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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第1章 うさぎさんとの出会い
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8話 うさぎさんと平凡な? 1日 その2

【時に過酷な討伐も仕事の一環じゃね?】


 とりま、国の地下にある例の下水道まで来た。

 水脈が流れており、その通りは乱雑。つまりいくつもある。

 大規模とした度量衡(どりょうこう)だがはてどれくらいの時間がかかるのやら。


「一見普通の下水道だけど、……中がヤバな感じ?」

「いえ、やばいどころかこれは非常にまずいですよ。ミドロンは」


 そもそもミドロンって何者。

 同●誌に出てきそうな粘液状のモンスター? はたまたRPGにいる水体状のモンスターなのか。

 想像がつかないな。別に変な妄想は断じてしてないからね? 最初にそう断っておくよ。


「その、ミドロンってどんなモンスターなの? ゼリー状のちっちゃいモンスター?」


 しかしそう言うとシホさんは、ふざけたこと言わないでと言いたそうな顔をしながら、私を睨む。

 え、私なんか変なこと言っちゃったかな。「えーそんなことも知らないの?www」的な感じで思われちゃったりしてない大丈夫?

……落ち着け落ち着くんだ私。適当な分数を帯分数にしたり仮分数などにして気を紛らわすのだ。

 箱入りとか思われても、私しらね。事後に言い訳なんて無駄な足掻きだし。


「……愛理さんは戦ったことないからそんなこと言えるんですよ。ミドロンはですねドロドロした体に加えて男が出す()()な臭いを出すんですよ」


 斜め上を行く特徴を聞いたな。

 アレ……。

 ちょいとこの小説で表現したらNGなのかもしれないので、敢えて緩く表現しておくけどみんな頼むお察ししてくれ。


 って小説って。

 以下略。


 そうだね。

 一言で表現するなら、色はレモンジュースみたいな……ギリギリセーフかこれ。

 まあそんな強烈な、臭いのするモンスターってことは把握したけど、だからどうしたんだって話。


「これまでに1週間何人も気絶した方がいるとかいないとか……」

「どれだけの臭さだよそれッ⁉ 公衆トイレよりやばいやつだろ!」


 いやどっち!? どっちやねん。

 明確な情報源(ソース)はよ。要約するとむっちゃ臭い、考えを巡らせても想像できないにおいだが……においってどのように想像すればいいんだ?

 でもさ、危険だってことは伝わった。

 伝わりはしたけれど、相当手強い敵なんじゃねソイツって。


(国に住む人よく、こんな環境下で生きていけるな。私だったら即引っ越しだわ)


 ……アレでなんとなくソイツのにおいが、いかにやばいかを察することができたと再認識。

 それが何かとは言わないがそれ嗅いだだけで気絶ってどんな臭さなんだよ。

 つうかどこからガスマスクでも買ってこようぜ。

 ……ってあるわけないよね当然。


「通常の50倍の臭さなんだとか」


 一言ごとに飛び出してくる情報がパワーワード過ぎる。

 50倍って数字どこから来たんだよ。

……異世界の闇深すぎて草。


 どこかにいる、軍の彗星みたいな言い方やめようか。

 3倍とっくに超えちゃっているよ。


「うげ、鼻おかしくならない? それ。リバースして吐いたらどう責任とってくれるんだよ」


 腐臭を嗅ぐ事なんて、人生で1回誰もが経験する事柄。

 だが、どれぐらい臭いのか安全性を確保する上で彼女に聞いてみるが。

 期待するほどの返事は返ってこない。もう心内で哀愁に襲われている自分がいる。


「大丈夫ですよ。……たぶん。だだだ、大丈夫ですよいままでの冒険者さんが少し経験不足だっただけでして」


 そんな誤魔化すように嘘言ってもなぁ。顔を作りにこやかに答えているが汗出てますよシホさん。

 いや安全性100パーセント保証ないんかい!

 分かっていたけど!

