4-4 クリフハンガー
そうそう、泥団子つくろうって話だったね。
話が大幅に脱線したね。JR神戸線から阪急神戸本線くらい。
公園で泥団子をつくってみたかったって話から始まって、社会保障の話になりつつも、単に社会のせいにしてるだけっていう、「社会のせいにしたら右に出る者はいない」勇作くんらしいお話でした。
そういえば、「右に出る者」とか「左遷」とか、なんで右の方が左よりエライって風潮なんだろうな?
澪ちゃんのことディスってのか?
シールドに足引っ掛けて転んじゃうよ?
おかずじゃなくて、主食だもん!!
ほらまた脱線。
こうやってるといつまでも話が進まないから、ここで強引に回想シーンの挿入だ。マンガだとコマの外が黒くなるやつだ(手塚先生が始めた手法らしいね)。
ということで、今日のバイトが始まったところまで、バック・トゥ・ザ・パスト――。
前回同様にまっ平らな世界に砂場があるだけだろうと軽く考えて、やってきました第2回バイト。
オレが訪れたそこは峻険な山岳地帯だった――。
尖った岩峰が離れ離れに乱立する中国の山岳地帯みたいな感じ。
そんな岩峰のひとつ――その岩壁にオレはへばりついていた。
ちょうどその辺りは少し傾斜した壁と足場があり、壁に体重を預けている限りは安全だ。
けど、ここから移動するとなると結構ハードなロッククライミングをやんなきゃならん。なんの道具も持ち合わせていない上に、落っこちたら即ガメオベラだ。
サタン子ちゃんはどこだろう?
そう思って、大声で呼びかけてみようかとしたところ、ズドーンズドーン、と地面を揺るがす大音響。オレの声なんか簡単にかき消されてしまった。
辺りを見回しても、少し離れたところに似たような岩峰がいくつも立っており、遠くまで見通せない。少なくとも視界の中にはサタン子ちゃんを見出すことはできなかった。
そうこうしている間にも、原因不明の地を揺るがす振動と爆音は間欠的に生じ続けている。
あ、ヤバいかもな……。
ほぼ一定の周期で衝撃が起こる度に、耐えきれなかった岩のかけらが岩肌からポロポロと崩れ落ちていく――。
ついに、近くにあった岩峰のひとつが中腹からチ○ーペットみたいにふたつに折れた。
このままここに留まっていたら時間の問題だ。
登るか、下りるか、選択せねば。
普通に考えたら『下りる』の一択だろう。
けど、それには2つ困難な点が伴う。
ひとつ目は、オレのいる足場が出っぱっていて下が見えないことだ。
下りるためには、「マンションのベランダから外に出て下の階のベランダへ移動する」ようなアクションをしなきゃいけない。しかも、下がどうなっているかわからない状況で!
ふたつ目は、オレのいる高さは数百メートルはありそうだってこと。ポキリと行く前に降りきれる可能性は限りなく低そうだ。
運が良いのか悪いのか、頂までは10メートルくらい。
やってやれないことはない距離だ。
そこまで行ければ、サタン子ちゃんを発見できるかもしれない。
他に選択肢もないし、やるしかないな。
大丈夫だ。
オレならできる。
思い出すんだ引きこもり時代を――。
激しい便意の中、家族に顔を合わせないように、窓から忍び込んだトイレを。
家族からの兵糧攻めに耐えかねて、二階にある自室のベランダから抜け出して、コンビニで食べたど○兵衛きつねうどんの味を。
生き残るため、自宅クライマーとなるため、日々欠かさなかった筋トレによるパンプアップの快感を。
それにオレは勇者だ。主人公だ。
こんなとこで死ぬわけがないだろ!
意を決したオレは、一手ずつ慎重に岩を登り始め、5メートルほど登った所で、上に伸ばした右手が出っぱった岩をつかんだ瞬間に、その場所が崩れ落ち、オレは慌てて左腕に力を込め、腕一本で全体重を支え、お約束どおりにクリフハンガーで次回に続く――。




