばるリーベルにやってきたんだっけ。

 聞けば両親に楽な生活を送ってもらえるよう、資金稼ぎに赴いたんだとか。


 けど案の定。稼ぎはよくなく、私と出会う以前は困窮で壊滅的だったらしいけど。


 しかし今の彼女はどうだ。


 表情を見る限りとても嬉しそうに自信ありげな様子で、目前と向き合っている。

 どういう彼女の心の進歩かは分からないが、蓋し私との出会いがきっかけで変われたのだろうか。


……そうだ、今度彼女に。


 彼女の故郷に行こうと聞いてみようかな。1度、シホさんの故郷にも行ってみたいし。

 と。


 視点をシホさんの方に戻し。

 シホさんは一度も当たることなく、敵の体を切り刻んでいき。

 息が荒くなった相手を見て、剣を前に突き出す。


「さて、そろそろおわりにしましょうか。これで最後です」

「ふざけるなぁ!」


 油断していたシホさんの隙をついて、ハンマーで叩き割るが。

 あれ、まじでやばくね。

 今明らかに歯応えのある音しちゃったけど。


 だがしかし。

 彼女は致命傷はおろか。全く無傷で急減させず駆け出す。

 背後へと瞬間移動し、息張り中腰になる。

 矛先は再び相手の背後に向けられ、獲物を捕らえる蛇のごとく、


「遅いですよ。これで最後です」


 シホさんが軽く横にすじぎりすると。

 相手はその場で伏せるように倒れ込んだ。


「お……おぉ」


 私が思わず声を漏らした次の瞬間。

 周りからは彼女へ勝利の喝采が。

 賑やかな声が響き渡り彼女を祝福してくれた。

 シホさんは照れくさそうに手を振りながら対応する。


「あはは。ありがとうございます」


 こうして大会は閉幕し。

 ブレイブタウンにまた新たな戦士がこの町で名を馳せることとなった。


 どうやら。

 この町はトロフィーはないけど、優勝者の名前をスタジアムに切り刻む習わしがあるみたい。

 コロシアムの入り口に大きな石像が立っているけど、そこにはいくつも歴代コロシアムの優勝者らしき名前がいくつも書かれ切り刻まれていた。


 勿論今回で彼女の名前も。

 シホさんは石像にこう刻み込んだ。


『コロシアム優勝者シホ 剣士の名にかけてこの石像に名を刻もう』


 と。


「って勢いよくかっこつけて書いちゃいましたけどだいじょうぶでしたかねー??」


 研究所に帰ったあと、シホさんが恥ずかしそうに私の方へ詰め寄ってきた。


「じ、自分の書いたことには責任持とうよ」

「で、でも、未来永劫あの字を見た人が私のことを変な感じで見たらどうするんですか?」


 今にでも泣きそうな彼女に。


「自業自得でしょ。でも優勝できたんだし少しは自分に自信持ったら?」

「……そうですよ、シホさんは本当は強いお方です。それは私達がよく知っていますから」


 彼女を褒め称えるように励ます。

 でも今回の一件で、彼女が本来どれぐらい強いのか染み染みと実感した。

 晦蔵(かいぞう)とは恐ろしいものである。シホさん恐ろしい子!