 これはどちらが先に、くたばるかの時間勝負になりそうな。


「安全性は保証できないんだね。なにその泥試合招くような害悪モンスターは」


 頭の上に疑問符。

 彼女はそれを浮かべ、眉をひそめた笑顔でぽかんとするが説明を続けた。

 現代のスラングに、はまっていた私の言葉に理解を持てないのは当然だよね。


「現に多くの冒険者はミドロンを特に嫌うんですよ。『臭いからやだ』『いくら報酬がでかいとはいえ、アイツとは戦いたくはない』という声を聞いたりします」


 チキン乙。

 私も言えた筋ではないけれど、少し戦う度胸があったら戦え! と念を押したくなる。

 それほどに敵は強大で短期戦では済ませないほど敵なのかな。


「ひょっとして冒険者の中ではそのミドロンっていうモンスター結構嫌われてたりする?」

「はい。初心者から上級者まで幅広い冒険者達に嫌われています」


 なんてこった。

 要するにそのミドロンというモンスターは、害悪遅延系のモンスターかなにか?

 そういえばクエストの依頼一覧みたらやたらとこのミドロン討伐関連のクエストが多かったけど、一体何があったんだ。


 ……ここの世界の人達は何だろう。揃いに揃ってチキン揃いなのだろうか。

 1人でもいいからさ、少しは世のため人のために戦ってあげようよ。

 その先駆者のひとりとして私は立ち上がる。

 ……行け愛理忌まわしき魔物ミドロンの記憶と共に。

 地球にでかい隕石落ちそう。


 半目開きしながら先と周りを見る。

 ヤツの姿はまだ見えない。

 流れ行く井戸をのぞき込んで見るが、水面には可愛らしいうさ耳パーカーを着る私の姿が。


 ふ。

 やっぱ慣れないわこの服装。

 陰キャが惨めな自分の姿を嫌々鏡で見ているような感覚。

 罰ゲームだろこれ。


「愛理さん、どうしたんですか? 周りをチラチラみて」

「いやさ、冒険者達に危険視されているってことは余程手強い相手なのかと。だからこうして周りを注意深く見渡しているってわけ。いつでも攻撃できるようにね」


 別にビビってなんかないよ?

 正当なルートを選んでいるまでだ。

 ? 言い訳するなと。しらんがな。私が正当って言ったらもうそれは正当な道なんだよ!

