第232章 幸福の足音
夢のような観覧車を降りたあとも、私の胸の鼓動はトクトクと高い音を立てたまま静まる気配がなかった。
「早瀬かすみとしてお迎えしたい」
碧様の左手のぬくもり、そして隣を歩く彼のどこまでも頼もしい横顔を見るたびに、さっきの言葉が現実なのだと実感が湧いてきて、顔から火が出そうになる。
だけど、私以上に興奮し、嬉しさを隠しきれないのは両脇を固める凛と蓮だった。ふたりは碧様の手を代わる代わる握りしめ、「碧パパ、今日の夜ご飯は何かな?」「みんなでお泊まり、おじさまたち驚くかな?」と、弾んだ声で喋り続けている。
碧様の運転する車に揺られ、夜の街を抜けて、私たちが今毎日お泊まりさせてもらっている貝森財閥の大きなお屋敷へと帰ってきた。
車がエントランスに停まり、碧様が優しくドアを開けてくれる。
重厚な玄関の扉を開けると、そこにはいつもと変わらない、温かい明かりが私たちを出迎えてくれた。
「あ、かすみちゃん! おかえりなさーい!」
「凛ちゃん、蓮くん! 遊園地楽しかった?」
リビングの扉が開くと同時に、中から同い年くらいの湊くんと百合ちゃんがトコトコと走って迎えにきてくれた。奥からは、いつも私たちを実の家族のように温かく庇護してくれるおじさまとおばさまが、優しい微笑みを浮かべて姿を現す。
いつもの、見慣れた、大好きな光景。
そこで、喜びが限界突破していた凛と蓮が、我先にとリビングへ飛び込んでいった。
「湊くん、百合ちゃん、おじちゃん、おばちゃん! 聞いて聞いて!!」
蓮が大きく手を振りながら、お屋敷の天井に響き渡るような大きな声で叫ぶ。
隣で凛も、ぴょんぴょんと跳ねながら満面の笑みで言葉を繋いだ。
「あのね! さっき観覧車の中でね――ママがね、結婚するの!!!」
「「「えっ……!?」」」
その瞬間、出迎えてくれた貝森財閥のみんなの動きが、絵に描いたようにピタリと止まった。
湊くんと百合ちゃんはパチパチと目を丸くし、おじさまとおばさまは驚きのあまり持っていたお盆を落としそうになりながら、私と、その後ろに立つ碧様へと視線を交互に動かしている。
「え、結婚……!? かすみちゃん、それって……!」
おばさまが驚愕の声を上げる中、あまりにもストレートすぎる我が子たちのフライング報告に、私は一瞬で耳の先まで真っ赤になってしまった。
「凛、蓮、もう……! みんながびっくりしちゃうでしょ……っ」
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆ってうつむく私を見て、後ろから着いてきた碧様が、困ったように、だけど最高に幸せそうに喉を鳴らして笑った。
碧様はそっと私の肩に大きな手を添え、驚きに包まれる貝森家のみんなに向かって、一歩前へ出て深く頭を下げた。
「夜分遅くに、突然お邪魔して申し訳ありません。……子供たちの言う通りです。先ほど、かすみさんにプロポーズをさせていただきました。お騒がせしてしまいますが、今夜は俺も、皆さんと一緒にお泊まりさせていただけないでしょうか」
碧様の堂々とした、だけど誠実な挨拶がお屋敷に響く。
一瞬の静寂のあと、「うおおおおおっ! 本当か碧!!」「いやだ、かすみちゃん! おめでとうーーーっ!!」と、おじさまとおばさまの地鳴りのような大歓声と祝福の声が、私たちを包み込むように爆発したのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




