第6話 大バズリとこれから
<カナタ視点>
「これからどうしようかなあ」
青玉ダンジョンから帰り、数時間後。
自宅のちゃぶ台に手を置きながら、周りをチラ見する。
「どうしましょう。主様」
「どうしようかしらねえ」
「……なんか案出す流れじゃないのかよ」
従魔二人は「ねー」とうなずくのみ。
ていうか狭いな。
この部屋に三人は限界すぎる。
なんて思っていると、ルーゼリアは抱き着いてきた。
「お姉さんはカナタ君と一緒にいれたらいいっ!」
「はい避けるー」
「やん」
でも、たまには回避してみた。
今はそんな場合じゃないんだ。
「だから、現代ではお金がないと一緒にいることもできないんだって」
「ふーん。とにかくお金を得たら良いんだね」
「……というと?」
嫌な予感がしながらも、一応聞き返す。
すると、ルーゼリアはふふっと笑みを浮かべた。
「例えば〇〇して、△△したりー」
「おい!」
「※※※で※※※※したりすればー」
「ダメダメ! ここ日本だから! 警察が来ちゃうの!」
やっぱりアウトだった。
とても人前では言ってはいけない。
それでも止まらないルーゼリアさん。
「あら。警察も皆○しにすればいいのに」
「はい?」
「お姉さん、カナタ君の為なら出来ちゃうんだよ。なーんでも、ね?」
「……っ!」
そのまま、うっとりした目を浮かべて、四つん這いでジリジリ寄ってくる。
ダメだ、やっぱりルーゼリアは頭のネジが足りない。
昔から倫理観がぶっ壊れてるんだ。
でも、ここはなんとか説得する。
「と、とにかくダメだって!」
「どうして? カナタ君の為ならお姉さんは命さえも──」
「その俺が困るんだよ!」
「じゃあダメね」
「ほっ」
その言葉には、ようやく引いてくれた。
単純なのか、そうじゃないのか。
とりあえず行動原理が俺にあるのは分かった。
一息つきながら、俺は視線を移す。
「ココネは何かしたい事とかある?」
「ココネは主様のお傍にいます」
「よし。無いんだな」
ココネはすすすっとこちらに寄り、隣にちょこんと座った。
可愛いけど、何も解決になっていない。
だったら、俺の考えで進めるしかないか。
「じゃあとりあえず、もう一回ぐらい配信をしてみようかな」
「「おおー」」
「まあ、多分次も大したことにはならな──って、うわっ!?」
そこで初めて気づいた。
異常なスマホの通知に。
『あさんと他315人からコメントが送られました』
『ココネちゃんLOVEさんと他912人からフォローされました』
『魔王の手下さんと他1249人からチャンネル登録されました』
「なんじゃこりゃあ!?」
配信チャンネルにSNSと、色んなアプリから通知が来ている。
とんでもない数だ。
バイブを切っていたから気づかなかった。
「って、ええ!?」
俺はすぐさまSNSをチェックすると、驚きの光景があった。
トレンドが、心当たりのあるもので埋め尽くされていたんだ。
『氷の少女』、『炎のお姉さん』、『主様』など。
『魔王』や『黒幕』は……たぶん違う人の話題だよな。
それから、映像も上がっている。
「これ君達!? って、俺の【空間断絶】の所も!?」
どうやら、一部始終を誰かが配信していたらしい。
それが話題となり、俺たちが特定されたみたいだ。
なんて恐ろしい現代社会。
すると、隣からココネも声を上げる。
「主様! チャンネル登録者が5万人を突破しています!」
「5万んんん!?」
うそだろ、配信終了後も登録者は0だったのに。
特定から数時間でそれだけ爆増したのか。
ていうか、今も更新する度に増え続けている。
召喚前の世界とは規模感が違うな。
「これが、バズったというやつなのか……?」
正直、あまり実感は湧かない。
ただ数字が増えているだけだからなのかな。
でも、伸びていくのはすごく嬉しい。
そういえば、帰り道もチラチラ見られた気がした。