 と上から目線で心の中で思いつつ。

 小さく笑うシホさんは。


「あはは、そこまで慎重にならなくてもいいと思います」

「……シホさん因みに聞くけどさ、そのミドロンっていうモンスター戦ったことあるの?」


 そんな危険なモンスターとこれから戦うっていうのに、彼女の余裕な表情はどこからくるのか。

 湧き上がる自信満々な精神力か、または単なる痩せ我慢。

 これほどに余裕ぶっていられるということは、戦ったことがあり既にもう慣れた、そのように捉えられなくも。


「勿論ありますよ。その時は1匹、2匹を技で倒したら空腹で倒れてしまいましたが」

「よくその時ずっと倒れていられたね」


 だから2撃で倒れるってどんな体力しているのさ。バグみたいにずっとジャンプしていれば1歩としてカウントしないみたいな設定があったり……ないよね分かっている。

 縛りプレイかなにか? 低すぎるのにもほどがあるだろ。

 シホさんは、余裕そうな笑みを浮かべながら言った。


「いいえ、辛うじて他の冒険者が私を庇うように全部倒してくれました。大変でしたよあの時は」


 冒険者さんの方々お気の毒に。

 さぞや過労だったのかな。

……戦略ゲームみたいに彼女を守っていくイメージを頭で描いてみる…………きつそう。

 別に彼女を悪く思っているわけではないがどう擁護する言葉を返してあげればいいのやら。


「いやどれだけ呑気なの! ブラック企業慣れしているサラマンだってまだ戦えるはずだよ!」

「その……サラマンという単語は聞き慣れないのですが、大丈夫ですよみなさんクエストが終わる頃には気にしてない素振りをしていましたし」


 いやそれ絶対内心呆れて、気が引けてる系のあれ。彼女の見えないところで嘆息を何回か吐く様子が目に浮かんでくる。

……疲れるんだよったく。


 みたいな。

 冒険者のみなさんこの際だから言っておきますけど根はいい人なんですよ。お金とか困っていたら気前よく渡してくれるし。

 なのでシホさん用に求人票の1枚だしてあげてもいいんじゃあないですか。


 再度シホさんの最強空腹スキルを確認できたことで私達は先へと進んだ。


☾ ☾ ☾


【戦う子は育つ。シホさん、怒涛の斬撃ラッシュかよ】


 広々とした空間。

 地下水道は石作りとなっており岩壁の一部、水道に繋がっていると思われる土管がところどころ付いている。

 恐らくそれぞれの土管が、この国にある水道へと繋がっているんだろう。

 蛇口をひねったら汚水がドボドボと…………。

 おえぇ。

 想像していたら、吐き気が……もう変なイメージはよそう。


「意外と広いね。私達の国もこんな感じに整備されているの?」

「はい、でも国によって壁に使っている素材が違いますね。他の国では壁を全て金にしている場所もあるんだとか」


 何処の世界にも、リッチな生活をしている国はあるらしい。

 いや確かに金さえあれば、なんでもできるんだろうけどそこまでする人達がいるなんてね。

 金ある者は最強の権力と攻撃力があるとか思っているんだろうか。

 だとしてもなんか調子に乗りすぎなんじゃあないか。


「どれだけ豪華にしたいんだよ。余所の国は。集中砲火でも食らって明日滅亡しても私しらないよ?」

「いやいや救いましょうよ‼ ……きっと目立ちたがり屋の人が多いんじゃないんですか、気を強く持って格差を見せつける……みたいな」


 うーん異世界の闇っていうのかそれは。……どの世界でも自分を強く見せたがる権力の人がいるのだろうか。……逆に弱く見せたら他国からディスられたりするからそこを補うためあえてそのようなことをしている可能性も。

 思い立ったが吉日とか言うし、やりたいと思ったらすぐやった方がいい……そんな心構えを持った人が多いのかな。


「それで例のそのミドロンっていうモンスター何処にいるの?」


 ミドロンってどんなモンスターだよ。(復唱)


「ギルドの受付のお姉さんの話によれば、濁った水溜まりに密集しているらしいですよ」


 まさかの目と鼻の先にいたヤツ。それならさ早く伝えてくれればよかったのに。

 でもイメージ通り過ぎて、なんか馬鹿馬鹿しく思えてきた。

 じゃあこの濁った水もヤツらが汚した原因だっていうのか。


「ん? あれは……ねえなんかあそこ怪しくない?」

「……ほんとですね。水流の1箇所だけ泡がいくつも浮かんできています」


 私が足を踏み出すと。

 流れ水がなにやらぷくぷくと泡が出ている。

 ……なんだあれ。


 煮え立てのお湯のような泡立ちだが、なんか嫌な予感。

 ほら。絶対これやばいこと起こるパターンじゃん。

 余計なフラグは立てていないはずなのに。


(あぁ帰りたいなこんなクエストやってよかったのかぁ?)


