2-1 よーしパパ頑張っちゃうぞ
目の前を覆う眩しい光が薄れ、徐々に視界がはっきりしてくる。
初めての異世界。
ここは魔王が支配する世界。
勇者として魔王を倒し、世界に平和を取り戻すのがオレの使命。
そう意気込んでいたのだが……。
そこにあったのは近所の公園にあるような砂場。
そして、砂場の縁には幼女が一人ぽつんと座り込んでいた。
幼稚園児くらいで、サラサラとした細く長い黒髪と黒いドレス。それとは対比的な白い肌。
って、ここどこ?
オレは勇者として魔王を倒しに来たんじゃないの?
まさか、あの子が魔王?
「なーに、ぼさっとしてんだ」
状況がいまいち理解できずに戸惑っていたオレの横から声がした。
「比呂子さん!」
まったく気配に気づかなかったけど、オレのすぐ隣には比呂子さんが立っていた。残念なことにちゃんと服を着てる。
そういえば、サポートしてくれるって言ってたな。
「ちょっと想像してたのと違うんですけど……」
異世界転移っていったら、剣とか魔法とかズバババーンで、俺TUEEEEで、ハーレムハーレムな感じじゃない?
砂場に幼女にオレに比呂子さん。
これじゃ、休日の昼下がりの平和なヤングファミリーの幸せなひとコマだよ。
イクメンだよ。公園デビューだよ。よーしパパ頑張っちゃうぞ。
年下の若奥さんっての憧れるけど、相手が比呂子さんだとちょっと怖い。尻に敷かれるの確実だ。
「ドラ○エみたいヤツだと思ってたか?」
「ええ、まあ……」
比呂子さんが挙げた例はちょっと古典的すぎるけど、まあ、そういうファンタジーRPGみたいな世界を期待していたのは確かだ。
「そういうガチなのは本職の勇者に任せときゃいいんだよ。お前はバイトだし、それにお試しなんだから」
「なんすか、そのバイトに大切な仕事は任せられないみたいな言い方は」
「意外とやる気あるみたいだな。ガッカリしたか?」
「まあ、ちょっと拍子抜けっていうか……」
オレだって平均的な日本男子なみにRPGもやってきたし、そういうアニメや小説を嗜んできた。
勇者とか、異世界とか、ちょっと憧れてたというか、ワクワクしていた。
期待を裏切られたって気持ちがないと言ったら嘘になる。
「ちゃんと続けてれば、そのうちそういうのもあるから安心しろ」
「頑張れば正社員になれるってエサをチラつかすブラック企業みたいっすね」
長年ニートを続けて、働かない理由を労基とブラック企業と社畜のせいにしてきたオレだから、そこら辺は敏感だ。
「ばーか、そんなんじゃねーよ。お前のためだよ」




