84話 うさぎさん達、武器の街へ訪れる その2
【研究熱心なことは良いが適度に休むのも仕事の一環】
なんで昨日出せなかったかって?
それは作者が夏の暑さに追いやられ、スタミナ切れを起こしたからさ。
メタ発言乙。
そんな作者のリアタイな話は、置いといて本題に移るが。
先ほどあった中二病研究ry……もといあの研究者サーセン。
瞠目とした目つきが特徴的な、どこか貧血気味な風貌が目立つ博士キャラだったが、なんだろうか私からは狂政と似た何かを感じさせる。
本名はサイセレンスというお名前らしい。
やたらと長い。
早口言葉で何度か言い繰り返すと噛みそうな名前だ。あれフリじゃないんですよね? よくある異称がある人とかいるじゃあないか。あれ……なんかな。
これが本名なのかと半信半疑に私は待ちに張られている張り紙を見る。
「なんじゃこりゃ。ビシッととした決めポーズとってるけど、モデル撮影でもしているのかこの人は」
「……なになに? 凶器の深淵に来たり英知溢れるエデン クサハエ研究所はこちら。どうですか一緒にこの世に存在する機関に対抗するための物を一緒に作ってみませんか?」
厨二病全開で草。
サーセン博士のかっこつけたポーズの手前には、派手な赤太字のフォントから案内図には黄色いフォントで装飾されている。
名前の響きからして、科学要素があるように見えるがそんな彼女は。
この町で様々な研究をしている研究者の1人でその中でもずば抜けで、技術力が高い研究者らしい。
ブレイブタウンでは数百人と彼女以外にも研究者は数多といるらしいが、彼女並に勝る人物はこの町にはいないんだとか。街中で見かけた雑誌をちょっと立ち読みしたのだが、そこには彼女のことがたくさん記述されていた。
「派手なフォントだなこれ。有名なソフトウェアがこの世界にあるんかね?」
「そふとうぇあ? なんですかそれ?」
んまあ分からないから毎回毎回こうして私が仲間に説明を挟まなくてはならない。
あーあまんどくせー。と心ではそう言い聞かせつつも天邪鬼に気持ちとは逆手の事をやり、私は丁寧に説明する。
「んんとなんて言えばいいかな。ゲームみたいなものだよ。……使う機械はちょっと違うけどね」
「あぁそのそふとうぇあ? って狂政さんが貸してくれたゲームみたいな物なの? ……今度似たような物を彼に頼んで貸してもらおうかしら」
厳密にはゲームではないけどね。
というか軽視しているミヤリー、あれは凄いぞ関数とかいう頭が痛くなるような単語を使う物だって中にはあるからさぁ。こいつがやると頭が沸騰しそうだがそれはそれで見物ではある。
『ブレイブタウン1位の科学者!』
少々仰々しくも感じるが、傲然とした口調はともかく覚束ないが確信していいだろう。
因みに彼女がすんごい研究者だと知ったソース元は、町に貼られた張り紙だった。
びっしりと彼女のプロフィールが写真と共に記載されており、個人情報が丸裸状態。
公開処刑ってやつじゃねこれ。
そんな町の彼女のプロフィには。
『サイセレンス 年齢25 生年月日3・16』
の下に。
『クサハエ研究所で様々な研究、開発をしている科学者だ、我が同胞よこの私の前に集え。さすれば大いなる闇の力が数多の光から授けられるであろう。待っているゾ! クサハエ研究所はこ↑こ↓』
と地図の表に彼女の研究所がある場所に、丸で囲うように案内図もご丁寧に作られていた。
絶賛。
多少興味が惹かれたので、彼女の研究所に向かっているところだ。
と言っても先ほど当の本人から教えてもらったのだが。
「この道で合ってる? なんか色んな武器屋がごちゃごちゃしていて分かりづらいんだけど」
街中にある、細い路地を何通りも抜けていく。辺りからは金属が反る音や室内にて鍛冶で金槌を打つ職人の姿が……。
「……え、あれアーク溶接あんの!? SFに出てくるかっこいい武器があるんですけどもぉ!?」
「お、落ち着きましょうか愛理さん」
「ちょ!? あともうちょ……あわわわわあわあわぅ!」
中には信じられないアーク溶接で燦然とする大剣が私の視界に入った。
思わず素っ頓狂な声を上げるとおかんに引っ張られるが如くシホさんに微苦笑されながら向こうへ引っ張られていく。
「……この街にある武器はですね、中に特注品があるんですよ。他の街とは比べものにならない武器もあったり。……折、王族や貴族の方に頼まれることだってあるんです。……高い物でムゲンダイセキ50個必要だったりするものも」
規模が違いすぎる。
富豪人にも目付られるって知名度高くねえか。
まあ改めてここの技術力はそれなりに高いものだと、この目で見て実感した次第である。
数ある鍛屋屋を歩いていると一際大きい白銀に煌めく城塞。長方形の立方体をした建物が目の前に映り込む。
東京ドームも非にならないくらいの大きさ。
「あれじゃない? なんか研究所っぽい建物があるわよ?」
「……どこです? ……なんですかあの大きい居城は」
勘の鋭いミヤリーがそれらしき研究所を発見。
その建物方面へと足を進ませると、『クサハエ研究所』と書かれた看板が私達を出迎えてくれた。
学校の門前にある名札みたいな、大きめのネームプレートで。
(金箔で塗装されてるけど結構金かけてるんか?)