 今更ながら弱音を吐く私。

 後戻りはよくないと聞くが、正直舐めていた(やつ)がここにいます。

 おのれ孔明と、世の中の世知辛さを痛感する。お金を稼ぐ親の気持ちってこんな感じだろうか。


 私が。

 ミドロンのことばかり気にしていたからバチでも当たったのか。

 次の瞬間。

 泡の部分から水が噴き上がり。


「ウガアアアアアアアアアア‼」

「急に沸いてきたぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんだよこのドロドロとした野郎はッ⁉」


 枯れたようなゾンビみたいな声。

 呻吟(しんぎん)するような声量に思わず絶句。

 くさいにおいが漂って……うわくせ。手で仰ぎたいくらいに強烈だぜ。


 汚水した水道から現れたのは、粘性の体をした二つの目を持つモンスター。

 体色が全体的に緑色で覆われており、その見た目は目を逸らしたほどに醜怪だった。

 口元からだらしないように物を露わにしながら目の前に立ち塞がる。


 うえぇきんも。

 姿を現した3匹は地を這いずりながら、こちらへと近づく。

 ……こっちくんな。


「……」


 気が早いそんな感じがしてままならない。

 あまりの唐突展開。少し待ってくれかと言わんばかりの現れようで準備の出来ていない私は対応に困る。


 と、色んな物付いているぞ。

 ドロドロと流れる体のあちこちに、ゴミと思われれる吐瀉物と食べ残し等があちこちについていた。

 え、なにあれ。食べ残しの目玉焼き……、頭部とあちこちの体に刺さっているのは鳥の骨? 加えて……あれなんかカップ麺みたいな紙容器も見えるぞ。

 どうしてここにあるんだ。


 咽せるような異臭。……シホさんの言っていた通り、男の()()な臭いが漂う。

 本音を言えば、今すぐこの場から離れたいくらいの臭いなのである。

 というか、明らかにこれ、ゴミの残り物から生まれたモンスターなのでは?


 すると図鑑が光る。

 どうやらミドロンのデータを確認できたみたいだ。

 どれどれどんなヤツだこいつらは。

 軽く拝見。


 ミドロン

『説明 :残った老廃物や吐瀉物から生まれたドロドロ体が特徴的なモンスター。体中からは様々な異臭が漂ってくる。なお攻撃面でも非常に厄介であり、ミドロンが出す唾液はどんなものでもドロドロに溶かしてしまうので戦う際には注意が必要』


 はい、害悪モンスター決定。

 なぜこうも悪い予想が的中するのか。

 コイツが例のミドロンらしい。

 ……というか無理ゲーだろこんなの。

 ブラックな清掃業で毎日臭い便所を拭く以上に過酷な作業である。まじでコイツを何匹も倒すの? もう少し難易度下げてほしいのですがそれは。


 ただでさえ悪臭が強烈かつ、なんでも溶かす溶解液使えるとか私の斜め上をいく発想。

 こんなクソモンスターをどうやって倒せと。


「くっせ! シホさんコイツがミドロンっていうモンスターなの? 想像を絶する臭いなんだけど」


 念の為。

 シホさんにも軽く聞いてみる。復唱になりはするが一応ね。……もしかしたら有力な情報を彼女も知っていたり。

 過信過ぎているかもしれないが、頼むよシホさんあなたの情報が頼りだ。


「はい、このどろっとしたのがミドロンっていうモンスターです。注意して下さいただでさえこのモンスターが吐き出す体液は強力ですから。しくじれば骨になってしまうかも」

「そ、それだけ? ……ほら時速云百キロで襲ってくる……とかないわけ?」

「なにいってるんですか? そこまで細部を知り尽くしているわけじゃないですよ冒険者は学者ではありませんから」

「で、ですよねぇ知ってた」


 聞く相手を間違えたかなと思う私。というか学者この世界にいるんだ以外だな。

 有力な情報はあいにくなし。……つまり自分の力で戦いなさいということだろうか。はぁやむを得まい諦めて正当に戦おうか仲宮愛理。じっと突っ立って乱数調整しようとしたが私には無理だやーめた。

 

 この私とシホさんのやりとりが、最期のやりとりにならないことを心より願う。

 いやなったらダメでしょ。改変アニメみたいになかったことにされるのは作品としてNGだと思うがこの作品にそのような概念は微塵もないので、みんなよろしく。

 それに序盤からガメオベラとか洒落にならん。


「だったらこんなクソモンスターどうやって倒すんだよ。なんならグーパンで倒すけど」


 仕方ないので暫くの辛抱。

 潔くここは。

 文句をたれるより倒すのが先決だと思った私は、強行突破に攻撃を仕掛けようと提案するが。


「愛理さん」


 シホさんはある行動に出た。


 剣を抜……。あいやこれは。


(なぜに……異世界でもこの古から伝わる技があるのか?)


