閑話 「セリオスとジョセフ」
この時をどれほど待ち望んだことか……正直感無量ですとも。
「サモナーさんが行く 第Ⅵ巻」今月二十五日発売です!
いやぁ二年以上待った甲斐がありましたよ! 今から発売が楽しみでめっちゃソワソワしてます!
―――場所はアメリカ合衆国、ホワイトハウス。
地球上で最大の国家を率いる現大統領『ジョセフ・アンダーソン』は部下からの報告を受けていた。
「――それで、セリオス・ウェザーは見つかったのか?」
「はっ、先ほど大使館経由で本人からの連絡がありました。彼は現在日本にいるようです」
「日本? あいつにはイエローストーンの調査を頼んでいたはずだが……」
あいつ、とジョセフはセリオスをそう呼ぶ。
年齢も立場もまるきり違う二人だが彼らは年の離れた友人同士であった。
「その件も含めて、大統領に直接報告したいとのことです」
「そうか……では、セリオスに繋いでくれ」
「了解しました」
部下の男が専用回線を使って連絡を取る間、ジョセフは椅子の背凭れに体重を預けながらほっと息をつく。
セリオスからの定時連絡が途絶えてから既に半日以上、実力や実績から考えても心配はいらないと思ってはいたが、それでも年の離れた弟ように感じている友人の安否が気になるのは仕方の無い事だ。
顔にも態度にも出さないが、仕事中も気が気では無かったジョセフは漸く安心出来ると肩の力を抜いた。
「――大統領、繋がりました」
「そうか、では君は下がってくれ。何かあればまた呼ぶ」
「はっ」
些かぞんざいな態度のジョセフだったが、部下の方はジョセフがセリオスの事を心配してずっと気が気では無かったの知っていた為、思わず苦笑が漏れそうになるのを堪えつつ真面目な顔を作って部屋を出た。
自分が居ては友人同士の気安い会話もし辛いだろうと察し、緊急の者を除いてしばらく大統領の部屋には近づかないよう指示しを出しつつ、今の内に何か飲み物を用意しておこう考えていた。
そんな気の利く部下の事は置いておいて、ジョセフははやる気持ちを抑えつつ受話器を手に取った。
「――セリオスか? 私だ」
『大統領、連絡が遅れて申し訳ありません』
「堅苦しい挨拶も畏まった話し方も不要だ。今部屋には私しかいないからな」
『ああ、判った……済まなかったな、ジョセフ。心配をかけて』
「別に、心配などしておらん。我が国最高の探索者にそんなものは不要だ。そうだろう?」
『クク、ああ。その通りだとも』
口では心配していないと言ってはいるが、本当はジョセフが物凄く心配してくれていた事をセリオスは理解していた。
そんな素直じゃ無い所も含めて、セリオスはこの歳の離れた友人を好ましく思い、年の離れた兄のようにも感じていた。
「んんっ! それで、イエローストーンで何があったんだ?」
『ああ、それは――』
それからしばらく、セリオスはイエローストーンの調査に向かってから今に至るまでの経緯を要点を抑えて手短に説明した。
が、手短にしても尚あまりに重く多い情報量にジョセフは受話器を持つのとは逆の手で顔を覆い天を仰いだ。
「日本の秘密機関にダンジョンを取り込んだ現実改変型の異能者、レッドジョーのペットと来て最後はダンジョンに生み出された女神、か……」
『俄かには信じ難い話だが、事実だ。もっとも、私の頭がおかしくなっていなければの話だが』
「いいや、信じるさ。三年前、世界にダンジョンが現れてから……いや、それよりずっと以前から世界にはおかしなものが溢れていると私は知っていたからな」
『なんだって?』
ジョセフの気になる言葉にセリオスが聞き返す。
だが、ジョセフは今は答える気が無い様で適当にはぐらかした。
「ま、それについては追々な。それより、そのレッドジョーのペットとやらはそんなに凄かったのか?」
『おい、誤魔化されないぞ? 後で絶対に答えて貰うからな。 ……ああ、凄まじかったよ。もし正面から戦ったら私でも危ういと感じたな』
「そうか……」
てっきり先ほどの様に「何を弱音を吐いている、お前は我が国最強の探索者だろうが!」と言った感じの叱咤が帰って来るかと思っていたが、ジョセフは何やら思案気な様子であった。
『どうしたジョセフ、何か気になる事が?』
「気になる、と言うかな……息子だけで無くそのペットまで常識外れとは、本当にどうなっているんだ『アカマツ』の一族は……」
