1-10 熱湯消毒
バスタオルを渡された時には「テメー臭すぎて耐えらんねーから熱湯消毒して来いよ」って意味かと思って地味に傷ついた。
着の身着のまま実家を追い出されてネカフェ生活してたから、自分でも臭うかなって気にしてたところだ。
いや、ネカフェでたまにシャワー浴びてたし、下着もコンビニで買い換えてたし、服だってネカフェの店長さんが古着をくれたから、着替えもしてたぞ。だから、そんなに臭わない……はず?
けど、実際のところ、バスタオルの理由は別にあった。
話の流れで、風俗の体験入店みたいに勇者バイトを一回やってみることになったんだが、そのバイト内容が、
「魔王が支配する異世界に転移して、勇者としてその世界に平和を取り戻す」
というものだった。
なんじゃそりゃー、って思うかもしれない。
うん、オレもそう思った。
しかも、具体的に何をすればいいかをまったく教わっていない。
んだけど、「だいじょぶだいじょぶ。やってるうちに慣れるから」と比呂子さんに押し切られた。
けどこれ、絶対に大丈夫じゃない言い方だよね? フラグだよね?
田舎から出て来た世間擦れしてない女の子を喰い物にする人のセリフだよね?
うーん、ますます不安だ……。
ということで、異世界に転移するためのゲートが必要なわけだ。
それはふつー、大きな衣装ダンスだったり、学習机だったりするわけ。
ただ、この部屋にはそんなものを置くスペースもないし、神様にはそんなものを買うお金もない。
神様にできる唯一の方法は「お風呂を転移ゲートにすること」だったそうだ……。
なんでも、湯船に浸かって目を閉じて精神統一すれば異世界に転移できるんだって。
そんなわけで、オレは今、脱衣所にいる。
一枚づつ服を脱いでいき、トランクスを下ろしかけたところで、
「おー、入るぞー」
脱衣所のドアが開き、比呂子さんが入ってきた。
オレは慌ててトランクスを引き上げ、丸出しのケツを隠した。
「ちょ、なんすか!?」
「初めてだからサポートしてやろうと思ってな」
そう言いつつ、比呂子さんはためらいもなくタンクトップに手を伸ばして脱ぎ始めた。
止めてもムダと思い、オレは急いで後ろを向いた。
オレはタオルで腰を隠しながら、トランクスを脱いでいく。
背後から聞こえてくる衣擦れの音に胸が高鳴った。
さっきのこたつでの密着シーンを思い出すと顔が赤くなる。
平常時はぶっきらぼうに振る舞うくせに、こうやっていきなり女であることを感じさせるのは反則だと思います。
「せめて、タオルくらい巻いてくださいよ」
「いいじゃねーか。別に減るもんじゃねーし」
「いや、それ男側のセリフっす」
「時代はじぇんだーふりーだぞ」
「意味わかんないっす」
「だんじょきょうどうさんかっけーだぞ」
「だから、意味わかんないっす」
「しゃーねーな。わかったわかった。勇作は純情だな」
タンクトップにホットパンツという薄着だったので、比呂子さんの準備はすぐに終わり、
「うっし、いいぞ」
そんな男前に言われて、はいそうですか、と振り向く度胸なんかオレにあるわけがない。
そんなオレの手を比呂子さんは掴み、反対の手で浴室のドアを開けた。
比呂子さんの柔らかい手の感触と横目に飛び込んでくるバスタオル越しでもはっきりと分かる巨乳に、オレは風呂に入る前からすでにのぼせ上がっていた。




