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66、反駁・騎士団長殺し

 <閲兵式>

 九時に庭園の時間が動き出す。

 ここは騎士団長の箱庭。

 騎士団長は、真ん中に立っていた。

 整列しているのは真ん中の騎士団長だけであり、他の騎士たちは無頼、孤高の男たちであり、整列などしない軍隊だった。

 しかし、騎士たちが信じているのは騎士団長だった。

 騎士団長は、騎士たちの憧れであり、基準であった。

 参列者たちは戸惑い、騎士団長だけを見ていた。

 楽隊が笛を鳴らし、路上で幕が開いた。


 <革命前夜>

 騎士団長は、庭園を護衛していた。

「今夜、革命が起こり、我が帝国は、世界全土を領土とするであろう。」

「この世界の第一の動者は誰だ。この世界の究極原因は何だ。騎士団長か。」

 全体は部分にあらず、部分は全体にあらず。この世界は全体であるため、部分である我々の現実はこの世界ではない。ゆえに、この世界に我々は存在しない。

 パルメニデスのイデア論だ。

 騎士団長は男にあらず、男は騎士団長にあらず。騎士団長は、ゆえに性別をもたない。

「騎士団長は征服された女性として、存在しようとしている。」

 騎士団長はこの世界にはいない。もともと、騎士団長はこの世界にはいなかったのだ。

 騎士団長は威厳ある声でいった。

「天変地異を望んでいるなら立ち去るがよい。我々はそんなものではない」

 そこへ、真実のイデアが顕れ、剣で騎士団長を刺した。

 もんどりうって騎士団長は倒れた。

 騎士団長は殺された。

「見ろ。神の横たわった姿を。やつが騎士団長だ」


 <踊る、踊る、踊る(ダンス・ダンス・ダンス)>

 騎士団が躍る。騎士団長が死んだので、みんな、踊り出したのだ。

 騎士たちの父親は騎士団長だ。

 神は万民の支配者であるとともに、神は万民の奴隷である。

 騎士団長は万民の支配者であるとともに、騎士団長は万民の奴隷である。

 騎士団長は創造主なのだ。

 騎士団長がこの宇宙を作った。

 被造物が創造主より格好いいのは当然だろう。

 騎士団長を殺したのは、誰だ。

 神殺し。

 あの真実のイデアはなんだ。

 あの神殺しは何者だ。

 騎士団長を返せ。

 神が死んだあとにつづいた世界。

 騎士団長の復活を願う参列者の行列。

 すぎさってから行われる護衛。

 失われてから守る、大切なもの。

 騎士団長が殺された。

 この世界に告げるお別れのことばすら忘れられていき。

 ぼくらは騎士団長を愛していた。

 あの神殺しの男も。


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