3話 悲鳴をあげる大地と赤い影
ライムはアルス、セイラを仲間にした。エリスも含めた4人で冒険を始める。その前に情報を集めるため街を歩きながら話していた。
街から少し行って坂を上った先に、おじいさんが木陰で涼んでいる姿が見えた。俺たちはおじいさんの方まで歩いた。
「おじいさん大丈夫ですか?」
セイラが声をかける。
「ああ大丈夫、ここで寝ていると木々から力をもらえるような気がするのでなぁ。老い先短い、わしの健康法じゃ」
「ふふふふふ、おじいさんらしいですね」
「そうじゃろ、まさに森林力(浴)」
腕を曲げ、力こぶを見せるおじいさん。非力に見えたがパワフルである。
俺とエリスの目が合った。歳をとると頑固なので、この年のおじいさんの外出に口は出さない。一生懸命働いてきた方だから、好きにさせてあげる。
「肩でも揉みましょうか」
アルスが聞いた。
「いーやいい。わしは無理はせんからこっとらん。それより難しい顔をして何かお困りかな?」
「はい、実は・・・」
とアルスは言いかけたが、それ以上言わず俺を見た。
「そう実は街を探しているんです」
言いにくいのかと思い、俺はおじいさんに言った。
「街じゃと?」
「はい」
「街は二つ、この街から南東にサンサンドが、北西にツリーシードがある」
「忘れてた、そう言えば二つ街があったな」
とアルスが答える。
「わしは、この街の農民として生まれてきて五十年の月日が経つがどこにも行っとらん。この先も街で生涯を全うすることを望んで生きている。冒険者たちが他の街を探す事は知っているが興味を持たない事が長生きの秘訣じゃな」
そう言っておじいさんは話をやめた。
結局、どこにも行ったことはなかったのか。それも長閑でいいかもと思ったが、
「この街で生活、結婚、老後を過ごすのね」
エリスは少し寂しげに言った。
「じゃがっ!一度もないとは言ったわしだが結婚相手は違う街の女子がほしいと思ったんじゃ。その後もその考えが頭から離れん。もう、この年齢で未練はないが、それが唯一叶わなかった事だと言えるかのう。今ある二つの街の女子も、この街に来た時に会ったが気が進まんでな」
おじいさんの長生きの秘訣は、あまり外出せず仕事を全うしたからか。この街の人たち皆が言い出さないのは命を繋ぐためなんだろう。
俺はそれが嫌だ、ここでは生きていけない。
「それでじゃ、ある日気になることがあった」
「あの空が地上から赤く染まっていたんじゃ!戦火が起こったのか、ずっと見ているとゴォオオンと地響きで岩が崩れた音と、グガォオオオァと言うモンスターの声、それに混じってキャアアアーという悲鳴が聞こえてきた!
次第に赤い空が橙色になり静かになった。空は三日経って濁った黄色に戻ったが、その間ずっと空に邪気のような物が漂っていた。
それから囁かれた事が、あの空の下に街か何かの建物が存在するという説じゃ。わしは、これを伝えていくことが今は使命じゃと思っている。隠居後の最後の仕事じゃな。道楽にすぎないが、ふぉふぉふぉふぉふぉ~」
「それって」
「それは」
また、エリスと目が合った。
空を見る、おじいさん。
「おじいさん、その方向を詳しく教えてもらえませんか?」
俺は食らいつくように、おじいさんの腕に両手をかけた。
「どこですか?どこにその赤い空が見え、音や声を聞いたんですか?」
「おおぉ・・」
「ちょ、ちょっと待ちなさいライム、おじいさんなんだからそんなに掴まないで」
「そうだぞライム、おじいさんは労わるもんだ。はっははー!」
とアルスは言う。
俺は削げ落ちたおじいさんの腕から手を離した。アルスに一礼する。
「おじいさんお願いします、俺の人生がかかっているんです。教えて下さい」
「そうじゃな。わしは今までこの街で農民生活していた。そうやっていると他の災害からは、ほぼ無関係に生きることができたが女子を集めないと生きることができないようになってきている」
「それで、何か?」
「わしも一緒にそこへ連れて行ってくれ」
「え!!一緒に・・・」
俺は考えた。
「どうだ皆?」
「私は、お年を召したおじいさんを仲間に加えるなんて反対です」
セイラが言った。
「俺は何も言ってないよ、セイラ」
「黙りなさいライム!命に短いも長いもありません」
清らかなセイラの眼差しが眩しく痛い、輝いていて純粋だ。
「モンスターは、勝てないと分かるとおじいさんを狙うかもしれないし私たちはまだ駆け出し、とてもじゃないですが守りきれません!
