第349章:回収された毒杯、血の審判
「南社長、本当にありがとうございました! 楽しかったです!」
碧が放つ凄まじい制止の威圧感をすり抜け、凛はスマートフォンで南将暉との記念写真を一枚収めると、すっかり満足した笑みを浮かべた。
かすみに強く手を引かれ、碧の大きな背中に守られるようにしてロビーの出口へと歩き出す凛。そんな早瀬ファミリーの背中に向けて、南将暉はどこまでも洗練された、優しい『父親のような』眼差しを送りながら、よく通る声で呼びかけた。
「凛ちゃん、いつでもまた遊びにおいで。今度はディナーだけじゃなくて、お泊まりでもいいからね。……そう、今度は家族みんなで、ゆっくり来るんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
凛は振り返って嬉しそうに手を振った。
車に乗り込む間も、凛の胸は弾んでいた。(嬉しい……! またあの素敵な社長さんに会えるんだ。今度はパパやママにおねだりして、あの高級スパも利用してゆっくりしたいな……!)
隣でかすみが「もう、本当に心臓が止まるかと思ったわよ……」と激しく消耗し、運転席の碧がバックミラー越しに南コンチェルのビルを壊滅させんばかりの殺意で睨みつけていることなど、恋する乙女のモードに入った凛には一切届いていなかった。
一方、早瀬ファミリーの車が完全に見えなくなったホテルのロビーラウンジ。
先ほどまでの紳士的な笑みを一瞬で消し去り、南将暉はドス黒い冷徹な顔で、凛たちが座っていたテーブルへと歩み寄った。そこには、凛が先ほどまで使っていた、シフォンケーキのフォークと、ダージリン紅茶のカップがそのまま残されている。
「……片付けるな。私がやる」
将暉は駆け寄ってきたスタッフを鋭い手つきで制すると、自ら白いハンカチを取り出し、凛の唾液と細胞が付着しているであろうカップの縁とフォークを、慎重に、かつ手早く回収した。
「ククク……これで役者は揃った。あの双子が俺の血を引く子供たちか、それともあの忌々しい早瀬碧の子供か……白黒つけてやろうじゃないか」
将暉はすぐさま、南コンチェルの圧倒的な資金力と権力を行使し、国内外のあらゆる犯罪捜査にも使われる超一流の極秘専門機関へと、その回収物を持ち込ませた。超特急でのDNA親子鑑定の依頼――。
そして、早瀬ファミリーがお屋敷に着くか着かないかのわずかな時間の後。
最上階の執務室で待つ将暉の手元のタブレットに、専門機関からの暗号化された鑑定報告書が、さっそくデータとして送られてきた。
「はは……ついにこの時が来た。これでかすみを合法的に俺の元へ引き戻す最大の武器が――」
勝利を確信した不敵な笑みを浮かべながら、将暉は判定結果のページをスクロールした。
だが、そこに記されていた【血縁関係の証明データ】を目にした瞬間、南将暉の顔から一切の笑みが凍りついた。
「な……んだと……!? これ、は……どういうことだ……っ!!?」
ディスプレイに映し出されたのは、将暉の脳内妄想を木っ端微塵に打ち砕く、そして早瀬家の過去の運命すらも揺るがしかねない、あまりにも『意外な結果』だった。男の驚愕の叫びが、無機質な部屋の中に虚しく響き渡るのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




