4-2 あさしん
オレたちはサタン子ちゃんに出してもらった水で手を洗い、これまたサタン子ちゃんに起こしてもらった風のエアータオルで手を乾かした。こういうところで魔王のチカラは便利だ。
もちろん、この前みたいな失敗をしないように、ものすごい弱いチカラでってちゃんとお願いしておいた。
「はい、これ」
オレはそれをサタン子ちゃんに差し出した。
リボンに引き続き、本日ふたつ目のプレゼント――これも『神様ポイント』でゲットしたものだ。
サタン子ちゃんはそれを受け取り、パラパラとめくってる。
「一緒に読もうか?」
「よむ!」
オレからのプレゼントは絵本だった。
タイトルは『よいこのひらがなえほん』 。見開きの右ページには大きく平仮名が一文字、左ページにはその文字をつかった単語がイラスト付きで数個書かれているものだ。それが五十音順に並んでいる。
二人並んで砂場の縁に座り、サタン子ちゃんに代わってオレは絵本を広げた。
興味津々で覗き込むサタン子ちゃんを横目に、オレは『あ』のページから始めた……んだけど、オカシイだろコレ!
『あひる』とか『あさがお』とかはわかる。子供向けにデフォルメされた可愛らしいイラストでこっちもほのぼの気分だ。
『あくま』も、まあ百歩譲ってわからなくもない。
けど、『あさしん』とか『あとらく=な○あ』とか、物騒なものがリアルに描いてあるのは、さすがにどうなんですか!?
『あさしん』の持っているダガーが赤く血塗られてて、反対の手に生首を下げてるんですけど!!
『あ○らく=なくあ』はSAN値下がるんで勘弁してください。同じ蜘蛛ならラ○姉さんか蜘○子にしろ!!!
次のページの『いんま』とか、明らかに18禁なものを絵本に載せるんじゃねえ。説明に困るだろが!!!!
極めつけは『かみさま』のイラストが明らかにごっちんだった……。帰ったら説教だな。
とまあ、中々にアレな内容だったが、サタン子ちゃんは楽しんでるみたいなんで、深く考えないことにした。情操教育的にどうかとも思うが、サタン子ちゃんは魔王だし、これでいいのかも知れん。
オレ的には中二魂をくすぐられて、結構満足だった。『えす○ーぴー-いちななさん』とか新し目なやつも載ってたし、知らないのも何個かあった。帰ったら調べておこう。
読書を続けてくうちに、熱中したサタン子ちゃんは段々とオレの方に身を乗り出してきた。繊細な髪がオレの肌を撫で、身体がくっついてるところからは体温が伝わってくる。
ところどころに説明を挟みながら、ふたりでページをひとつずつゆっくりとめくっていった――。
「よーし、そろそろいい頃合いかな。今日のメインイベント、最後の仕上げだ!」
読み終わった絵本を閉じ、オレはサタン子ちゃんに声をかけた。




