第4章-61 光る木の上で
僕は光る木の広場に着いた。
とても静かで、ベンチにも、広場のどこにも人はいなかった。
光る木の足元には、たくさんの花と色とりどりのキャンドルが並べられていた。
「これは……?」
しゃがんで花を見ていると、後ろから声をかけられた。
「君も手を合わせに来たのかい?若いのに関心だ。」
振り返ると優しそうな1人の老人がいた。
手には小さな花束とキャンドルを持っている。
「手を合わせるって、どういうこと?
この花とキャンドルは何?」
木の下の花を指さすと、老人は僕の指を包み込むようにして制した。
「こらこら、指を指してはいけない。
これは死者達の弔いの為のものだからね。」
老人は木の前にしゃがみ、花とキャンドルを木の下に置いた。
そして静かに手を合わせた。
僕も老人の真似をして一緒に手を合わせる。
しばらく手を合わせたあと、老人は手を離し、顔をあげた。
「一緒に祈ってくれてありがとう。
これで死者達に気持ちが届いただろう。」
僕も手を離し、老人を見た。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「どうして、この木に手を合わせるの?」
老人は静かに語り出した。
「そうか。
君はまだ知らないのか。
この木はね。全ての命が旅立ち、帰ってくる木と言われているんだ。
あの光る葉、命が輝いてるように見えるだろう?
だから、事故や事件があった時はこうして花やキャンドルを並べるんだ。」
「そうなんだ。
亡くなった人達は、みんなこの木の下に埋まってるの?」
老人は首を横にふった。
「ここにはいない。
死者達の体は、皆で1つの大きなお墓に行くんだ。
私も昔行った事がある。
裁判所の裏にある静かな森の中でね。
たくさんの花で囲われていたよ。」
老人は立ち上がると、僕に軽く手を振った。
「私はそろそろ行くよ。
君も気をつけて帰るんだよ。」
老人に手を振りかえし、1人でもう一度手を合わせた。
しばらく手を合わせた後、光る木を見上げた。
「…あれ?」
高い木の枝から白い鳥の体の一部が見えた。
だが、虹色の鳥の姿が見えない。
「虹色の鳥はどこ?
僕が見えてないだけ?
それとも…君も一人になっちゃったの?」
白い鳥は羽を広げ、透き通るような声で鳴いた。
「キイッ」
すると、僕の後ろから強い風が吹いてきた。
後ろを振り返る間もなく、背中を何かにガッチリと掴まれた。
「うわっ…!!」
体が宙に浮く。
そのまま光の木の頂上に一瞬で上がり、パッと体が離された。
「助けて!落ちる!!」
ギュッと目を瞑った。
だが、落ちた場所は布団のように柔らかかった。
そっと目を開ける。
目の前には白い鳥がいた。
「えっ?」
足元を見る。
草や枝で編まれ、虹色と白の羽が敷き詰められた巨大な巣があった。
「グワッ!」
後ろから鳴き声がした。
虹色の鳥が僕を見下ろしていた。
「な……何?」
思わず後ずさる。
「キイッ」
白い鳥が再び鳴いた。
僕が振り返ると、巣の隅に丸くなって眠るフクの姿があった。