その言葉は、レッドジョーの親の事を知っている上での発言の様だった。
『? ジョセフ、レッドジョーの親について何か知っているのか?』
「知っている、なんてものじゃ無いさ。若い頃にレッドジョーの父親、『ロータス』とは色々あってな。全く持って、あいつには苦労させられたよ。まぁ、今でもそれは変わらんから時々文句の電話を掛けるがな」
『そうだったのか』
意外な繋がりにセリオスは驚いた。まさか大統領とレッドジョーの父親の間に交友関係があるとは。
苦笑交じりの口調に悪感情は感じられない。
腐れ縁の様な物だろうかとセリオスは思ったが、口には出さなかった。
言ったらどうせムキになって否定して来ると思ったからだ。
『興味深い話だな、是非とも聞かせて貰いたい』
「ああ、それも含めてお前が帰って来てからな。酒でも飲みながら話すさ」
『そうか。なら、口の回りが良くなるように日本の酒を土産に買って帰るとしよう』
「そりゃぁ良い! 私のお気に入りの銘柄のリストを送るから、それを買って来てくれ」
『ハハッ、今日一番の声が出たな。了解、楽しみにしていてくれ』
茶化すような口調だが、ジョシュアが気を悪くする事は無い。
二人共酒好きであり、酒の好みが似通っている為お互いが気に入った酒は大概自分の口にも合うと知っているからだ。
だが、ここでジョセフがある事を思い出した。
「――ああ、そうだ。忘れるとこだった。セリオス、一週間ほど帰って来るな。お前が帰って来ると面倒な事になる」
『何だって? 面倒な事とは一体何だ?』
「あー何と言うか……面倒と言うか、お前が居ると話が余計にこじれるから、しばらく国外で大人しくしていて欲しいんだ。心配しなくても、事態の解決には既に『スターズ』を動かしている。ちょっとしたバカンスだと思ってくれればいい」
『いや、話が全く見えてこないんだが? ……まぁ、判ったよ。それなら大人しく日本観光を楽しむさ。けど、うちの社長にはきちんと話を通しておいてくれよ?』
「判っているさ。ところで、来月の娘の誕生日なんだが「大統領! 至急お伝えした事が!!」っ、一体なんだ!?」
ノックも無しに扉を叩き破るような勢いで開けて来た、先ほどいたのとは別の部下に対してジョセフが怒鳴り返す。
ジョセフの怒鳴り声に部下その二が身を竦めるが、別にジョセフは怒っていない。
寧ろジョセフは猛烈に嫌な予感に襲われており、どうかその予感が外れてくれと言う悲痛な思いから出た悲鳴のような怒鳴り声であった。
部下その二は怯えつつも、自分の仕事をきちんと果たす為に報告して来る。
「ほ、報告します。先ほどグランドキャニオンにて強力な魔力震と空間の乱れが検出されました。また、未確認ですがグランドキャニオン上空をドラゴンの様な姿の巨大な生物が旋回していたとの話も上がっています」
それを聞いて、ジョセフは再び天を仰いだ。
何故、こうも次から次へと問題が起きるのかと。
『……大統領、本当に私はしばらく帰らなくて良いのですか?』
「……とりあえず、今すぐでなくて良い。が、予定は早めるかもしれないから準備はしておいてくれ」
『了解』
セリオスとの通話を終了したジョセフは、改めて報告に来た部下から詳しい説明を聞いた。
と同時に、大統領直属のダンジョン探索部隊『スターズ』に対して現在当たっている任務を迅速に片付ける様にと、改めて自分から連絡しようと心に決めた。
『ジョセフ・アンダーソン』
この作品内での現アメリカ大統領。
セリオスとはトップ探索者と大統領と言う立場を超えた友人同士。
お互いにお互いの事を年の離れた兄弟ように感じており、セリオスにはいずれ自分の娘と結婚して欲しいと考えている。
蓮上パパこと睡蓮さんと古くからの友人。
ロータスさんとの交友関係を通じて様々な怪奇事件に巻き込まれた経験があり、その為ダンジョン出現以前からこの世界に古くから存在する超常の存在について知っていた。
クトゥルフ神話TRPGで言うなら、いくつものシナリオをクリアして生き残って来た歴戦の探索者。
神話知識獲得し過ぎてSAN値の上限が下がってそうだが、神話生物よりも色々とおかしい人間と一緒に居た為正気度が下がっていない。(生身の人間がTASしているんだから多少はね?)




