3-14 あえて彼女とかつくらない
よし、テイクツーだ。
「つーか、あの後どうなったんだ? 風呂から記憶がないんだが……」
「うっ……」
神様は恥ずかしそうに顔をそらし、言葉をつまらせた。
だけど、ここでためらったらダメだ。勢いで押し切るしかない。
「なんでオレは神様と一緒にパンツいっちょで添い寝してたんだ?」
核心をついた質問に神様は足を止めた。
しばらく黙り込んでいた神様だったけど、オレが握っている手に少し力を入れるとやがて観念した。
「ひろちゃんがそうしろって言ったからよ……」
こっちを見ないようにして、口を突き出してる神様は無性にカワイかった。
「勇作がお風呂の中で目を覚まさなくて……。お風呂に入っているのに、すっかり冷え切ってブルブル震えてて……それに泣いてたし――」
きっとあっちの世界でびしょ濡れになったせいなんだろう。
やっぱり、あっちでの出来事はこっちのオレにも影響するんだな……。
それにしても、神様にはもう2回も泣き顔を見られちゃったのか。
「――だから、ひろちゃんが暖めてやれって。でも、ウチにはエアコンも暖房もないし……こたつで寝るとカゼひくって言うし。だから……」
雪山で遭難したら素肌で暖め合うとか聞いたことあるな。
そっか、オレのことを思ってくれての行いだったのか……。
神様が淫乱ドエロ痴少女だったらどうしよう、とかちょっと心配しててスマンかった。
いや、まあ、そういうのも嫌いじゃないですけどね、オレは。
「あ、でっ、でも、蒲団まで運んだのはひろちゃんだからねっ。勇作の身体を拭いたのも……その、履かせたのも……」
うぎゃああ、見られてたあああ。
オレは頭を抱えて、その場にしゃがみ込んだ。
神様の手を振りほどくかたちになっちゃったけど、今はそれどころじゃない。
今まで誰にも見られないようにしてきたのに……。
修学旅行のときですら、体調が悪いフリして温泉に入らなかったのに……。
他人に見られたくないから、あえて彼女とかつくらなかったのに……。
……………………。
ゴメン。最後のはウソだ。
すこし見栄張っただけだ。
ちょっと言ってみたかっただけだ。
「オレ、あえて彼女とかつくらない派なんだよねー」キリッ。
うん。予想はしていた。
だってオレ、ワープとかできないもん。
そりゃ、誰かが運んでパンツ履かせたに決まってるよな。
それにしても、比呂子さんにか…………。
絶対にイジられるな。
つーか、さっき会ったときには、そんな素振りをまったく見せなかった。
さては『忘れかけた頃に不意打ちでダメージ倍増作戦』のつもりだな。
こっちはいつ切り出されるのかずっと油断できないし、向こうは一番効果的なタイミングを狙えるというタチの悪い作戦だ。さすがは比呂子さん。
「わっ、わたしは見てないからねっ」
フォローだか、責任回避だか、神様のそんな言葉がオレの頭の上を通り過ぎていった。