おまけに色は100均によくある安い金の塗装ではなく、本格的なガンメタな硬度の高そうな金であった。
それはもう凝り過ぎだろと思うくらいのクオリティだった。
私も自作PC作ったことがあるけど、それ以上かけていそうだぞこれは。
あの人、単なる中二病ではないみたいだな。
門の前に立つと、前に掛けられていた格子扉がスライドするように開く。室内へと続く白いタイルを辿って行くと自動ドアらしき扉が。
「この不透明な扉は? 渡し初めてなのでよくわかりませんが」
「前立てば自動的に開くんじゃね。さっきもそうなったでしょ」
「あ、そっか。愛理さん博識さすがです」
異世界に今度は自動ドアときた。
真上にコンビニによくある、センサーらしき物が取り付けてあるから察しが付いた。
単なる当て推量だが、間違っちゃいないかもな。
ぷしゅ。
眼前に立つと静寂とした物音を立てながら扉は左右へと開く。
え、まぢかよこれ。
「「まんま自動ドアじゃねえええええええか!」」
するとウィンドウが表示され。
「? なんなん」
指摘の文面が書いてあった。
【愛理さんお静かに】
「そうだね……サーセンした」
「? 愛理さんなに独り言いってるんですか? 早く行きますよ」
「……意外とみんな驚かないことに愛理さん度惑っているんですが……! って待ってよ」
思いのほか、普通のように仲間達はドアをくぐり、歩一歩進んでいた。
驚きすぎなのは私だけか?
まあ狂政の街で馴染んだ可能性も。
あぁと私はそれで悟ると、先へと進む仲間を追い潜り中へと入っていく。
そこには。
錯乱する、汚い部屋が目の前に広がっていた。
「……」
一同その景色に言葉を失う。
いや誰かしゃべれよ。え、ここは先手として主人公である私が何か言わないといけない感じ? みんなの瞠目がこちらへと向いていることに気がつく。
俗に言う暗黙の了解というやつかこれが。
「なんぞここ……(みんなをキョロキョロみながら) まるで廃人の住処だな」
広々とした部屋には大量の山積みとなった本の束があちこちに、何台か物騒な機械が鎮座しているがあれは一体なんなのだろう。
ピコピコと音を立てながら、自動運転しているようだがなんぞあれ。
と私の前に1台のロボットが近づいて来る。
「あなたはさっき愛理を八つ裂きにしようとした」
ミヤリー人を勝手に殺すなし。
「お前、人を勝手に殺すなよな? ……ってこのロボットさっき私を襲ってきたもういいだっけ?」
「サヨウサヨウでございます。その節ハ失礼イタシマシタ」
ぺこりと一礼。
すげえな。
AI、人工知能ってやつか。
私のいた世界では、ケータイショップで似たような前進白のロボットをみたことあるが、あれとは別格。
人と差がない、口調で話しうまくその言葉を明確に聞き取れる。
私はよく知らないがシンギュラリティなどそういったものなのかこれが。
科学の力ってすげー。
これもサーセン博士の開発品なのかな。
というかもういいって名前ややこしくなりそうだから別の名前にしろよ。
「サーセン博士に会いたくて来たんだけど大丈夫かな?」
「あぁ、オラレマスヨ、その研究に没頭中デス」
と奥の機械側を見ると。
「く、どうしてだ! うまく装置はまとまりきっているはずだ! もういい! 勝手に離れるな………………と?」
そう言いながらもういいの方へ振り向くサーセン博士。
狂政も同じような振る舞いでこんな出オチ感があったがえ、デジャヴなのこれってそういう属性のキャラ? 愛理さんにとって狭き門だなこれは。
彼女はもういいより、私達の方に興味津々で瞠目しながら電光石火のごとくこちらへとピュンと近づいてきた。
私にハグしてきて。
「ぐおおおおおおおおお!??」
「おっとすまん、うさぎ……いや愛理君。つい私の心がネクロの力によって支配され洗脳されてしまったのだ許してくれたまえ」
仰々しい中二病ゼリフが目立ちすぎて腹立つ。
ゲーセンや小中に何人か1人はいる系の、正真正銘の厨二病だこの人!?