 その感想なんだが。

 反則級の強さだぜあれは。


「よくやってくれた我が同胞よ! 我が魔眼の効力のお陰とみたありがたく思いたまえ」


 急に会話にサーセン博士が加入してくる。


「だがよくやってくれた、お陰で今回の試作機がいいできの物だと確認できた」


 無限ベルトには。

 装着者の実践データが細かく入っていたらしく、その結果からすればとても良好だったとのこと。

 科学の力ってすげー。最近の中二病の中にはとんでもない科学者がいるんだと。

 いやまじですごいよこの人は。狂政とはどういった経緯で出会ったかしらないけど、今後また会う機会があったらここに来るのもいいかも。


「ということでベルトは返してもらうぞ。良好だったとはいえまだ試作機これから完成版に向けてバージョンアップしなくてはな。フーハッハハハ!」


 シホさんに巻かれていたベルトが彼女の手元へと移動。

 なにかしらの機械で移動させたんだと思われる。


「お礼と言ってはなんだが、愛理君。君のパーカーを少し強化してあげようか。……狂政ほどではないが恐らくやって損はないと思うぞ」


 お、いいことが耳に入ってきた。

 気前がよすぎじゃあないんですか~? 博士。

 報酬は弾むといった鋼の精神が彼女にあるんですか? Ohこれぞ神対応ぱねぇっすわ。


「まじで!? じゃ頼んじゃおうかな」


 私がそう頼むと彼女はチップ? のような物を手渡してくる。

 形はそう。

 デスパソのCPUみたいな小型の形状。


 小さい文字で『RABBIT PATCH Ver2.5』と記されている。


 ってこれラビット・パッチかよ。

 毎回アプデのときは現物見ていなかったから分からなかったけど、こんなに小さいんだな。


「それ何が入っているの?」

「主に拡張武器系だな、各パーカーに沿った武器を作っておいたから存分に使いたまえ」


 レベルアップの報酬でもそういうのあったような。

 まあいいか、逆に増えてこちらとしては好都合。

 私は早速。ラビットパッチを使い。


 アップデートを開始した。


 ……。


 ……。


 ……。


【ラビット・パッチVer.2.5にアップデートしました】


 はいktkr。

 追加された武器は後で見るとして。


「博士ありがとう。それじゃ私達はそろそろ行くよ。スーちゃんの故郷に目指しているからさ」

「ふむ、その国とはなんという名前かな?」


 知っていそうな言動。

 勿体振ったその様子から、私達に道を示してくれるようなそんな様子だった。


「……魔法大都市グリモアです」


 スーちゃんが即答で答えた。


「ふむグリモアか。あそこは魔法が盛んな大都市だからな。愛理君もきっと楽しめるはずだぞ。……そうだなここからだと平原を抜け森を通れば見えてくるはずだぞ」


「……行きましょうか愛理さん目的地は近いです」

「あ、私もスーちゃんの故郷気になるから早くいこ愛理!」

「ちょっミヤリーつねらないで! いってええええつってんだろ!」


 ゴン!っと。

 誤って無効化スキルを起動させてしまい、ミヤリーはてぃうんてぃうん。


 また棺桶へ。


「あ、すまんミヤリー無意識にやっちゃったわ」

「やっちゃったじゃないわよおおおおおお! 早く蘇生させなさい!」


 棺桶からまたオーダーが聞こえてくる。

 ま、後でそれはするとして。


「シホさんどうしたの?」


 ぼうっとするシホさんに目がいく。

 天井を見上げ何か思いふける様子をして。


「いえ、故郷っていいなって」

「? まあいいやそれじゃ今日はもう遅いし一泊して、続きは明日冒険を楽しむぞ!」


 拳を空に向けて突き上げる。他3人も私に合わせるようにし「お、おう」と少々棒読みで覇気のない声で腕を掲げる。

 いやもうちょっとノリノリな感じで言ってもらえると……まあいいや無理にやれって言うのもあれだしそれは流そう。


 私達は翌日。

 博士に見送られながら次の目的地に向けて歩き出すのであった。

 残すところあと3日ほど。

 遅くもあり早くもあるようにも感じる私なのだった。

読んで下さりありがとうございます。

最近後書きが書けていませんが、中身だけ読んでくださり楽しんでもらえたら嬉しく思います。

さてだいぶ8月もおわりに近づいてまいりました。とは言ったものの、まだ暑さは比較的に落ち着かない傾向ですが。日中書いているときなんてもはや地獄以外の何者でもありません。私から言わせてみれば地獄と言うより修羅場ですね本当に暑い。

今回はシホが博士のやってもらえないか的なイベントをこなす話でした。

実は狂政とは友達関係。唯一の大陸違いの友達なのです。

今後も彼女と絡む機会も出てくるのでお楽しみに。

因みに彼女は独身です。町で技術力は秀でているのに勿体ない!

それはさておき今回はここまでにして。

明日からはまた途中のお話を2話構成でまた書こうかなと思います。

間の話なので少々短めにもなるかもしれませんが、読んで下さると嬉しいです。

もしかしたらまた面白いパロが出てくるかもですそれでは。

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