 それは。


「へ?」


 こ……これは。


「ふんっ。……こうすれば片手は塞がってしまいますが、臭いを気にせず戦いに専念できますよ」

「あ、安直すぎない? それ」


 なんと彼女は指で鼻をつまむように塞いで息を止めてみせる。

 苦しそうに……見えるような見えないようなその勇士に私は……。


 ってこれ。

 誰もが臭かったらよくやるやつやんけ! もうちょっとマシな異世界特有のものはなかったのか。


☾ ☾ ☾


【掃除の仕事にブラックもクソもあるかぁ!!】


 左手で摘まんで空気を塞ぐシホさん。

 え、そんな簡単な方法でいいのか。


「いや! 昔からよくあるやつやないかーーーーーい!……ってシホさん」


 私が言っている最中、シホさんは鞘から剣を抜きミドロン3匹に向かう。

 視界が一見視認しづらそうに思えるが、いつも通りの変わらない速さで果敢に立ち向かっていく。

 音で探知するように華麗に振り払う剣技は一瞬。やはり戦うと人が変わる属性かな彼女。

 この状況なのにも関わらず、彼女の鋼の精神力……誠意を感じるなぁ。

 あれ、でも危険じゃねこれ。


 3体いるってことは背後からどこか、彼女の視角外から攻撃でも受ければミンチにされないか。いくら能力値がハイスペックだとしても、飲み込まれれば袋のネズミになるんじゃない?

 注意を伝えようと、大きな声で彼女に危険の言葉を促すが。


「無防備だよ! それ! いや確かにさ、昔臭~いにおいがした時にそうやって鼻摘まんだけどさ。やることがしょうもないでしょ。それに見えづらいからそれ危険だって!」


 私の声聞こえているよね?

 聞こえているのにも関わらず足を止めない彼女。

 すみませーんシホさん! 人の話ちゃんと聞いてください! ……私は学校の教師の話ちゃんと聞きもしなかったから言える筋はないけどあなたにはそうなってほしくないから言わせてください! 危険だよ!

 そのままシホさんは、目前にいるミドロン達に合計2回に渡る斬撃を軽く剣を振るう。


 ……。

 左を見事な袈裟懸けで切断し討伐、続いて真ん中。瞬時に空いた僅かな隙間を利用。空洞の中に上手く入り込み体制をやや中腰に。隣の違うミドロンが彼女の体を捉え手でなぎ払おうとするがシホさんは造作もなく躱す。足腰、上半、下半身を軽やかに使いながら滑り込むように戦ってみせる。

 2匹が見失っている背後に彼女はその後ろ側に立ち、音を殺し両手で突きをする体制を取ると間を全く置かず、痛烈な突きを残り2匹のお見舞いした。


「隙あり!」


 空洞の中のせいか彼女の放った斬撃は、水道全域に木霊するように響き渡った。……ミドロンを2匹同時に串刺しすることに成功。

 倒したモンスターの断片は流れ水の方に「ぽちゃん」と落ちて流れて行き見事勝利を収める。


「苦しくないの?」

「……苦しいです」


 あれだけ豪快に動いたのにも関わらず苦しいのか。

 全然余裕そうにみえるけど……実は痩せ我慢? さすが戦士だな。


 攻撃を終えた直後の彼女はというと、息を切らしながらなんだか苦しそうな様子を私に見せる。

 これまじで我慢していたヤツだ。肺活量高そう。それほどまで息は荒くないため余裕そうだが度合いがよくわからんぬ。


「ですよねえ……それでこのミドロン……あと何匹やっつければいいの?」


 ひとまず討伐体数の確認を。

 そんなに多勢で押し寄せてくるようなイメージは、からっきしないけど一応ね。

 が。

 彼女の次発したセリフからは、意外な数を言ってきたのであった。


「えーとですね…………100匹です」


……。


 そ、空耳かなあ?

