3-13 労働者派遣法第23条5項
そういえば、ファミレスでの支払金額は計20万円弱だった。オレの給料の2倍じゃん!
つーか、普通ファミレスって2人で2千円くらいじゃないの?
そう考えると約100倍じゃん!!!
それでも、昨晩のオレの働きで神様が得た報酬の半分以下だそうだ。
そう考えると、むしろ中抜きされすぎじゃね?
よし、気兼ねなく散財してやろう。
それと、マージン率非公開の派遣会社はちゃんと法令守れ、今すぐつ○れろ!
ちなみに、あのファミレスは神様関係者専用なんだって。
なんでも、普通の人はその存在すら気づけないらしい。
あんなに堂々と建っているのにね。まあ、神様パワーでなんちゃらだから、考えるだけムダだ。
客がオレたちだけだったのも、ありえない価格設定だったのも、そういう理由。
こういった関係者専用施設は他にもいろいろあるんだって。
そんなわけで、ファミレスを後にしたオレと神様はボロアパートに帰宅途中だ。
だいぶ話し込んでしまったせいで、今はちょうど通勤時間帯。
死んだダゴンのような顔をした社畜の皆様方の流れに逆らうようにオレたちは歩いていた。
行きに比べると気温も上がってきたが、それでもまだまだ肌寒い……のだが、右手だけはぽかぽかと暖かい。
というのも、ファミレスを出たオレと神様は、なぜか自然な流れで手を繋いでいたからだ(びっくり)!
オレも神様もなんでそんなことになったのか理解できず、気がついたら、相手の指の股に自分の指を挟み込み、すべての指関節を曲げて、お互いの指と指とが密接に絡まり合い、手のひら同士が吸い付くように密着し合う――いわゆる、恋人つなぎのでっきあっがっり~~~。手汗がパないっす。
さっきまで神様に胸を借りて泣いていたこともあって、お互い変に意識してしまい、行きと同じく二人とも黙り込んでしまった。
てゆうか、この短時間の間に『恋人つなぎ』と『彼女の胸で泣く』という『彼女ができたらやってみたいことベスト10』のうちの2つも達成してしまった。
30年間ずっと悲願していたが、あまりにあっさりと実現してしまい、まだいまいち実感がない。
いや、黙っていても重苦しいだけだ。そう思って、オレが口を開くと、
「あのっ」
「あのっ」
…………カブった。
ベタ過ぎるだろ。
一見、つきあい始めの初々しいカップルのようだが、その片割れはタダのオッサンだ。まったくもって絵にならん。
「勇作からどうぞ」
あっ、先に言われちゃった。
こういう場面で気が利かないところにオレのダメっぷりが現れてるんですね。わかります、はい。
しょうがないから、気になっていたことを尋ねてみる。
二人とも、今まで意識的に避けてきた話題を。
さっき胸を借りて泣きヅラさらしたばっかだ。
今さら失うものなぞないわ!
それにお手々繋いでラブラブ状態な今なら訊けるはずだ。きっと。
よーし、全軍突撃ー、とばかりにテンションアゲアゲで切り出したんだが、
「つーか、あにょ、」
……噛みまみた。
気まずい沈黙が流れる………………。
こういうところにオレのダメっぷりが現れてるんですね。わかります、はい。
まあ、気を取り直して、テイクツーだ――。




