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ついに、物語が始まる…!
「ったく…。どんだけ広い森に住んでやがんだよ、フィーリア…!」
俺はもう、3日も森の中を歩き続けていた。
手持ちの食料などないので、ウサギなどを狩って食べたり、生えている草を鑑定して食べたりしていた。
フィエムも段々同じ景色に飽きて来たのか、四六時中、俺の肩で眠っている。
木があり、草があり、日光もまともに届かない。眠る時は木にもたれかかって眠ったりしていたが、魔物の声がするせいでゆっくりと休めていない。
まず、どちらに向かっているのかもわかっていないので、もしかすると、3日もの間ぐるぐるまわっているだけかもしれない。
ふと、前方から殺気を感じた。
反射的に真横に飛び退いていた。
その行動は正解だったようで、僕のいた場所を矢が通り過ぎて行った。
「誰だ!」
僕はしゃがみ込んだまま、大声で叫んだ。
さすがの俺もまだたいして生きていないのに死にたくはない。
「人か!この森で何をしている!」
向こうからも大きな声が聞こえた。
少なくとも、俺とコミュニケーションを取ってくれるつもりはあるようだ。
「迷ったんだ!どれだけ歩いても森を出ることができない!」
相手が何をしてくるかわからない。
なので、身を晒すことはできない。
「どこの国の者だ!国名を答えろ!」
ふむ、国の名前などわからない。
フィーリアに聞いても、そんなものはたいして興味がないから知らないと教えてもらえなかった。
「気付けばこの森にいたんだ!日本と言ってわかるか!」
「ニホン?そんな国は知らん!」
おっと、俺はこのハンターを煽ってしまったらしい。信用してもらうには、どうしたらいいだろうか。
そう考えていた時、俺に話しかけていたハンターとは別のハンターが…って、めんどくさいし、説明できないな。
簡単に言えば、俺に話しかけていたハンターAにもう一人のハンターBがハンターAに話しかけていた。
ボソボソとハンターBが喋っていた言葉の中に「迷い人」という単語がでてきた。
「お前!もしかして、この世界の人間じゃないのか!」
ハンターAが俺に向かって叫ぶ。
迷い人とは、異世界から来た人間のことなのだろうか。
「よくわからないが、気付けばここにいたんだ!ここがどこだかわからない!」
異世界に来たのだろうとは思う。
だが、僕の世界に竜がいてもおかしくはない。悪魔は存在していたのだから。
「わかった!とりあえず、出てこい!矢は射ない!」
さて、出て行っても平気だろうか。下手をすれば殺されるだろう。
だが、殺気を感じなくなった。
俺は、その感覚を信じてみることにした。
俺の体をハンターの前に晒す。
何も持っていないことをアピールするために、両手を上に上げる。
「この子は気付けば一緒にいた。家族みたいなものなんだ。」
黒竜が、この世界でどんな存在なのかはわからない。でも、出来れば、子供の事は堂々と連れて行きたかった。
「竜…?まぁいい。森の外まで連れて行ってやる。何を覚えているのか、道中で教えてくれ。」
ハンターAが俺に向かって何かを投げた。
受け取って見てみれば、いわゆる、黒パン、固く焼き固めたパンだった。