だから、おじいさんはここに残って下さい。情報を持つのは、おじいさんだけかもしれないんですから」
セイラの説得で納得するか、おじいさん?どうだ!!
「じゃがわしは一緒に行けないのなら、その場所は教えんぞ」
はぁ、納得させられなかった。
「そうねぇ、おじいさんも一緒に冒険しましょう。でもおじいさんが死んだら葬式の問題が出てきます」
エリスの性格が豹変した。
「だから構わんと言ってるのに」
「良いのね」
そう言って視線を戻すエリス。おじいさんを見る前に本意ではない目をしていたのは間違っていなかった。単に調子を合わせてただけ。
「もう頑固なんだから、おじいちゃま」
とセイラは渋々言う。
「おじいちゃまってあんたのおじいさんかい?」
俺はセイラにツッコミを入れたら、
「ライムさん、私は誰に対しても親しく接したいのです。こうしていろんな方との関係も教会に仕えるための第一歩」
「セイラちゃんは無理しなくていいのでな」
「何を言うんですか昔からお年寄りは敬えって言いますから。敵は意地でも私が倒します」
「子供は親に甘えるものじゃ」
「私は神に仕える身です」
「神も神の子というぞい」
「そうですね」
「ところでおじいさん、名前は何と呼べばいいでしょうか?」
俺はセイラと戯れているおじいさんに話しかけた。
「テントと呼んでくれ。それがわしの名前じゃ」
なんだせっかく良い所だったのにという顔をされたが教えてくれた。
「よろしくお願いします、テントさん」
「ああ、よろしくの」
「よろしく~」
セイラが明るく言うと、
「セイラちゃん、よろしくぅ」
と真似した、いつまでも若いつもりかご老人。
それから行こうと思って振り返ると、こちらを見ているギルド冒険者たちが道の真ん中にいた。そして歩いてきて俺の前を塞ぐように立ち止まる。
俺たちは立ち止まったまま、歩けなかった。
「何だ、お前ら!」
「用があるのなら早くして、こっちは急いでいるの」
エリスが目を澄まし言う。
「なーに、そこのご老人に話があってな。邪魔するのなら、お前らと勝負して経験値を稼いでもいいがどうするかな?」
「おじいちゃんに何か?」
「いいから、こちらにそのご老人を引き渡せ」
「悪いけど渡せないわ」
「そう来ると思ったよ。お前たちみたいな馬鹿冒険者は絶対に渡そうとしないからな。悪いがお前たちには痛い目に合ってもらうぞ」
おじいさんが俺の横に来た。
「わしの建物の情報の事を知って来たんじゃな」
「ちょっ・・・・」
俺は話を静止できなかった。それを言ってしまったのか!?
