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第24話 気づかれた力

「とりあえずこの二人は王都に連れて行かなければいけないが……」


 面倒そうにリュカオン様が言う。

 そうなるのもわかる。王都からここまで馬車でも何日もかかる。


 ジョンとその伯父だけで帰らせる訳にはいかない。当然見張りが居る。

 そして彼らの罪状を説明すべきものも。適任なのはリュカオン様と私だ。

 ただどちらも何日も辺境を留守にするわけにはいかない。


 少し考えて私はリュカオン様に告げた。

 

「今日は難しいですが明日ならアッく……聖鳥で王都へ護送出来ると思います」

「……聖鳥で? 俺含めて四人もいるぞ」

「体力と気力が満タンで二人が大人しくしているなら大丈夫かと」


 実際少し前にアッくんは私とリュカオン様とリサ先輩を乗せて辺境伯邸まで飛んでいる。

 聖鳥のコンディションと私の魔力があれば多分王都までの片道なら男三人女一人でも行ける筈だ。


「もし四人で無理そうなら手間が二回になりますが一人ずつ運んで行っても良いですし」


 私がそう言うと肩に乗っていたアッくんが抗議で鳴いた。

 恐らくそれは嫌なのだろう。


「一回で済ませたいそうです」

「……わかった。なら今日俺たちを載せて辺境伯邸まで戻るのは行けるか?」


 リュカオン様の問いかけにアッくんは威勢よく鳴く。

 これはそんなの余裕だと言う返事の筈だ。


「大丈夫みたいです」

「助かる、店主この二人は……」

「町の牢に入れておきましょう。彼らが連れて来た荷物持ちたちは如何致しましょうか?」


 店主さんに言われてリュカオン様は悪徳商人をギロリと睨んだ。


「ヒッ、あの者たちは何も知りません、ただの護衛と荷物運びです」

「本当か?」

「はい、今回の件は知る者は少なければ少ない程良いので……」


 商人は焦りながらも下卑た笑みを浮かべ言った。

 どうしてこんな時に笑えるのだろうと不思議に思う。 

 

「つまり最初から罪になるとわかっていてこの町で詐欺を働こうとしていたってことか」

「あっ、それは、その……」


 墓穴を掘って目を泳がせる商人をそれ以上追求する気は無いのか、リュカオン様は溜息を吐いて店主さんに言う。


「荷物持ちたちは自力で戻らせよう。俺たちは明日聖鳥で移動するなら先回りされることもない」

「かしこまりました」

「商談が長引くから先に帰るよう商人に言われたと伝えてくれ」


 それで納得出来ないと言われたら俺を呼べ。

 リュカオン様は店主さんに指示をした。


「こいつらは牢屋に入れておくぞ」

「はい、お願い致します」


 短いやり取りで店主さんは懐から鍵束をリュカオン様に渡す。

 そしてリュカオン様はジョンとその伯父の商人を部屋の外に連行していった。


 町の牢と言っていたが何故宝石店の店長さんが鍵を持っているのだろう。

 私が内心首を傾げていると察したかのように店長さんが笑った。


「この町の牢は店の地下にあるのですよ」

「えっ」

「ここが一番警備が厳重なので」


 そう店長さんはにこやかに言う。

 彼が口にする程警備が厳重とは思えない。

 王都の宝石店のように警備も見当たらなかった。


「子供たちを怖がらせたくないとのことでね、恥ずかしがり屋なんですよ」


 店主が言った途端天井から何かが落ちて来る。

 拾うと可愛い包み紙の飴だった。


「でも仕事はきっちりと致しますので」

「あっ、そうなんですね」


 私は何とも言えない返事を返す。

 リュカオン様とついでにジョンたちがいない空間は静かだった。


 私と店主さんは今日が初顔合わせでろくに会話もしていない。

 一見二人きりに見える部屋で老店主は私を温和そうな顔で見て口を開いた。


「貴方、治癒の加護もお持ちですね?」

「えっ」

「実は先程からね、長年の腰痛が綺麗さっぱり消えまして」

「あっ……」


 まあ気付くかという気持ちと気づかれてしまったという後悔が綯交ぜになった返事を私はしてしまう。 

 自動治癒は自動だから自分で止められない。今までは困っていなかったからそこまで気にしなかったけれど。


「大丈夫、口止めされているのでしょう? 私は申し上げませんよ」


 そう店主さんに言われ私はホッとした。

 けれどそれなのにわざわざ私に教えたということは何か理由があるのだろう。


「あの、どうしてリュカオン様は隠しておいた方がいいと思われるのでしょう」

「そんなもの、この町と辺境伯側で聖女様の奪い合いになるからですよ」


 あっさりと言われぎょっとする。

 

「でもね、辺境伯側が必ず勝ちます。権力もですが……治癒も浄化もより必要としているのは当然向うだ」


 しかし町側は逆恨みする者も出るでしょう。淡々と老店主は言った。


「仲の良かった者たちが一つを奪い合い険悪になる。そんなの幾らでも見てきました」


 きっとリュカオン様はこの町の住民とそのような関係になりたくないのでしょうな。

 店主の言葉に私は頷く。


 この町は嫌いでは無いがそういうことなら必要以上には訪れない方が良いのだろう。

 そう改めて思った。


(力のコントロールを別な意味で学ばなくてはいけないのかもしれない)


 今までは治癒の力を止める必要も抑える必要も無かった。

 けれどこれから治癒の聖女として派遣される度に似たようなことは起こるかもしれない。


(大聖女様なら、治癒力を一時的に止める方法がわかるかしら)


 明日王都に二人を護送するが、その時は教会の大きな庭に降りる予定だ。

 教会には屈強な修道士も腕の立つ聖女もいるし護送も楽だろう。


 今回の詐欺の報告ついでに相談してみるのもいいかもしれない。私はそう思った。


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