 復唱でもう1回。


「へ? シホさんごめん、もう1回お願い。よく聞こえなかった」


 ……半信半疑。

 私も遂に耳が遠くなってきたのかも。

 信じたくないものだ。そんな途方に暮れるような尋常じゃない数字は。


 ガチで? ガチなの? 正真正銘の100匹ってまじ?

 今一度また聞いてみるが。


「ですから、100匹です。討伐数」

「うっそやろーーーー!」


 私の大声は地下水道中に響き渡った。

 冗談抜きの100匹。信じ難い数だけど、なんか数がブラックすぎない?

 これ一応、お姉さんから聞いたんだけど、初級クエストだよ⁉ 初級クエストでこの体数は明らかにおかしいって‼ 初級で多い数字って言ったら精々10匹くらいじゃないんですかね⁉

……この世界における簡単とは一体。


「さっきの3匹を合わせると……あと97匹ですね」

「もうこの数値が当たり前だということを受け止めたよ」

「? どういうことです」

「いやこっちの話。気にしないで」


 首を傾げる彼女に対し話を逸らす私。

 ちょっと待って初心者に優しくない量よこれ。

 全く初心に優しくない、クソみたいなクエストだったということに今気づかせられた。

 まだ10匹なら分かるのだが、なんで10倍の100匹なんだよ。

 数のインフレ……凄まじくね。


「ついでに聞くよ? どうしてそんなに」

「国の大きさもありますし、なにより聞いた話ずっとこの国水道整備がなっていなかったらしいです」


 はい、サボり乙。

 こんな立派な場所だっていうのに、どうしてそんなマヌケが出没してしまうのか。……逸脱でもしているのか……ストレス相当溜まっていたりね。

 というかそんなヤツはよクビにしろよまじで。悪く言っているわけじゃあないけど雇う人の基準少し変えた方がいいかもしれないよここの王様。


「なのでこんなにも討伐数が増えてしまい、きづけば最初が10匹だったものが100匹になってしまったみたいなんですよ皮肉にも」


 ……要約すると掃除怠ったせいでミドロンが増えてしまった……なんとも滑稽な話。

 ここの国の治安がどうなっているのか、非常に気にはなる(ふし)がある。

 え、まじでこの国大丈夫なのかよ。1、2年足らずで崩壊に至りそうだけど。

 ……気がつけば廃墟になっていたり……ね。


「じゃあさっさと終わらせに行こう。愛理さんは宿題はちゃんと終わらせる主義だぜ」

「それは頼もしいですね、ですが油断は禁物で」

「百も承知の合点」


 宿題かあ本当はやっていなかったんだけどね。……まあ嘘はひとつだけとは限らないしこれはこれでよしとして。


 非常に苦行。

 あと何回私は、こんな心をえぐられそうな事に耐えなければならないのか。

 私達なんか雑用係かなにか任されてね? ……もしかしてはめられた、あのお姉さんに⁉ ……ち、ちくしょーめ。


「……は、はい。行きましょうか。道は果てしないですが」

「もう覚悟は決めたしらみつぶしにぶっ倒しまくるよ」


 冷や汗かいているけど、内心疲弊しきっているんじゃないの?

 また。

 空腹で倒れ込まないか心配なんだけど、本当に大丈夫なのかこれは。

 一瞬険しい顔をしたけど、やはりきついのかなシホさんも。

 そして私達は、早くミドロンを討伐すべく先へと進むのであった。

 ある失態をその場に残しながら。

読んで下さりありがとうございます。そして皆様お久しぶりです萌えがみです。

最近色んなことに立て込んでいて中々小説書けませんでした。この場を借りてお詫びを申し上げます。

さて、今年もあと一か月となりましたが、これからは徐々に更新ペースを取り戻していく所存ですので、いつも読んで下さる皆様応援のほどよろしくお願いします。

できる限り早い頻度で新しい話を書いて出せればいいなと思っていますので今暫くお待ちください。

それでは今回はこの辺で失礼します。萌えがみでしたではでは~

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