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サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


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プロローグ

本作は、サファリア女学院に通う箱入りお嬢様のかすみと、彼女を溺愛するあまり独占欲が爆発しがちな完璧ヤンデレ執事・誠を巡る、短編ストーリーです。


学園ドラマのようなドキドキ感をぜひお楽しみください!



サファリア女学院。


そこは、厳格な規律と伝統に守られた、由緒正しき箱入り娘たちが集う乙女の園。


そして、そこからほど近い場所に位置する「青藍高校」は、対照的に圧倒的なエネルギーに満ちた男子校だ。


これまで交わることのなかった二つの学園が、今度、特別な『合同交流会』を開催することが決定した。


「普通の恋をしてみたい」


そんな密かな憧れを抱くサファリアの箱入りお嬢様・かすみにとって、この交流会はまさに夢のような大イベント。


しかし、その輝かしいイベントの裏で、お屋敷の空気は一人の男によってピキピキと凍りついていた――。



「……交流会、ですか」


かすみの自室。完璧な所作で紅茶を注いでいた執事の誠が、かすみの楽しげな報告を聞いた瞬間、ピタリと手を止めた。


眼鏡の奥の切れ長の瞳が、一瞬でぞっとするほど冷酷な光を帯びる。


「お嬢様。サファリアの格式あるお嬢様が、あのような血気盛んな青藍高校の男どもと席を並べるなど、この誠、絶対に認められません。……いえ、表向きは学園の決定ですから阻止はいたしませんが、当日は私も影となり日向となり、あなたの影(shadow)として一秒たりとも離れず監視させていただきます」


誠のあまりの過保護っぷりと重すぎる独占欲に、かすみは苦笑するしかない。


しかし、運命の悪戯か。


交流会を目前に控えたある日、かすみは楽しみにするあまり知らず知らずのうちに無理を重ねていたようで、突然激しい発熱に襲われ、ベッドに倒れ込んでしまったのだ。


「私、何かいけないこと言ったのかな? だって私もお父様とお母様みたいな恋愛がしたい、今度、青藍高校の拓人さんをご招待したいの。私、拓人さんの気持ち知りたい」


熱で潤んだ瞳でかすみがそう呟いた瞬間、誠の動きが完全に止まった。


かすみの手の甲に押し当てられていた誠の唇が離れ、ゆっくりと上がってきたその顔には、先ほどまでの優しい執事の仮面が嘘のように消え失せている。


代わりに宿っていたのは、静かな「絶望」と「狂気」だった。


誠はかすみの手を握ったまま、ふ、と低く笑う。その笑みには、一切の温度がない。


「いけないこと、などと……滅相もございません。お嬢様は何も悪くありませんよ。ただ、どこまでも残酷な方だ……」


誠は立ち上がると、上から見下ろすようにかすみの影を完全に覆い尽くした。眼鏡のブリッジを静かに押し上げるその指先は、怒りと嫉妬で微かに震えている。


「私に『付き合ってもいいのか』と期待を持たせるような甘い牙を剥いておきながら、その実、あなたの視線の先にいるのは、あの平凡な『貝森拓人』なのですね。あんな男の気持ちを知るために屋敷に招き、お父様とお母様のような恋をあいつと育みたい、と……」


誠の低い声が、部屋の空気をじわじわと支配していく。


「お断りいたします、お嬢様。そのご招待、この私が絶対に阻止してみせます。あのような男、お嬢様をたぶらかす不届き者として、屋敷の敷居を跨ぐ前に私が徹底的に『排除』いたします」


誠はじり、と再びベッドの縁に腰掛け、かすみの両肩を今度は逃がさないようにガシリと掴んだ。その力は、お嬢様が少し痛いと感じるほど強固だ。


「他の男の気持ちなど、知る必要はありません。あなたが知るべきなのは、目の前にいる私の、この狂いそうな気持ちだけでいい。拓人を招待するのも、青藍高校の連中と関わるのも、すべて白紙に戻していただきます」


