85話 うさぎさん達、武器の街へ訪れる その3
【ちょいと付き合ってくれは恒例イベントだからしゃーない】
サーセン博士の研究所に訪れ早数分。
彼女の作った物をいくつか拝見することにした。
厨二病で言動が女性っぽい口調ではないことに関しては目を瞑っておく。
人のことを言えた筋ではないが、自信ありげな態度が非常に特徴的である。
見た目はラノベやADVにできそうなヒロイン染みた身のこなしであり、スタイルは抜群だ!
と言いたいところだが。
「さて恵んであげよう。この神腕によって作られしオーパーツの数々を!」
「わかったから、わかったから黙ってくれませんサーセン博士」
「しかし断るゥ!」
即答かよ。
と訝しげに彼女に視線を送る。
宝の持ち腐れって言葉知ってる? 使いどころが分からず勿体ないみたいな意を指す言葉があるんだけど、彼女はそのかわいさと性格が合致せず、変な博士だと思う自分がここにいます。
彼女が出してきたのは。
中に色んな発明品? がたくさん詰められた縦長の鉄箱。
リサショによくありそうな、安価のガラクタ箱だがそれからガサゴソと激しい鉄と鉄(多分他の物も入ってると思う)が絡み合う音が1つの騒音を作っていた。
「遠慮なく見ていってくれたまえ。私の脅威の発明品は全てオリジナリティに溢れた特注品だ! ふーっはっはっは!」
「お、そだな。めっちゃ音なっていたからなにがあるのかと……」
「ふーんよく分からないけど何があるのかしら」
躊躇いもなく、既に中身を漁り始めている少女が1名。
便乗し始め他の2人ものぞき込む。
「……宝の宝庫ですねこれ。シホさんこれなんか魔力は出ませんが音は鳴りますよ(ピピピ……!)」
「謎の魔導具ですかね? 愛理さんがいつも使っている銃と酷似してますが」
いやねえよ。明らかにおもちゃ売り場に売られていそうなトイである。
光線銃らしき小型銃な見た目をしており発砲部分を押すと、一定時間点滅しながら銃音がなるという子供に真に受けそうな品物。すげーしょうもないですよ博士!
カソゴソと箱から音を鳴らしながらかき回す。
どれだけたくさんあるんだよ。
底が見えないほどの試作品の数々が中に埋もれており、言うならばおもちゃの箱みたいだ。
私もいくつか気になるものを触れはしたが『ビー玉ゲームができるバーチャルアクションゲーム』、『物理法則を無視できる最強銃』、『ゴーストアライザーライフル(壁を貫通する透視銃?)』など多岐にわたる。
まさかとは思うけど、ほぼ失敗作の塊とかいうんじゃないでしょうね。
ミヤリーが先陣を切って何かをすくい上げる。
【ミヤリーは『あれは嘘だ』を手に入れた】
また変な名前の物が出てきた!
なにやら正方形をした箱だった。
どこか禍々しいオーラが漂ってくるのは気のせいだろうか。開けちゃいけないヤツ。なんだっけ? ……そうだパンドラの箱だ。あんないけない系の物に見えるがはて。
特徴的な模様は特に施されてはない。RPGでよくありそうな宝箱。これのどこが発明品なのだろう。
「それは『あれは嘘だ』という発明品だ。一見ただの箱にしか見えないが」
と急にボックスが点滅を始め、徐々に発光速度が加速していく。
「ちょっ博士! 爆発なんかしないよね?」
「案ずるな、危険はあれど死までには至らん」
今さらっと危険はあるとか言わなかった?