「厨二病おつ。というかさ、痛いから離してくれない?」
「し、失敬」
我に返り後ずさる。
「愛理さんチュウニビョウってなんですか?」
まんどくせ。
異世界人にまた余計な言葉を私は教えてしまったらしい。
「……新種の魔法かなにかでは?」
スーちゃんたぶんそれ絶対違うよ。
種も仕掛けもないものだからね。
「え、えぇと」
私が言葉を探っているとサーセン博士が。
「ふふふ、強大な力を増幅させる魔法の言葉さ」
「……博士それをもっと詳しく」
「いいだろう! スーちゃんと言ったか……幼いながらも飛び抜けた才能の持ち主。我は最初っから分かっていたぞ! この神聖なる領域は万物の王から与えられた祭壇。力が欲しければ我にしたがうがいい。エルプサイコングウ!」
だぁもう。
うちの子に変な知識入れ込まないで!! 特にスーちゃんはまだこれからっていう育ち盛りの女の子だからまじでやめれ!
私は博士の口を塞ぐように手を彼女の口元へと乗せる。
「んんんんんん!!」
「サーセン博士、変な知識入れないでくれますかねぇ?」
博士にそう言うと彼女は目礼し詫びた。
いやメンタル豆腐ゥ!? 踏ん張れよ博士!
☾ ☾ ☾
「改めてようこそ諸君。我が名は……」
中二病名前はカット。
「狂政から聞いているぞ? 私の研究の手伝いをしてくれるってことを」
え、狂政が頼んだことってサーセン博士のお手伝いか。
まあ手が空いているってことだからそうなるのは当然の結果だな。
「それで博士、そのもういいって博士が作ったものなの?」
「オフコース! 如何にも我が神聖なる眼差しを生み出す裁きの手によって創った! はっは!」
甲高い声で高々に答えてくる。
「他にも見るか? 例えばこれは……」
と彼女はなにやら照明灯と剣の柄を合わせたような物を持ってくる。
「これをこうすると……」
博士はスイッチらしきものをカチッと押す。
するとほとばしる電圧音と共に目映い青白い光りで発光。
これってもしや。
「名付けて"相手は死ぬ"だ。この剣に付いてあるスイッチを押すとな、1000v以上の電圧を持つ剣。突き刺したり、軽く攻撃するだけで敵を一瞬にして倒せる品物だ!」
え、それめっちゃ欲しい。
某映画の光る剣みたいなあれだろ?
戦力補充の為ここは。
「それいくら? その剣買った!」
と私が意気込むと。
「すまん、確かに強力なんだがこれはギルドから危険判定を受けてダメ出しされたものなのだ。……それに稼働後3分しか持たない。ギルドによれば『誤って使えば被害甚大、もうちょっと加減した物を作るように』と言われた」
そりゃそうなるわな。
下手すれば殺戮兵器だろそれ。
って危険判定ってなに? 危険の強度的なやつかな。
知らんけどそんな制度があるとしたら、その剣どれだけやばいんだろう想像もつかねえ。
「そんな危険な品物世に出したらだめでしょ」
「あ、でも愛理さん私欲しいかも」
なあに物欲しそうな目でみているの。
仮に考えてみろ、彼女が取れば鬼に金棒。空腹を除けば敵に勝る者なしといった感じ。即死ゲーじゃないんだからさもうちょっとここはパワーバランスってものがあるでしょ。なので拒むように説得させ。
「ダメだよ、シホさん危ないって」
というか、なんで名前が"相手は死ぬ"なんだろ。
名前がまんま過ぎて草。
どうせなら"もうあいつ1人でいい"の方がしっくりくるのでは? 二次創作から生まれたスラングだが……いやなんか違うやっぱやーめた。
「……愛理さん博士に他にもいろんな物見せてもらいましょうよ。もしかしたらすごい物あるかもですよ」
「そうですね、旅行ついでですし、見ていきましょうお手伝いはその後ってことで」
「…………わかったよ。ちょっとだけだよ」
苦そうな顔をしながらも、しばらくサーセン博士の開発品を見物することにした。
一同部屋中にあるものを物色し始める。興味津々だねぇ。
まさかとは思うが。
カオスな品物があるんじゃないだろうな?