「おい」
一人が仲間に声をかける。
おじいさんが言ったことは当たっている。聞いていて知っていたんだ!三人示し合わせた顔からして間違いない。さっすが亀の甲より年の功、建物の情報を持つのはバレたが、テントさんは渡さない。
「じゃあー、いくぞ!」
相手ギルドは四人組、メニューを確認、戦士・戦士・戦士・ヒーラーの組み合わせで名前は相手から左にアンク、ポンド、タンク、ユリアンと判明、攻撃重視のギルドと推測できる。さらに装備は外見で斧、長剣、剣、ロッドと見た。ヒーラーが中央にその前に一人、左右に二人で陣形を崩さずこちらに駆けてくる。
「はははははーっ」
アンクは左に、
「さあいくぜ」
ポンドは右に、
「渡せば許してやったものを」
タンクは正面のまま、
中央にはヒーラーのユリアンという女がいた。
正面
左 中央 右
「どうするんじゃ?」
テントさんが不安がってこちらを見る。
「戦うしかないでしょ」
エリスが言った。
「私は戦闘が初めてで」
セイラが焦っている。
「こちらの戦士は俺のみ、二人は食い止められる気がするが後一人をどうするか」
アルスが言葉を投げかける。
「ライム、お俺はできることをしろ」
実は俺にできることとかないんですけど。街の中での戦闘は俺の想定外。
「ここはアルスのお手並み拝見ね。この程度の奴らに私が手を出しては、この先行ける気がしないわ。悪いけどライム、皆とそのギルド冒険者たちを倒してみせて。さあおじいさんは私の側に来て!」
「うむ」
おじいさんはエリスの隣にいった。
「そ、そんな」
セイラが喚く。
「セイラあなたも修道士になるのなら、そのために命の重みとそれを守るための覚悟で戦ってみなさい」
「ライム!あなたもここでダメならそれまでの人間だったってことで諦めなさい!」
「・・・っ」
しっかり聞こえたよ。
「資質は問われない、皆がどれだけやれるかが問われるの」
テントと一緒に見守るエリスが呟いた。
「うおおらあー!」
アンクが斧で斬りつける。
「キィーン」
アルスの反応は絶妙だった。敵が斧を振り下ろす前に柄の上の方に長剣を当てた。
「ドサッ・・」
アンクは力を削がれ、斧を背後に落とす。それはアンクの持つ斧の自重とアルスの剣の勢いが重なってアルスにのしかかったからだ。それに動揺するアンク。
「こ、こいつ・・できる」
同時期、右のポンドが剣を右から横に繰り出した。アルスはそれ剣を当て防ぐ。
「うぉおおおおおおおー」
さらにその隙をねらいアルスは落とした斧を探すアンクを斬り付けた。
「ドッツ・・・ガシャガリッ・」
「ぐふぅ」
アンクの腹に剣の腹の部分(中央の所)が当たる、音と声がするが倒れないアンク。今の一撃は皮のような生地の鎧が攻撃の衝撃を吸収し、ダメージを低下させた。
ポンドは長剣を止められたが、再び上からアルスに振り下ろした!
「ヒュン!」
ポンドの長剣が空しく空を斬る。
だがアルスは前に数歩進みみアンクの腹に剣を当てていた。
ニタリ笑みのポンドは長剣が止まったアルス狙って長剣を再び振り上げ下ろす。
アルスはアンクの腹の長剣を力づくで抜き、ポンドの振り下ろした長剣に振り当て弾き返す。
「ガッ、キィーン!!」
「ガシャン!」
運よくポンドの長剣は、遠くの方へ飛んでいった。
さらにアルスは、拾い上げた斧を持ったアンクの腹を蹴る。
アルスがアンクの腹に長剣を振った時、次を狙っていたらポンドの攻撃に気づくのが遅れやられたかもしれなかった。
一方、俺は真正面から剣を出すが、タンクが走ってきたので前にしっかり剣を持ち構えた。
「ガキン!ガキン!ガッ!ガッ!ガキン!」
タンクは剣に剣を当て激しく揺さぶる。俺の剣は打ち付けあった状態で行き場が定まらない。だが当てることで剣の軌道は反れている。そうしながらアンクとアルスの方にも少しだけ目を向けた。
決して初心者がやっていられることではない。なぜならサシで勝負しているわけではないので、いつ交互に相手が入れ替わるか、攻撃がとんでくるかなんて分からないからだ。だからであって相手もやっていること。
コンビニでの経験が活きたな、レジ、温め、揚げ物、次のお客さん。
「ガガ!ガッツ!ガキンッ!」
「シャラ!シャ!シャリン!」
俺の後ろにいたセイラは剣よりも長い錫でタンクの剣を持つ手を叩き落そうと振り援護してくれた。俺とセイラの同時攻撃だ、錫はタンクの顔に偶然ヒットし剣を一瞬止めることに成功!
