第134章:忍び寄る足音〜招かれざる『お客様』〜
「かすみさん、今日はお客様が来るのよ」
いつも親身になってお世話をしてくれるベテランの看護師が、病室のドアを開けてにこやかにそう告げた。
「なんでも、赤ちゃんのプレゼントを渡しに来るって言ったの。さっそくお迎えに行きますね」
「え……お客様、ですか?」
あけみさんか薫さんだろうか。それとも、誠さんが何か手配してくれたのだろうか。
少しの疑問はあったものの、看護師の屈託のない笑顔に、私はそれ以上深く追求することなく「ありがとうございます」と小さく会釈をした。
パタン、とドアが閉まる。
再び静かになった病室で、私は両腕のコットに眠る凛と蓮に、交互に哺乳瓶でミルクを飲ませていた。
チュパチュパと、小さな口を一生懸命に動かしてミルクを飲む姿は、見ているだけで胸が締め付けられるほど愛おしい。
柔らかな頬をそっと指先で撫でると、蓮が小さな手をギュッと私の指に絡ませ、凛が満足そうにトロンと目を細めた。
「……たくさん飲んで、大きくなってね」
愛しくて、可愛くて、目の中に入れても痛くない私の宝物。
(ほんと、かわいい……)
誠さんが守り抜いてくれているこの絶対の安全圏で、この子たちと穏やかな時間を過ごせること。それが今の私にとって、何よりの幸せだった。
――しかし。
ミルクを飲む双子の確かなぬくもりを感じながらも、私の胸の奥に、ほんの小さな……けれど氷のように冷たい『ざわめき』が落ちた。
この、何重にも厳重なセキュリティが敷かれた長谷部ホールディングスの特別療養室。
そんな場所に、私や誠さんへの事前の連絡もなしに、ふらりと面会に来られる『お客様』なんて……本当に、いるのだろうか?
『さっそく、お迎えに行きますね』
先ほどの看護師の弾むような声が、不意に脳裏に蘇る。
その時、病室の外の長い廊下の奥から、コツ、コツ、と……革靴が床を叩く、複数人の重い足音が近づいてくるのが聞こえた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




