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聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~  作者: 日之影ソラ
長女アイラ

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36/50

この度、『進化した【継承】スキルで数多の伝説を受け継ぎ英雄とならん』の書籍化が決定しました!

レーベルはカドカワBOOKS様です。

 アルデナ大聖堂。

 アトワール王国で最も大きな聖堂であり、王城前に構える純白の建物がそれだ。

 かつて王国誕生の際に貢献した聖人アーレスに捧げるために建造された聖堂。

 現在は司教と数名の修道女によって管理され、街の人々の生活の中で起こった小さな罪を懺悔し、神への祈りを捧げる場となっていた。

 大きさはパルプード大聖堂よりも小さい。

 見た目の綺麗さは、こちらのほうが上回っていると思う。


 私はこの大聖堂で、聖女として働いている。

 あの頃と同じように。


「おはようございます」

「聖女様、おはようございます」


 大聖堂に入って最初に出迎えてくれたのは、ここの司教様であるユレスさん。

 優しい顔立ちでいつもニコニコしている。

 今年で六十を超えるけど、まだまだ現役だと言っていた。

 

「あっ! アイラ様!」


 次に私へ駆け寄ってきたのは、修道女のミスリナ。

 淡い黄色の髪は、私と少し似ている。

 元気で人懐っこい性格は、サーシャと近いものを感じていた。


「おはようございます!」

「おはよう、ミスリナ。今日も元気があって素敵ね」

「ありがとうございます! アイラ様も変わらず綺麗で見惚れちゃいそうです」

「ふふっ、ありがとう」


 彼女は手に箒を持っている。


「お掃除中だったのかしら?」

「はい! もうすぐ終わるのでお待ちください」

「私も手伝いましょう」

「大丈夫です! アイラ様は皆さんが来られるまで身体を休めておいてください」

「私なら大丈夫よ? これでも体力には自信があるから」


 他の人が働いているのに、自分だけ待っているのは忍びない。

 そう思っている私に、ユレスさんが言う。


「聖女様には聖女様の役割があるように、彼女たちにも役割があります。全部を取ってしまえば、彼女たちが何もできなくなってしまいますよ」

「そういうことです! お掃除は私に任せて下さい!」

 

 ユレスさんの意見を聞いて、私は納得して頷く。

 確かに、手伝い過ぎるのも良くない。

 妹たちのいるせいか、私はちょっと過保護になっているみたいだ。


「じゃあお願いするわ」

「はい!」


 修道女はミスリナ一人ではない。

 この聖堂には七人の修道女がいて、一緒にお務めを果たしている。

 全員私より若くて、ミスリナが最年長だそうだ。

 サーシャより年下の子もいるのに、しっかりしていて凄いと思う。


「もう少し厳しいほうがいいのかな?」

「ご姉妹のことですか?」

「はい。過保護すぎるのもよくないのだなぁと思いまして」

「それは人によります。全員が当てはまることではないので、聖女様は無理に変わる必要はありませんよ」


 ユレスさんが優しくそう言った。

 この人が言うと、何でも正しいように聞こえる。

 年齢的なものなのか。

 この聖堂に来てからずっと、色々なことで相談にのってもらっている。

 

「さて、そろそろお務めの時間です」

「ええ。今日も頑張りましょう」


 定刻となり、大聖堂の門が開く。

 すでに入り口には待っている人がいて、開門と同時に中へと入ってきた。

 ここへ来る人たちは全員、何かに悩み、苦しみ、耐えている。

 そんな人たちを救い導くのが、聖女である私の役割。


「こんにちは、皆さん。順番に一人ずつ、私の前へ来てください」


 癒えぬ病を祈りで癒し、心の内に秘めた思いに耳を傾け、時に罪への償いを示す。

 神に選ばれた現身の聖女は、正しい行いを常にしなくてはならない。

 人々はそうであると信じている。

 彼らにとっての聖女を、私は演じ続ける。

 これまでもやってきたことだし問題はない。

 違いがあるとすれば、その動機だろう。

 今の私は、二人との生活を守るために働いている。

 平たく言えばお金のためだ。

 こんな話を彼らにしたら、きっと幻滅されてしまうのだろう。

 それでも構わない。

 だって私にとって、家族が一番大切な存在だから。


 勤めを終え、夕方には休憩に入る。

 聖堂内の片づけと掃除は、修道女たちがやってくれている。

 私はというと、聖堂裏にある小さな庭の椅子に腰かけ、身体を休めていた。


「ふぅ~」


 慣れていると言っても、やっぱり聖女として振舞うのは疲れる。

 肉体的な疲れはもちろん、精神的なストレスも大きい。

 こうして裏庭で一人佇んでいる時間は、何も考えなくて良いから楽だ。


 ううん、一つ違う。

 私がここにいるのは、別の理由もあった。

 口に出しては言わないけれど、心の奥では待っている。

 彼が来てくれることを。


 そして――


「今日もお疲れの様子だな? 聖女様」


 彼の声が聞こえて、私は斜め上に視線を向ける。

 裏庭を囲う壁を登って、銀髪の青年が姿を見せた。

 爽やかな笑顔で壁から飛び降り、私の前に歩み寄る。


「ふふっ、そういうそちらはお暇みたいですね?」

「何だ見てわからないか? この通りとても忙しいぞ」


 手ぶらでわざとらしく両腕を広がる。

 演技染みた彼の振る舞いを見て、私はクスリと笑った。


「こんにちは、ハミル王子」

「ああ」


 彼の名前はハミル・ウェルネス。

 アトワール王国の……第二王子様。

同時刻に新作現代恋愛、異世界恋愛短編を投稿しました。

下記リンクから移動できますので、ぜひぜひ読んでいただけると嬉しいです。


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少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


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