な、なにが起こるって言うんだ。
次の瞬間。
ミヤリーは体ごと、壁から壁へと幾重にもわたり飛びまくり反り続ける。打って反対へ当たりまた当たったらその逆方向へ。
めっちゃ痛そう。
一同反り続けるミヤリーを目で追い続け呑気に流す。
その様子はまるでバウンドするボールのようだった。
「あわわわわわわわ……助けてぇぇぇぇぇぇ! てか何無視してんのよ早くたすけなさいいいいい! いたたたたたぁさっき頭部のつむじに!」
跳ね返りながら感想を述べるミヤリー。
反りようがマンガやアニメだな。……弾力Sとでもしておこう今ならこいつはスライムにでもなれそうな反発力。
と反動がなくなったのか、ミヤリーは下へと這いつくばるように伏す。
どうやら終了したみたいだ。
「持つだけでお手軽に飛びまくれる急速反射する装置だ。より強い刺激が欲しい者に打って付けの品物だ」
「どMホイホイなもの作るなよ! み、ミヤリー大丈夫?」
うつ伏せになるミヤリーはbのポーズを向けて問題ない様子を示した。
ミヤリーはすぐ飛び上がり元いた場所へと戻ってくる。
「死ぬかと思ったわ! なんなのこれただ持っただけで勝手に動いたんだけど」
「それが欠点なのだよ、放置手に持っていると勝手に起動してすぐ動くんだなこれが」
なぜボタンをつけなかった。
「ボタンつけようにも、それだと反動力がなくなってしまうからこのような仕様になったわけだ」
むしろそっちの方がよかったのでは。
あ、でもそれだと誰得な物になるので需要性は皆無だなそれは。
「……これはなんですか?」
今度はちょいと細めな杖が出てくる。
「魔力を流し込んでみるといい」
スーちゃんは言われたとおりに魔力をちょこっとその杖に宿らせた。
すると杖の形状が変化し、スーちゃんの座高と同じぐらいの高さまでスケールアップ。
「トランスロッドだ。お手軽に持ち運び便利な杖。もちろん魔法もこれまで通り使えるぞ」
「……すごい。これ欲しいです」
折りたたみ式なあれかな。
いつでも持ち運べる系の物みたいだけど、これはなんか便利そうだね。
「だがスー君、それは魔力を大量消費する魔法を使うとな爆発する」
さっき爆発しないとか言っていたじゃねええか!
敵に譲渡でもさせて自爆させよってか!? そんな巧妙な戦術いつどうやって使うんだよ。
「……はぁ。それは残念ですやっぱやめておきます」
それから何度も手当たり次第探すが、これっぽい良品はなく。
殆ど欠陥ばかりの品物が多かった。
「まともなやつないの?」
「この中の物全部失敗作なのだ。いい物があるわけなかろう」
ならまともなものは何があるのか。
そのように私が聞くと。
彼女はリモコンらしきものを取り出し、それをぴっと押す。
目の前に現れた光から巨大な武器らしきものが現出。
剣とベルト?
「これでも武器は真面な物を作っているほうだ。ブレイブタウンの機械武器専門店に並んでいる高値の武器は、ほぼ私の開発した武器だ。……こっちは欠点はほとんどないから大丈夫だ」
そういえば、機械系で動いている武器が売れている武器屋も中にあったな。
物騒な物音が目立っていたが。
あれも彼女の発明品だったのか。
「これは今私が開発している最強の剣『フロアクション・ソード』、ベルトは『無限ベルト』だ」
「それは一体どんな能力があるんですか博士?」
シホさんが手を差し伸べながら彼女に聞く。
どうやら興味が沸いたらしい。
え、気になるよこれ。いかにも惨殺剣みたいな形状だけど!
「剣は自由に力を極限まであげ、敵の力の数値を極限まで低くする」
それチートじゃね?
「ベルトは状態異常無効。しかも空腹の影響も受けなくなる」
「ほほう、面白そうな武器ですね」
「シホさん、ベルト良さそうだけど剣はやめておいた方が」
「うーんどうしましょうか?」
天を仰ぎながら考え出すシホさん。
「そういえば、狂政から研究の手伝いをするよう頼まれているんだったな。……そこでだ」
なんかノリでこの人、話を持ちかけてきたぞ?
