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聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~  作者: 日之影ソラ
次女カリナ

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25/50

 それはまだ、わたしたち三姉妹がグレンベルの街にきたばかりの頃。

 三人で街を散策している時、ふと目に入った建物。

 それがグレンベル大図書館だった。


「おっきー」

「図書館って書いてあるわね」

「……入ってみても良い?」

「時間はあるし良いわよ」


 三人で中へ入る。

 中は王国の書斎よりも数倍大きかった。

 並べられている本も、見たことのない本が多い。

 

「……凄い」


 出てきた感想はシンプル。

 この瞬間、わたしはグレンベル大図書館で働くと決めた。


 翌々日。

 今度は一人で訪れた。

 本を読みに来たのではなく、司書として働くために来た。

 真っすぐ受付に回って、勇気を出して話しかける。


「あ、あの……すみません」

「はい。本をお探しでしょうか?」

「い、いえ……本ではなくて、その……」


 いざ話しかけてみると、恥ずかしくなって上手く言葉が出ない。

 言いたいことは決まっているのに、どうしても声がどもってしまう。

 受付のお姉さんは首を傾げていた。


「どうされました?」

「す、すみません。何でもないです」


 結局、一回目のチャレンジは失敗してしまった。

 わたしは図書館の奥に行き、人気のなさそうな場所を見つけてため息をもらす。


「はぁ……」


 自分が人と話すのが苦手だと自覚している。

 それでも、多少は慣れたと思っていた。

 聖女として王国で活動して、たくさんの人と交流して、少しはマシになったと。

 だけどそれは勘違いだった。

 あの時、普通に振舞えていたのは、皆が聖女に会いに来ていたから。

 明確な目的があって、向こうから話しかけてくれたからだ。


「結局……自分から話すなんて無理なんだ」


 わたしは自分が情けない。

 アイラのように器用であれば……とか。

 サーシャちゃんみたいに明るい性格なら、こんなにも困ることはなかったのに。

 

「はぁ……どうしよう」


 そう呟いて、わたしは不意に本棚に手を伸ばす。

 すると――


「えっ」


 本棚にするりと手が入り込んでしまった。

 壁にもたれかかるような感じで出した手は、何もない空へ沈んでいく。


「わt、わわ!」

 

 思わぬことで身体が言うことを聞かず、わたしは前に倒れ込み膝をついてしまう。

 その折に上半身が本棚にめり込み、隠し階段を見つけた。


「これ……」


 どうしてこんな場所に階段があるのだろう?

 おそらく魔法の一種で、階段が隠されていることを理解した。

 わたしは何となく、興味本位で階段を下りてみることに。

 そうしてたどり着いたのが、彼のいる研究室だった。


「誰だ?」

「えっ、あの、えっと……」

「ん、見ない顔だな? どうやって入って――っ」


 彼はわたしに気付いて持っていた書類を置いた。

 そのときに指を切ってしまった様子。 

 指から流れる血を見て、わたしの身体は勝手に動く。


「見せてください」

「別にこれくらい平気だが? それより君は」

「いいから見せてください」


 傷を見ると、自分がやらなきゃって思えてしまう。

 聖女としての本能なのか、これまでの習慣が根付いているのか。

 どちらにしろ、わたしは彼の手をとっていた。

 軽い傷でも菌が入れば大事に繋がる。

 それを知っているから、わたしは祈りを捧げて治療した。


「――これは魔法ではない?」


 わたしの祈りを見て、彼は驚きわたしの手を握る。


「へぇ?」

「今のは何だ? 魔法ではないな?」

「え、えっと……わたしは聖女なので」

「聖女? 確か西の国に……詳しく話を聞かせてくれ」


 それからわたしは、ぐいぐい来る彼に押されて、聖女のことを話した。

 これって話しても良かったのかな?

 なんて後になってから思ったけど、全部話し終わっていたからもう遅い。


「なるほどなるほど、実に面白い力だ」

「あの……わたしそろそろ」

「よし決めた! 君、名前は何と言うんだ?」

「え、カリナです」

「カリナ、君は今日から僕の助手として、この研究室で働いてもらう」

「え……えぇ!?」


 思わぬ展開に驚いて、自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。

 研究室?

 助手?

 全然話がわからない。

 わからないけど、断らないと駄目だと思った。


「わ、わたし! この図書館の司書になりたくて」

「ん? あぁ、だったら僕から館長に伝えておこう。司書兼助手として働いてくれるなら問題はない」

「ちょっ……」

「先に言っておくが、君に拒否権はないぞ? ここは本来関係者以外立ち入り禁止だ。国家機密も多数保管されている。許可なく入れば重罪だ」


 えぇ……開いてたのに?

 とか思ったけど、恐ろしくて言葉に出せなかった。

 重罪なんてことを言われたら、もう言い返しようがない。

 ここでわたしが答えるべきは一つ。


「わかりました」

「決まりだな。僕はナベリス。ナベリス・グローマンだ」


 こうして、わたしは博士の助手として働くことになった。

 その後で本当にミーア館長に推薦してもらえて、晴れて司書としても採用された。

 結果的に司書にはなれたし、ある意味では有難かったかもしれない。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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