その成功を活かし攻撃へと繋げなかったことが俺の不覚だった。
タンクは怒り俺の前に走って来て、剣を振り下ろした。
「ドスッ!!」
「ぐおっ!」
アンクが斧を拾い上げている時に、アルスはアンクの背中を思い切り蹴りつけ地面に倒した。
「ガッツキィーン!ギリギリギリギリ」
俺へ振り下ろすタンクの剣を、アルスは横から受け止めてくれた!十字にぶつかり合う剣と剣、見る限りアルスとタンクの腕は同じ!
そこに、
「うりゃあああー!」
ポンドは弾かれた長剣を拾い戻って来た。アンクは立ちあがっている最中、
それをカバーする時間がない。俺とセイラの二人で止めなければならない。あちらのヒーラーはずっと後方にいる。俺はヒーラーに攻撃を手伝ってもらっている。分が悪いはずなのにセイラは後ろで必死に錫を振ってくれた。
迫ってくるポンド相手に、どう行動すれば勝機が見いだせるか!?
良案が出ない!
あと4m
あと3m、何とか!
2mやばい!
1m
とにかく、止めないと!
「ブンッ!!」
俺は目の前にいるポンドに剣を投げつけた。
「ガキッ、・・・・カシャン!」
ポンドはそれを長剣で弾いた、少し時間が出来た。
今のうちに!
「ジャリ、ジャリジャリジャリリ」
俺は地面に手を押し付け砂をかき毟るように集める。
「んっ!」
砂を相手の顔めがけて投げつける!
「パシッ!」
締め付けられた土の上、砂が一体どの位あったか、集まったかすら分からない。でも握って投げた!
考えるな。少しでも目に入れば、
「ジャリジャリジャリジャリ!!」
ああ、指が痛い、痛いが痛いだけ集まってくれ。
「パシィ!」
もっとだ!!
「ジャリジャリ!!」
「パシ・」
集めては投げるを繰り返す。
「うわっ。ああ、ちくしょう!」
目に砂が入りパチパチ、目を開閉して動きが止まるポンド。
「スッ!!!」
それでもポンドは俺の前に剣を突き出して刺そうする、俺のこめかみに剣がかすった!!血が垂れ頬をゆっくりとつたっていく。鉄のような血生臭ささがした。
「ブンブンブンッ。シャラシャラシャリリ、リン!!」
セイラが錫を乱暴に何度も振り回す。所構わず、俺とポンドに錫がバシバシ当たる。錫のダメージなんて、そこまでないから考えなくて良い。
セイラはそれでも錫を振った、錫が強く目にあたれば開いていられないのを知ってか知らずか。俺たちの目は衝撃で膨れ上がる、赤タン青タンが後でできるくらい。
戦闘中のアルスはタンクと武器を当てて硬直状態、。引けば押され、押せば引かれ、逃げようと後ろへ下がれば歩調を合わせて前へ出る。そこに敵のアンクが加勢する!
俺はここで終わりなのか、最初の戦闘で空しく・・。
俺は狭い視界の中で一秒だけ入った光景を頭に写し取る。ポンドの長剣が地面に、その上に乗り足で押さえるセイラ。
「うあああーっ」
「ダッ!」
そして見えないまま手を拳にしポンドに正拳突きを入れた。
「少し時間をくれぇ~!」
アルスが助けてくれるかもしれない。
「うんっ!!」
「ガラ、シャラシャリン!!」
その隙にセイラはポンドの長剣を踏んで錫を振り上げた。
「ドッ!!」
タンクはセイラに錫で殴られるが錫を力で捻じ伏せ分捕った。取り返そうとするセイラの腹に拳を当てる。
「ぁ・・・・」
セイラはその姿勢で苦しみ気絶した。ヒーラーが意識を失うと治癒できる者がいない。どんなゲームでも現実でもそれがルール。
「おい、大丈夫か、セイラァ!」
「さあ死ねぇえ!」
ポンドは持っている長剣を構えた。
やられ、
年長者は知恵も知識も経験もあって、そして好奇心もあった・・。
人間同士の戦闘となれば剣の腕だけでなく連携や相性も影響するから、どういった職種の組み合わせが良いか考えました。




