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 僕の友人『N』の場合~どうしようもない彼に転機(死に戻りループ)が降ってきた~  作者: 大野はやと
第二章:『雨上がり編』

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第百三十七話、申し訳なくも、『死に戻り』を誘発するかのようにその刃は飛んでくる





それから、はぐれたおっくんさんやシミズさんに会えないまま。

しかし順調に折り返しをすぎてのっちゃんたちは10階層まで到達していました。

ちなみに、1階層に出てきた青赤のお馴染みなスライムさんたちは、三階層まで出てきましたが。


のっちゃんもアキラさんも、モンスターさんたちと仲良くなれる、テイム某が得意なタイプではないようで。

戦うまでもなく逃げていってしまったせいもあったのでしょうが。

どうやらある程度の実力がないと、たとえ『挑発』スキルをオフにしていたとしても影響を与えてしまうようで。

今回、彼彼女らが私たちのきょうだい分になるようなことはありませんでした。

もっとも、後後によくよく考えてみたら。

のっちゃんの配下となるべくその席は、とっくの間に埋まっていた、ということでもあったのでしょう。



そんなこんなで。

ダンジョンでのスカウト、仲間が増えるような事はなさそうであったので。

わたくしたちは、いつもののっちゃんの内なる世界、特等席から、それ以外は順調なダンジョン攻略を見守りつつ。

いつでも出られる準備をして待っていた時分でした。

今までとは少しばかり様相がかわったところで、久方ぶりにのっちゃんが口を開きました。



「迷路タイプのフロア、か。キリのいい階層だから、もしやと思ってはいたが……」

「フロアボスの事か? ……いや、確かにフロアらしいフロアのない階層だが、だからと言ってボスモンスターが出現しないとは限らないのか」

「やはり、そうか。そうなると厄介だな。迷路のようだが、要は階層全てが通路、と言う事だろう?」

「ああ、通常ならば80階層以降に、ごく稀に現れるらしい」

「ふむ。このダンジョン通路特有の黒い靄のせいで、攻撃範囲に入るまで敵も味方も気づけない、と言うことか」

「敵性ばかりの下層ならば遠距離攻撃を行いつつ進む事もありだろうが、そうもいかないか」

『……なんだかふたりで話し込んでるけども、ようはおっかなくて動けないってことでおーけー?』

『そうですねぇ。モンスターとの鉢合わせもそうですけど、どちらかと言うとはぐれた仲間たちで同士打ちの方を警戒しているのかもしれませんね』


特にのっちゃんは、出会い頭に攻撃を受けたとしてもわたくしの力でどうとでもなるので。

やはりお味方と鉢合わせて、とった可能性を警戒しているのでしょう。

あるいは、お味方であるとしても、いつぞやのギンヤさんのような不可抗力によるものもあるでしょうし、

のっちゃんはどちらかといえば、そちらの方を憂慮しているとも言えて。



「……逆に言えば、相手の方からの遠距離攻撃の可能性もあるわけか」

「うーん、モンスターたちならばこちらを視認しない限り遠距離は……いや、そうでもないのか。

ウルガヴ】の魔法によるシールドを貼ろう。これならば余程のものでなければ防げるはずだ」

「水による盾を作り出す魔法か。模倣させてもらっても?」

「っ。のっちゃん、そんな事までできるのか? それは構わないが、せっかく作り出したことであるし、このまま使ってくれ」

「ありがとう」


頭から足元まで覆う、水色透明の透けたタワーシールドめいたもの。

詠唱もなしにそれを作り出したアキラさんこそ、凄すぎませんかと二人して喝采を送りつつ。

進行方向はのっちゃん、背後はアキラさんが舵を取る形で進んでいきます。


初めは、アキラさんが前、先行すると言ってくれたのですが。

のっちゃんがおれに先行させて欲しいとお願いしていたからこその布陣です。

そんなのっちゃんにも冒険心が湧き上がってきたのでしょうか、などと思っていましたが。

のっちゃんの最善の選択の結果……その答えはすぐにやってきました。



ひゅひゅひゅっと。

のっちゃん越しでも聴こえてくる風切り音。

わたくしたちがあっと声をあげる前に、正しくそれを予期していたかのようにのっちゃんが水の盾を掲げます。



「前方から遠距離攻撃!」

「な、なんだって!? むっ……これは、鉄の矢? しかし、形状が」


ここのダンジョンには鉄の矢をどこからともなく撃ち込んでくるモンスターが存在しているようなのですが。

そのモンスターも、特殊な罠とのセットでなければ、視認しない限り攻撃を仕掛けてくることはない、とのことで。

そのような低い確率のものよりも、アキラさんももう一つの可能性……フレンドリーファイアが怖くてご破産になった、先の見えない迷路の攻略法として、遠距離攻撃を放ちつつ進むといった事を、他の誰かが行っていると言う事に思い立ったのでしょう。



「クナイ、棒手裏剣……暗器の類だろうか」

「ちっ、何て考えなしな! アンナハルナ! 君だろう!? 俺だ、アキラだ! 危ないから投擲を止めてくれ!」


暗闇のもやの向こうでも届くように、魔力のこもったアキラさんの大きな声。

のっちゃんの内なる世界、比較的それでも近くにいたとはいえ、直接言われた訳でもないのにルプレともどもすくみ上がる程の圧力が、

暗くて見通せない通路の向こうまで広がっていくのが分かります。



『うわっ、びっくりした。主さまとお話してる時と声のボリュームからぜんぜんちがうじゃん。

わたし気づいたんだけど、これ、やっぱり外に出てなくてよかったよなぁって』

『ルプレもそう思いますか。敵意とまでは行かずともどうやらアキラさんは異性に対して思うところがあるようですしね』


わたくしたちが、まだこうして別個の存在として動けるようになる前ののっちゃんがそうであったように。

(まぁ、のっちゃんの場合はマナさんに限ったことだったのかもしれませんが)

女性に対してあまり良い思い出がないようにお見受けしていました。


のっちゃんが、わたくしたちに内なる世界での待機をお命じになったのは。

危険の多いダンジョンへ向かうから、と言う事だけでなく、アキラさんとのいらぬ軋轢を避けるためもあったのでしょう。



「……っ!? な、これでも止まらない、だって!?」


などと思っていましたら。

そんなアキラさんに対してのお返事は。

まるでその声が届いていなかったかのように。

その数が倍ほどにもなった、投擲武器の数々で……。



    (第138話につづく)







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