両隣の従魔を見ているんだとばかり思っていたが、もしかしてこれも関係しているのかな。
何はともあれ、一つ希望は見えた。
「聞いてくれ」
俺はすっと立ち上がり、二人に決意を伝えた。
魔王討伐の前夜を思い出すな。
「俺はこのままダンジョン配信者になろうと思う」
「さすが! カナタ君の守銭奴っ!」
「主様らしいです!」
「君達褒めてないよね?」
このビッグウェーブには乗るしかない。
それはもちろんあるが、実は理由がもう一つ。
「それに、俺の『七つの能力』についても考えたんだ」
『七つの能力』は、異世界で得た七つの能力。
今回手に入った【空間断絶】も、その一つだ。
「あれはどれも強力だ。今回は大したことない奴に宿ったけど、それがもっと強力な魔物に宿ったら?」
「「……!」」
「こっちの世界には無いスキルだろうし、想定外の事態を生むかもしれない。その情報を集めるためにも、ダンジョン配信者になるよ」
二人は賛同したのか、大きくうなずいてくれた。
抱き着いてもきた。
俺は二人を制止させながら真剣にたずねる。
「だから、協力してくれないか」
「「!」」
でも、その言葉には少し不機嫌な表情を見せた。
「はぁ~あ、やんなっちゃうわ」
「まったくです。主様」
「え……え?」
俺は不安で視線を右往左往させていると、やがて両隣から頬をつねられる。
「お姉さんは、あの日からずっとカナタ君に付いていくって決めた」
「……!」
「ココネもです、主様。二度と離れたりしません」
「二人とも……!」
そこでようやく言いたいことが分かる。
「言われなくても、協力するに決まってるんだから」
「ココネは主様のために生きます」
「……! ははっ、そっか」
わざわざ協力を仰ぐ必要すらない。
二人はそう言いたかったみたいだ。
やっぱり少し面倒だけど、その分かわいげもある。
「じゃ改めて、新しい門出に乾杯!」
「「かんぱーい!」」
そうして、俺たちは乾杯をした。
コップに水道水を汲んで。
もっとバズれば盛大にお祝いできるのかな、なんて考えながら。
「では主様、次はどんなお配信を?」
「そうだなあ……」
俺はチラリとスマホに視線を移す。
流し見していくのは、チャンネルに集まったコメントだ。
『あなたが黒幕さんですか?』
『女の子達の正体を教えてください!』
『本当に魔王なら次の配信始めにウインクしてくれ!』
『お願いです世界を滅ぼさないでください』
そこで、一つの結論に至った。
「ひ、ひとまず、弁明配信をするのが良いかもしれない……」
バズったは良いものの、ちょくちょく不穏なコメントが散見される。
不本意ながら『魔王』などと言われ始めてるみたいだ。
バカな、俺は勇者だったはずなのに。
ちなみに、原因は分かっている。
「二人にも出てもらうからね」
「「はーい」」
絶対に従魔二人が暴れたからだ。
魔物は可哀想な姿になっていたし、光景は終末のようだった。
俺は慣れてしまったが、初見だと恐ろしいのは理解できる。
そして、二人を従える俺が魔王と。
二人が強ければ強いほど、主の俺が勝手に崇められるわけだ。
憶測が憶測を呼んでいるんだな。
ならば、しっかり忠告しておく必要がある。
「言っておくけど、弁明配信だからな!?」
「うふふふっ。分かったわ」
「主様のために出来ることを考えます」
だが、二人はそれぞれニヤニヤしながら、何かを妄想している。
絶対に碌なことじゃない。
「絶対だからな!?」
「「はいっ♡」」
「…………」
不安だ。
★
翌日。
「では配信を始めたいと思います」
《きたああああ!》
《こんにちは……ガクブル》
《噂の魔王君》
《ついに正体が明かされるのか》
「今回はタイトルにもある通り──」
そして開始直後、俺はバッと頭を下げた。
「世間をお騒がせしている件について」




