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Stragglers Party  作者: 榊屋
序章―A phantom theif―
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1話 栄華之夢

 序章―A phantom theif―


 3月22日だった。

「まーや!」

 そう言って俺は彼を呼ぶ。彼は眠そうに顔を上げた。

「……何?」

「卒業式の準備。やるぜ!」

 俺がそういうと、

「俺がやんなくたっていーじゃんよー」

 彼はそう言って、眠そうに顔を上げた。

「お前が居てくれたら、10人楽できるんだよ!ほら、来いよ!」

「それお前が楽したいだけじゃ――」

「何のことだか」

 俺はにやりと笑った。


 彼は四阿あずまや 朔馬さくま――通称『まーや』

 彼は異常な少年だった。


 体育館に数人で固まっていた集団に混ざる

「よう!遅かったな!」

「ああ、まーやが渋ってた」

「俺寝てたんだけど……」

 まーやはそう言って、軽く笑う。

 それでもまーやはやる気を出したのか、

「っしゃ!任せろ」

 と言って笑った。

 そして、女子が持っていた装飾品を手に取って、飛び上がる。

 彼の異常な点。それは、運動神経。

 バスケットゴールのリングの上に立ち、さらにそこを踏み台に2階に上がる。

「ここから向こうにつなげばいいんだな?」

 と、まーやは言って今度は壁をける。

 そのまま次の足を壁に、さらにその次の足を。

 と。

 彼は壁を走り出した。

 常人ではできない行動。常人ではもちえない筋肉。

 彼は備えられるべき力が限界値まで底上げされているのだ。


 向こう岸に到着して、飾り付けを済ませる。

「他にやれることあるか?」

「いや、これだけだったんだよ。ありがとう、まーや」

「……これって本当に俺がする必要あったのか?」

「楽できて助かったよ」

「まあいっか」

 まーやは淡泊にそう言って、二階から飛び降りた。




「まーや。カラオケ行くか?」

「ゆく!」

 まーやは歌が上手い。

 そして上手いうえに、特技がある。

 まーやと俺と、もう一人友達と一緒にカラオケ店に向かった。

「♪♫♬♫」

 彼には声色がいくつもあるのだ。

 女性アーティストの曲も男性アーティストの曲も、機械音までもできる。そしてデスメタルまで完備。

 のどの筋肉がどーのこーのと彼は言っていた。

「昔から、声真似みたいなのが好きだったからなー」

 まーやは笑う。

「まーやは何でもできるよなー、スポーツでもなんでも」

 と、友人の一人が言った。

「おうよ。何でもしたいんだよ。俺は、な」

「でーも、人見知りだよなー」

 俺はそう言った。

「う……」

「ていうか、恥ずかしがり屋だろ?女子とも話せないじゃん」

 友達も同意する。

「覚えてるか?一年の時の自己紹介!」

「あー、覚えてるよ!四阿 さきゅまだろ?」

「そうそう!皆の前で上がっちゃって、噛みやがってさ!」

「ああ、そう言えば今年の国体で、助っ人でバスケ部の助っ人してさ!」

「あー、あのダンクシュート決めたり、最後にブザービートでエンドラインからゴールまで投げ飛ばしたり!」

「で優勝したのに、最後にみんなに胴上げされそうになって全力疾走で逃げたりさー」

「あー、もううっせ!」

 まーやは叫んだ。

「何なんだよ!もう帰るぜ!」

「やめろよ。マイクを通して叫ばないでくれよ……」

 俺はそう言って、耳を抑える。

「でも、お前って部活動しなかったな。何でなんだ?」

「いや、目立つのは好きじゃないんだよなー」

「でもスポーツ推薦とかもできたかもしれないぜ?」

「いいんだよ。俺は、スポーツなんか二の次で」

 と、まーやは笑った。

「へー、じゃあ何かあるのか?やりたいことでも」

「あるよ」

 まーやは呟いた。


「俺、夢あるんだよ」

 俺には聞き取れなかった。


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