表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/66

65、宇宙の女

 遠い遠い銀河系の、むかしのむかしの話。

 地球で。

朱里しゅり、就職決まった?」

「まだだよ。惑星ウラジミールで営業の募集があったから、面接に行って来る。おれは地球を出ていくよ。他の惑星で暮らす」

「営業って何の仕事だよ」

「ジュースの販売」

「なんて会社?」

「マグダレナ」

「就職決まったら、その会社のジュース贈ってくれよ」

「就職決まればね」

 そして、朱里は宇宙船に乗って、惑星ウラジミールまで行った。ウラジミールには、絶世の美女とまではいかなくても、そこそこかわいい女たちがいた。食べ物はとろけるほどに美味しく、悪くない星だ。

「マグダレナに行ってくれ」

 と朱里はタクシーに乗って目的地を指示した。

「わかりました」

 タクシーの運転手はそう答えると、自動車を走らせた。

「お客さん、観光ですか」

「いえ。就職の面接です」

「ゆっくりしていってくだせえ」

 タクシーは一時間も走ると、でっかいビルに着いた。

「ここがマグダレナでさあ」

 朱里はタクシーの運転手にお金を払って、下車した。

「いらっしゃいませ」

 受付の女性がいう。

「就職の面接です。二時に予約が入っているはずです」

「かしこまりました。八階へどうぞ」

 八階の面接会場には、面接官らしき女性が三人で待っていた。マグダレナ社の社員はみんな女性なのだろうか。

「朱里さまですね。こちらへどうぞ。簡単な面接をさせていただきます」

「はい」

 朱里はリラックスしたまま、質問を待った。いったいどんな質問が飛んでくるのだろうか。

「朱里さまは、女性が好きな方でいらっしゃいますか。男性が好きな方でいらっしゃいますか」

 何の意味がある面接なんだろうか。

「どちらも好きですが、特に女性が好きです」

「宇宙人の女性が相手でもよろしいでしょうか」

 宇宙人の女性? 何の話だ。もちろん、女性なら大丈夫に決まっているじゃないか。宇宙人だからとかは関係ない。

「大丈夫です」

 と朱里は答えた。

「好みの年齢は?」

「十七歳です」

「お時間をいただいてよろしいでしょうか。準備ができるまでこちらへどうぞ」

「すいません」

 そして、面接官に連れられて隣の部屋に行くと、妙齢の面接官の女性が服を脱ぎ始めた。

「いっかといいます。実技面接を行います」

 朱里は少し戸惑ってしまったが、なめらかにことを進めた。

 いっかはいう。

「こんな話がありますね。宇宙の別の惑星に行ったら、その惑星の女性は宇宙人だったとか」

「怖いですね。いっかさんはそうではないですよね」

「朱里さんの方が疑いが高いですね。宇宙人である可能性は」

「もしよければ確認を」

「そうしたいですね」

 などと、映画の脚本でも考えるようなできすぎた会話をして、いっかの残りの服を脱がした。出会って初日である。男もがんばったものだ。


 面接は終わることなく、数か月におよび、いっかと関係をもってしまった。

「幸せだわ」

「おれもだよ」

 それから数か月、彼女と楽しく面接時間をすごした。

 驚くべきことに、いっかは妊娠した。

「惑星ウラジミールが現実世界であり、きみの体が実体である証拠だ」

「そうありたいわ」

「そうなるよ」

「難しいでしょうね」

 朱里はアップルジュースを飲んだ。

「この惑星では、就職面接をしにくる男みんなにこんなことを?」

「そうですよ」

 時計の針を見た。カレンダーも。

「まだ、ぼくは面接中ですよね?」

「そうですよ」

「いつまで面接を?」

「合格不合格が決まるまでですね」

「赤ん坊が生まれるまでですか」

「赤ん坊が生まれてもまだまだずっと面接がつづきますよ」

 朱里はもはや就職などどうでもいいと考え始めていた。

「面接はぼくが死ぬまで続くのですか」

「だいたいそんな感じですよ」

 窓を見ると、青い空が見える。惑星ウラジミールの空だ。

「今こそいうよ。おれはきみを愛している」

「本当にそうかなあ。きっと赤ん坊は生まれなくて、出産とともに、あなたも赤ん坊も消えてしまうんだわ」

 朱里はいっかの体に手をまわした。

「心配しすぎだよ。赤ん坊は生まれる。おれもきみも現実だ」

 数か月後、いっかが出産した。朱里は付き添っていた。

「あなた、赤ちゃんはどう」

「人類にそっくりだ」

「ちゃんと女の子? お医者さんがいったように」

「女の子に見えるね」

「よかった」

「おれときみの置かれた複雑な事情がだんだんわかってきたよ。なぜ、おれときみが現実なのかどうかを不思議がるのか」

「待って。少し時間をちょうだい」

「そうだね」

 今度はグレープジュースを飲んで一息ついた。

「いっか、きみは宇宙人なんだね。地球人にそっくりな。地球人と交配して、自分たちの血を残そうとしたんだ。この惑星ウラジミールの女の子は、みんな、絶滅しそうな宇宙人なんだ」

「地球の男は気づくのが遅いんですね。そうなの。わたしたち、地球人と交配できる地球人そっくりの宇宙人なんです。一緒に、この宇宙で幸せに暮らしましょう。わたしたちみんながあなたたちを愛しています」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