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Stragglers Party  作者: 榊屋
序章―A phantom theif―
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2話 裏の裏を行く

 3月22日の夜。

 俺は裏路地に居た。


「今回は会社内にある、1枚の絵画。それを手に入れることさえできればいい」

 ホームレスの爺さんこと、『やっさん』は、座ったままノートパソコンをいじりつつ俺に吐き捨てた。

「……いつも思うけどそのスタイルは似合わないよな」

「そうか?偏見は捨てたほうがいいな」

 見た目はただのご老体のホームレス。

 しかしそれは周りからのカモフラージュ。実は裏オークションへの仕入れ人だ。

 裏オークション。

 それは基本的に『盗品』の美術品を扱うオークションだ。

 どうしてもその美術品が欲しい者や、あるいはただのオークションと同じノリで参加する者などさまざまである。

 それの仕入れ人である、ということはすなわち彼は『盗品を扱う男』だ。

 そう。

 泥棒である。


「ある会社っていうのは?」

「王城グループの提携会社だ」

「王城グループ?っていうと、都会のあれか?」

「あれだ。それの提携会社だよ」

「となると、ほかに価値のあるものもありそうだな?」

 俺はニヤリと笑って、やっさんを見た。

「ああ。お前の欲しがっていた宝石もある」

「『カオスビリオン』か!?それとも『ティアーナイト』……!?」

「残念だがその2つとも違う。『バイオレッド』だ」

「バイオレッド……」

 バイオレッド。

 それは日本で作られた『菫色(すみれいろ)』の宝石。

 宝石そのものはそこらのダイヤと遜色(そんしょく)ないが、その装飾の造形美が一目置かれている作品だ。その素晴らしさから、『バイオレッド』という色そのものを名乗ることのできる数少ないこの世界の宝石の一つとなっている。

「……マジかよ」

「思ったよりも上で驚いたか」

「ああ。俺の夢だ」

「言うと思ったぜ、坊主」

「坊主じゃない。俺も立派な怪盗だ」

「まだ認めてはいないぞ、師匠としては」

「いい加減認めさせてやるぜ」

 俺はそう言ってやっさんを睨む。

 やっさんはそんなこと諸共しない様子でパソコンをいじると、

「メールで地図を送っておいた。指示もメールでしてある。ちゃんと記憶して任務を遂行しろ」

「了解だ。任せとけ」

「あと、服はこれな」

 そう言ってやっさんは1つの紙袋を渡す。

「スーツ……」

「ああ。あと、スーツケースには道具一式入れてある。使い方は説明するまでもないよな。あと、王城グループの人間として入れるように連絡はすでに済ませてあるから安心しろ」

「準備がいいな」

「俺の代わりにやってもらってるんだからな。それくらいは当然だ」

 そう言ってやっさんはさっさと行け、と言わんばかりに手を振った。

 俺は苦笑しながら路地を出た。



 最寄りの駅のトイレで着替えを済ませた。

「……ふむ」

 鏡で自分の姿を確認する。

 サラリーマンの様なきっちりしたスーツに、いつもはつけない伊達眼鏡。

 その容姿や身長や体格からも大人であるようにも見えるが、少し若すぎやしないか?

 そんなことを思いながら、あまり長々と鏡の前に立っているわけにもいかないので、駅のトイレから出た。


 会社名は『未来財閥』。ビルはこの地方では大きい方で、20階建のビルだ。

 割と新しい企業で、専門としているのは警備関係らしい。骨が折れそうだが、その分戦いがいのある会社だ。相手に不足はない。

「行くか」

 スーツケースを片手に俺はロビーに入った。

 受付の前に行き、

「すみません」

 と声をかける。できるだけ格好よく、クールに。

「はい」

「王城グループの四阿です」

「あ、はい。今社長の方に連絡します」

 受付の女性はそう言って電話に手を伸ばした。



 しばらくして一人の男がやってきた。

「社長の菊川と申します」

 と、名刺を見せてきた。

 緊急事態。

 こちらも名刺を出さなくてはならないが、果たしてどこにあるのか。

 取り敢えず、内ポケット。

 あった。

 緊急事態その2。

 マナーを知らない。

 仕方がない。

 まず俺は菊川社長の名刺を受け取る。次に、俺は名刺を取り出すふりをして、一枚を床に落とした。

「ああ、申し訳ありません」

 少し焦る様子を見せる。

「いえ、構いませんよ」

 予想通り、菊川社長は自らの手でその名刺を拾い上げて受け取った。


 作戦通り。


 エレベーターに乗り込み、最上階にある社長室に向かう。

「……」

 俺は携帯電話で仕事内容と手順を再確認。

 あと、5分……。

 エレベーターが最上階で止まり、応接室に案内される。

 その応接室の奥には社長室がある。

 そして俺の目的の美術品は目の前にある。

 応接室にかかっている、金色の装飾された額縁に飾られた一枚の絵画。

「見事な絵ですね」

「おお、わかりますか!?」

「ええ、本当に」

 繊細かつ大胆に描かれた絵だ。見事な色彩で描かれているその西洋の街並みは素晴らしいの一言に尽きる。

 これは欲しがるのも分かる美術作品だ……。が、少し違和感。

 素晴らしいの一言を言わせる作品を作ったような……そんな感じ。

 それは、そう。

 心が込もった絵を、心を込めて、心が込もらないように描いたような絵。

 うん、自分で言ってて意味が分からない。

 そして俺の欲しがる『バイオレット』はどこだ?

 Pull……Pull……。

 と、奥の社長室で電話の鳴る音がした。


「おっと、失礼」

 菊川社長はそう言って奥の部屋へと消えていった。


「作戦決行だな……」

 この部屋にあるバイオレットも探し出さなくては。


 タイムリミットは約5分だな。

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