2-7 一人麻雀
「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」って言葉がある。
砂場での遊び方を通じて、みんなで協力したり、仲良く遊んだり、喧嘩したり、社会で生きていくためのコミュニケーションの仕方を身につけられる、ってことだろう。
けだし名言だ。オレもそう思う。
オレも砂場で人生の知恵を学んだ。もっとも大切な知恵だ。
「オレはぼっちだ」ってことを――。
子どもの頃から、ぼっち気質だった。
他の子と上手く遊べないし、ひとりで遊んでる方が気楽だった。
「みんなでなかよくあそびましょう」とか言われても、どうすればいいかわからかったし、なんでそんなことしなきゃいけないのかわらかなかった。
他の子どもたちはそれを当たり前のように受け入れていたが、オレにはどうしてもできなかった。
そして、それができない子は排除される。
放っておかれるのは構わない。むしろ、望むところだ。
けど、攻撃されるのは納得がいかなかった。
その上、その原因を「みんなとなかよくできないオレ」のせいにされるのはもっと納得がいかなかった。
納得できないオレはさらに孤立し、ぼっちになった。
ぼっちとして生きるしかないと悟り、どうやったらぼっちとして生きていけるか、そればかり考えて生きてきた。
その結果が今のこの状態。無職で住所不定で魔法使いだ。
別に後悔はしていない。他の生き方ができたとも思わないし。
ただ、今になってひとつだけ思うことがある。
甘えかもしれない。他人のせいにしているだけかもしれない。
けど、オレの偽りない本心だ。
「もし子どもの頃に、一緒に砂場で遊べる子に、オレが遊びたいと思う子に出会えていたら……」
そうしたら、オレの人生はまったく別の道を歩んでいたんじゃないかと。
だから、放っておけない。
「これからずっとひとり」と無表情で呟いたサタン子ちゃん。
見た目もしゃべり方も幼女そのもの。だが、魔王。
そんな女の子を放っておけるわけないじゃないか。
それにサタン子ちゃんのためだけじゃない。オレのためでもある。
オレ自身が望んでいたんだ。こうやって誰かと一緒に砂場で遊べる日を――。
よーし、やったるで。
オレの本気を見せちゃる。
ぼっちナメんなよ。
リア充とのレベルの違いを教えてやる。
あいつらはヌルいんだよ。なにやるにしても。
だって、なにやっても楽しいもんな。みんなでワイワイやれば。
適当に、生半可に、中途半端に、手抜きで遊んでも楽しめちゃんだよな。
だから、ヌルい。ヌルすぎる。
その点、ぼっちは違うぞ。ひとりだからな。
一緒に楽しんでくれる相手なんかいないからな。
本気で遊ばないと、全力で遊ばないと、ちっとも楽しくないからな。
ぼっちはスゴいぞ。大抵の遊びは極めてる。
野球だって、あやとりだって、ひとりで遊べるぞ。
将棋や囲碁だってひとりでできるし、麻雀なんか一人四役だ。
それにくらべたら、砂場で一日中ひとりで遊ぶことなんか朝飯前だ。
砂場遊びの酸いも甘いも知り尽くしてる。
サタン子ちゃん、オレが砂場での遊び方ってのを教えてやるよ。




