表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~  作者: 日之影ソラ
次女カリナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/50

十一

 我に返ったのは、口を開いた二秒後だった。

 二人の視線がこちらに集まっている。

 驚く二人とは別の意味で、わたしの頭の中は驚きのパニック状態だった。

 

 な、なな……何を口走ってたの!

 わたしぃ!


 心の中で叫ぶ。

 恥ずかしさで顔が強張って動かない。

 逆にそれで目を逸らすことが出来ず、わたしは二人のキョトンとした表情を見つめる。


 そして……


 館長がニヤリと笑った。


「ふぅーん、なるほどね~」

「な、何でもないです!」


 と、後から否定しても手遅れだろう。

 博士は驚いている様子だけど、それ以上は感じていないようだ。

 良くも悪くも鈍感な人だから、博士一人なら誤魔化せたかもしれない。

 でも、館長の表情から何を考えているのか察しが付く。


「カリナ、貴女って何才だったかしら?」

「えっ、えっと……十六歳……です」


 消え入りそうな小さな声で答えると、館長はふむふむと頷き考えている。

 一応あと一か月後には十七歳になる。


「そうか。まぁギリギリだけど有りね」

「あの……」

「ナベリス! 悪いけどさっきのお見合いの話はなしにしましょう!」

「は? 何なんだ急に。そっちから持ち込んだ話だろう?」


 鈍感な博士は、まだ館長の思惑に気付いていない。

 普通に苛立っているのがわかる。

 そんな博士を見て、館長は笑いながら言う。


「ふふふっ、そう言わないで。それよりもっと良い相手を見つけたのよ」

「良い……相手?」


 さすがの博士も、この時点で察したようだ。

 館長が口にするより、僅かに早く博士の視線がわたしに向く。

 そう、館長の言うもっと良い相手とは――


「ここにいるじゃない! 貴方にとって最高のパートナー!」

「え、えぇ!」

「カリナ……」


 わたしが口を滑らせた時点で、こうなる未来は予想できていた。

 ただ、実際にその場面に直面すると、わかっていても動揺を隠せない。

 さっき口にしていたギリギリというのは、年齢差の話だろう。

 この国での成人年齢は十五歳。

 成人していなければ婚約は出来ない決まりとなっている。

 そこはクリアしているのだが、年齢が離れすぎている相手との婚約は、周囲から白い目で見られることが多い。

 気にしない者もいるが、色々と面倒なので互いに気を遣う事柄だ。

 博士は今年で二十五、わたしは十六歳。

 今年で十七になるから、年の差は八歳だ。


 慌てるわたしの肩を、館長がトンと叩いて言う。


「どうかしら?」

「ふむ……」

「ちょ、ちょっと待ってください! わたしはその……」

「あら? 嫌だったかしら?」

「え、いえ別に嫌では……」

「じゃあカリナにその気はあるってことね」


 館長はニコリと笑う。

 あまりに強引な解釈と会話の流れで、わたしは置いてけぼりをくらっていた。

 続けて館長は博士にも問いかける。


「貴方はどう? この子より貴方のことをわかっている人なんていないと思うけど?」

「うん、それは一理あるな」


 博士は研究中と変わらない態度で考えている。

 冷静かつ慎重に、私を下から上に見渡して言う。


「確かに、どこのだれかわからん見合い相手よりも、君のことはよく知っている。僕のことも……まぁ知っている方だろう。それに……」


 と言いながら、博士はわたしをじっと見つめる。

 その時の博士の表情は、懐かしさを感じているように思えた。


「良いだろう。それで見合いを受ける必要もなくなる。僕としてもありがたい話だ」

「じゃあ決まりね」

「ああ」


 淡々と話が進んでいく。

 当人であるわたしは会話に入り込めず、オドオドしながら二人を行動に見る。


 え、えぇ!?

 これって本当に婚約する流れなの?

 わたしと博士が……婚約!


 想像したのは、夢で見た光景だった。

 さらにその先の未来を連想して、勝手に恥ずかしくなって顔を赤くする。

 そんなわたしとは対照的に、博士は落ち着いていた。

 

 館長が博士に言う。


「こういうのは男からよ」

「はぁ……仕方ない。僕だってそれくらいの知識はあるさ」

「そう? じゃあ任せるわ」


 そう言って、館長がわたしから離れる。

 代わりに博士がわたしに歩み寄ってきた。


 そして――


「カリナ」

「……は、はい」


 臆面なく、普段通りの表情で博士はわたしに――


「僕と婚約してくれ」


 プロポーズをした。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