1.一体どうしてこうなったかについて
とりあえず、今この場でフリフリのメイド服を着て、フォークでオレにケーキを「あーん」させようとしている3人を左から順に紹介してみる。
「ほらっ! さっさと口開けなさいって言ってるでしょ! かか、勘違いしないでよね!! こんな服着てるのだって恥ずかしいんだから、さっさと終わらせたいのよ、あたしはっ!」
「イヤだ! お前から『あーん』だなんて、爆発するナメック星に取り残された方がまだマシだ! 断固拒否する!」
「そこまで言う!?」
と、ツンデレ全開のこいつの名前は玖村葵という。
桃色の髪に今はメイド用のカチューシャをかぶり、長い後ろ髪を赤と緑のクロスしたミサンガで強引にまとめて流している。
母がイギリス人らしく、左目だけが青みを帯びている。中二病のお友達、オッドアイというやつだ。
ちなみにオレはこいつのことが大嫌いで、こいつもオレのことが基本的に大嫌い。小学校から続く
犬猿の仲。
……犬猿の仲だからこそ、今、こういう状況になっているというのもあるのだが。
「あの……センパイ、……しゆきの、初めての『あーん』……もらってください」
「しゆきちゃん、響きが卑猥だから! あとお願いだからそれ以上顔近づけないで! センパイ萌え死んじゃう」
「あ……うぅ」
ぼふっと顔が赤くなって、黒髪ショートの頭から煙が上がる。いまさら自分の発言の危うさに気づ
いたのだろうか。
名前は野々宮しゆきちゃん。歳はひとつ下の近所の子だ。
ファンシーな人形を思わせる、かわいらしい顔が火照り、黒縁のメガネがくもっている。抱きしめれば折れてしまいそうな細いなで肩が非常にgood。
と、その時、右横からグイっとオレの唇にケーキが押しつけられた。
「ぶぷっ!? なにするんスか舞浜センパイ!」
「なにって、あなたこそどういうつもりなの!? なんで私のありがたーいケーキをさっさと『あーん』しないか、はなはだ疑問なのですけれど!?」
「いやだから、根本的にオレは甘いものが大嫌いでして……」
「四の五の言わずに食べなさいっ!」
金髪に染め上げたこの人は舞浜姫奈先輩だ。ある意味一番メイド服が似合っている。
モデルのような手足の長い体系に、今現在、オレの胸に押し付けられたやわらかーい感触からも分かるとおり、超高校生級のバストを持っていらっしゃる。
さらにググっとケーキが口の中に侵攻してくる。甘いものはカエルと同じくらい嫌いなのに……。
「ちょっと先輩! 無理やりすぎるでしょう? 真哉が困ってますよ!」
「なに言ってますの葵さん、あなたこそその『あーん』はあまりにも愛がないのではなくて!? そんなのだから〝モテない〟んですよ!?」
「しゆきも忘れないでくださぃぃぃ……!」
さらにさらに、3人がこちらに身を乗り出してくる――そして、背もたれのない椅子に座っていたオレの背筋も、いい加減限界だった。
「どわぁぁ!」
「きゃあああ!」
どんがらがっしゃーんばたーんばたーん。
そんな馬鹿っぽい音をたてながら、理科室の床に転がるオレ+3人の美少女。しかもケーキのクリームべっとり付きの特別コースだ。カメラさん、モザイクいれないとやばいこれ絵的に。
「……城之崎……罪な男だな、お前」
「あんたのせいでしょうがーーーーー!!」
ククク、と笑いを噛みこぼしながら傍らの椅子に足を組んでタバコに興じているこの人は一応先生だ。紫煙とメイド服はミスマッチならぬデスマッチだということを体現している人である。
もともとはこの千夏果帆理科教諭の「食わしたヤツが一等賞」とか馬鹿げた提案から始まったこの不毛な企画。
乗っかってくる3人のやわらかい感触を味わう余裕などなく、単純に重い……。
どうしてこうなった。遠ざかる意識の中、オレは1週間前まで記憶をさかのぼってみた。




