14-27 3度目の正直
S駅に着いた。
まだ午前10時前。
日曜日のS駅前はまだ、人通りも少なく閑散としていた。
オレとひろちゃんは手をつなぎ、黙ったまま目的地を目指す。
この先のことを想像して、二人とも緊張で黙りこんでしまった。
オレたちが目指す目的地――それはラブホだ。
この前のリベンジなのだ。
辛く長かった禁欲期間を終え、ようやく放たれるときがやってきたのだ。
想像しただけで下半身が元気になってしまう。
なにせこれだけの長期間我慢をしたのは生涯初めてだからだ。
行為前に暴発してしまわないか、それだけが心配だ。
ひろちゃんなら笑って許してくれそうだけど……。
S駅を出て、スクランブル交差点を抜け、坂道を登っていく。
大通りから一本それると、そこはそういう目的を果たす施設が立ち並ぶ地帯だ。
カップルが休息していく場所だ。
さすがにこの時間帯は人通りも少ないけど、昨夜からのんびり宿泊を済ませ、ツヤツヤした二人組をちらほらと見かける。
そんなカップルを見る度に、これから先のことを意識してしまって手汗がヤバい。
「大丈夫だよ」
「うん」
ひろちゃんが気を使ってくれる。
これじゃ、立場が逆だ。
「ヒロちゃんこそ、大丈夫?」
「うん。ありがと」
この前と同じ建物に入り、部屋を選ぶ。
運良くというか、なんというか、この前の部屋が空室だった。
そこを選び、オレたちは部屋へ向かう。
胸がドキドキと高鳴る。
エレベータを降り、部屋を目指す。
ドアを開け、部屋に入り、ドアを閉める。
たったこれだけのことで、二人だけの世界が誕生した。
これからどうすればいいんだ?
色々とシミュレーションしてきたはずなのに、いざ現場になると、テンパッて頭がろくに働かない。
助け舟を出してくれたのは、またもやひろちゃんだった。
「まずはお風呂にしよっか」
「うっ、うん。じゃあ、お先にどうぞ」
「えー」
ひろちゃんがほっぺを膨らます。カワイイ。
じゃなかった、なんか間違ったことを言っただろうか。
レディーファーストを気取ってみたのだが……。
「一緒に入ろうよ〜」
「ああ、そうだね」
ひろちゃんは浴室に向かい、バスタブにお湯を張る。
お湯が溜まるまで、のんびりタイムだ。
今日はサービスタイムで12時間はオッケーだ。
焦る必要はまったくない。
とはいえ、こんな緊張感のなか、どうやってのんびり過ごせというのだ。
童貞にはハードルが高すぎる。
「そう言えば、3回目だね?」
「へっ、2回目じゃない?」
オレがひろちゃんとここに来るのは2回目だ。
間違いない。
なのに、ひろちゃんは3回目だという。
オレの記憶が間違っているのか。
それとも、違う男と来たのか。
疑心暗鬼で頭がパニクる。
「ちがうちがう。お風呂の話だよ」
「お風呂?」
「ほら、一緒にお風呂に入るのは3回目でしょ」
「ああ、そっちの話か」
とんだ勘違いだった。
確かに、今までにひろちゃんとは2回一緒に風呂に入ったな。
1回目はオレが緊張しまくりだったし。
2回目はひろちゃんのテンションが変だった。
「今度こそ、ちゃんと洗いっこしようね」
「うんっ!」
そう言えば、ひろちゃんとは身体の洗いっこをする約束をしていた。
3度目の正直だ。
今回こそ、洗いっこを満喫してやるぞ。
そう考えていると、お風呂が溜まった音がピロリンと鳴り響いた。