明らかに忘れていたみたいな顔をしていたが、話のさなかようやく思い出したパターンですねこれ分かります。
「明日、ちょうど冒険者同士で強さを競い合うコロシアムがあるのだが出場してくれないか?」
博士が提案してきた無茶ぶり。狙っている? 狙っていたわけですか。
うむ、この博士やってくれるじゃあないの。
それは。
この出された試作の武器を使って、大会出てくれないという相談だった。
☾ ☾ ☾
【逆に考えるんだ反則武器なんて使わなくたっていいさと 馴染んだ武器がやっぱ一番やろ】
内容を聞く。
このブレイブタウンには週1ペースで、各々の実力を競い合うコロシアムが開催されている。
ルールは不問でほぼ自由。
冒険者カードがある冒険者ならば、誰でも参加OKという仕様だった。
割とガバガバなルールに聞こえるが、それがこの大会における当然の仕様なのだろう。
せめてさ、禁止や制限の1つや2つ付けようよ。詰みコンボとか開発されたらこれクソゲー確定じゃないか。
で。
博士が私達にお願いしたのは1つ。
試作中の武器を使って、実践データの回収をしてもらいたいと。
今後の開発品に活かすため彼女はその戦闘データを欲しがっている。当然ながらサーセン博士は戦闘向きの人ではないので戦いとは疎遠。
ので向来自分に代わってやってくれる……言わばテスターになってくれる冒険者を探していたようだ。
因みにこの街にいる冒険者にも駆け込んではしたものの素直に首を縦に振ってくれる人は居なかったみたい。気がすすまないや恐ろしくてできないなど否定的な意見が多かったのだそう。
「誰か1人に出て欲しい。……さあ神に与えられし恵みの力ありがたく思うがいい」
「……どうしますか?」
厨二病発言する博士はさておき。
円を作るように私達はかたまり相談し合っていた。
「1人ですか」
シホさんがよそ見しながら怖ず怖ずとした素振りをみせる。
ここにいる人は全員チキンってわけではないが、優秀(確信とは言っていない)だ。
博士が言ってきたのは。
私達の中から1人を大会に参加させること。
細かい実験の手伝いはしなくていいから、実践データを大会で採取してほしい。
そういう話だ。
「ミヤリーお前行け」
投げやりで彼女に振ってみる。
実質無敵モード様だからこんなの楽勝っしょと軽はずみな気持ちで持ちかける。
腕を組ませ、頬を片方膨らませながら顔をしかめこちらを……あのミヤリーさん?
「だからなんでよ、それにここ武器の町って言うぐらいだから強者揃いなんじゃない?」
じろじろみてなんか誤魔化してそうに見える。
お前あれだろ、チキっているのか。
いつもはあんなに自身あり気に、前へ出るくせにどういうことだよ。
あれはあれ。これはこれみたいな言い訳は愛理さんには通用しないぞ!
よくきくご都合主義というやつだろうか。
「私がやってもいいけど、多分即試合終了するよ」
デバフや即死系? を懸念してんの。博士の装備試作ってついていることだから半信半疑なのかね。
さきほどの反射装置が余程怖かったのかね。すげー今拗ねていますよ奥さん。
それはおろか注目浴びて周りからマークされそう。
「でも愛理さんが出たら勝負にならなそうなので、愛理さん以外の方が出たほうがよろしいかと」
「私この大会で否定される対象なのか!??」
「そういった意味では……あはは」
いや即答かい! あ、でも待てよそれもそうか。
スーちゃんは魔法が本職だし剣術には向いていない。
……。
なら待てよ。
候補者。
1人しかいなくね?
3人の視線がシホさんへと向けられる。
「な、なんですか3人とも」
「じー」
お察しろという視線を送り、シホさんは苦そうな顔をする。
すると彼女は諦め嘆息し。
「あぁもう分かりましたよ! やればいいんでしょやれば!」
と胸を張りながら、我がパーティの主力メンバーと言えるシホさんが。
サーセン博士の方へと赴く。
「ほう選ばれし者は君かシホ君! いいぞこの我が魔眼とうずいた右手から生成された武器を手に取り力を扱うがいい」
「あ、そういうのいいんで……ほら一式貸してください装着するんで」
「……そうなのか よかろう」
聞き飽きたのかシホさんは、話を早く進めるよう言い出す。
「でも博士、私剣だけは自分のだけ使いたいんですよ。これがないと落ち着かないんで」
チート武器を投げ捨てるか。
それはシホさんらしいいい判断だと思う。
「…………少々気が引けるがいいだろう。ならこのベルトの使い方を教えてあげるから、明日のコロシアムいいデータを取ってくれよ」
手のひらを差し出す彼女にサーセン博士は一式を手渡す。それを装着し身をこなすと一発で博士はオッケーのサインを送った。
こうしてシホさんが、ブレイブタウンのコロシアムに参加する運びとなった。
シホさんの無双擊これから始まるのか?