誠はかすみの耳元に顔を寄せ、地獄の底から響くような、ドロドロとした執着に満ちた声で囁いた。


「学校をお休みされている間、あなたが外の男のことを一瞬でも考えられないよう……今夜から、この誠が『特別なお仕置き』を兼ねた、二十四時間体制の看病をして差し上げます。お嬢様、二度と私の前で、他の男の名前を呼ばないでくださいね」


誠のあまりの気迫と、あまりにも重い独占欲に、かすみは驚きながらも、その奥にある彼の本当の寂しさに気づき、そっと声をかける。


「だって誠さんにも、前に縁談の話あったのよ。お母様とお父様がそう話していたのを聞いたから、誠さんにも素敵な女性とお付き合いしてほしかった」


かすみにとっては、大切な執事の幸せを願う、100%の善意と優しさだった。


誠に幸せになってほしいからこそ、自分の大好きな両親のような恋愛をしてほしかったのだ。


そのどこまでも無垢な言葉を聞いた瞬間、誠の肩からすうっと力が抜けた。かすみの両肩を掴んでいた手の強張りが解け、誠は力なくその手を下ろす。


誠はゆっくりと眼鏡を外すと、目元を片手で覆い、自嘲するような、ひどく切ない笑みをこぼした。


「……お嬢様。あなたは本当に、どこまでも残酷で、愛らしい方だ。私に素敵な女性との縁談など、そんなもの、あるはずがないでしょう。お父様とお母様がどのような意図でお話しされていたかは分かりませんが……私の心は、あなたがまだ私の腰の高さほどしかなかったあの幼い日から、ただの一度も、他の誰かに動いたことなどないのですから」


誠は再び眼鏡をかけると、今度はいつもの恐ろしいヤンデレの目ではなく、一人の傷ついた男としての、深く静かな瞳でかすみを見つめた。


「私が望む『素敵な女性』は、世界中でただ一人、私の目の前にいるあなただけです。他の誰かと付き合ってほしいなどと……私の心をこれ以上引き裂くようなことは、どうかおっしゃらないでください」


かすみの無垢な優しさに触れて、誠のドロドロとした怒りは消え去り、代わりに切ない愛しさと独占欲だけが残ったようだった。


「……ですが、お嬢様が私の幸せを願ってくださったことだけは、嬉しく思います。拓人様をご招待する件、お嬢様がそこまであの方の気持ちを知りたいとおっしゃるなら……お父様の手前もありますし、表向きは完璧に、完璧な執事としてお迎えする準備をいたしましょう」


誠はそう言って、いつもの完璧な執事の礼をしてみせた。しかし、フッと不敵に、そして妖しく微笑む。


「ただし。あの方がお屋敷にいらっしゃるその日、私は一秒たりともお嬢様の側を離れません。あの方があなたに相応しい男かどうか、この私が一番近くで、誰よりも厳しく『品定め』させていただきますからね。……もしお嬢様に不釣り合いだと判断いたしましたら、その時は、全力でお二人の間を引き裂かせていただきます」


お嬢様の優しさに免じて拓人の招待は一応許可(?)したものの、当日の監視と品定めはとんでもなく厳しいものになりそうだ。


サファリア女学院と青藍高校の交流会、そして波乱に満ちたお屋敷への招待――お嬢様の「普通の恋」への道のりは、あまりにも過保護な執事によって、一筋縄ではいかないようである。

最後までお読みいただきありがとうございました!


誠の重すぎる愛とお嬢様の無垢な優しさの掛け合い、楽しんでいただけたら嬉しいです。


もし気に入っていただけましたら、評価やブックマークで応援よろしくお願いいたします!


このように分けておくと、読者さんは「よし、お嬢様とヤンデレ執事のドラマだな!」とワクワクしながら読み始めることができます。

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