第191章:拒絶の門印
高倉麗子が去り、正式に離婚が成立したあと――。
すべてを失い、完全に孤立無援となった長谷部誠が、最後の望みを懸けて縋るように向かったのは、納屋財閥の邸宅だった。
応接室で誠を待ち受けていたのは、納屋あけみと森野薫の夫妻だった。かつての栄華を失い、見る影もなくやつれた誠は、二人の前に出ると、なりふり構わず頭を下げて懇願した。
「お願いします……! 俺は、かすみと結婚して、凛と蓮と一緒に生活したいんです。今度こそ、あの三人を受け入れて、父親として真っ当に生きたいんです……!」
身勝手極まる誠の直訴。だが、あけみと薫の夫妻は、そんな誠を憐れむような目で見ることすらしなかった。二人の耳にはすでに、伝説のおじさまの口から、長谷部家がこれまでかすみや双子にどれほど酷い仕打ちをしてきたか、すべて伝わっていたからだ。
あけみは冷徹に、そして薫は吐き捨てるように誠を突き放した。
「寝言は休み休み仰ってください、誠さん。おじさまからお話はすべて伺っています。今更どの面を下げてそんなことが言えるのですか? かすみのことは、もう綺麗さっぱり諦めてちょうだい」
冷たく言い渡された拒絶の言葉に、誠が絶望で凍りついた、その時だった。
「待ってくれ……! かすみはどこだ! かすみを出してくれ!」
応接室の扉が勢いよく開かれ、血相を変えた南条隼人が乱入してきたのだ。おじさまから離婚届を突きつけられ、正気を失った隼人もまた、かすみを追ってここに辿り着いたのだった。
「おじさまに離婚届を渡されたが、俺はかすみと離婚したくないんだ! あいつは俺の妻だ! 頼む、かすみに会わせてくれ!」
かつてかすみを物のように扱い、独占欲で縛り付けようとした南条の御曹司が、今やプライドをかなぐり捨てて叫んでいる。
かすみを裏切り、その心を深く傷つけた二人の男――長谷部誠と南条隼人。
身勝手な未練を剥き出しにして縋り付く二人を、あけみと薫夫妻は心底軽蔑しきった眼差しで見据えた。
「往年の御曹司たちが、揃いも揃って見苦しいですね」
薫が冷ややかに言い放ち、あけみがトドメを刺すように冷酷な引導を渡す。
「あなたたちが何を叫ぼうと、かすみの心は二度と戻りません。現実を見なさい。未練がましく縋り付くのはやめて、大人しく諦めて、次の新しい恋でも探しなさい。――私たちの邸宅をこれ以上汚さないで」
あけみと薫は、それ以上の弁明を一切許さなかった。
夫妻の手配した屈強な警備員たちによって、誠と隼人は腕を掴まれ、引きずられるようにして容赦なく邸宅の外へとつまみ出された。
バタン、と目の前で重々しい門扉が閉じられる。
すべてを失った二人の男は、冷たいアスファルトの上で、ただ己の愚かさと絶望に打ちひしがれるしかなかった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




