22.魔獣討伐実習1
秋になると学院では魔獣討伐実習と称して、森に行ってテントを張って1晩過ごす実習が行われる。魔獣は居れば狩るが居なければ何もしなくていい。
当日は護衛のため騎士団も派遣されるし冒険者も雇われる。1年生は森の浅いところ、2年生はもう少し入ったところ、3年生はその奥というように学年が上がるに従って森の中に入って野営することになる。
野営用のテントや食材は持参して持っていくことになっている。ティナはマジックバッグを買ったがあまり目立ちたくなかったので、これは秘密にしてテントや食材は背中に担いで持っていった。工房で鍛えているせいかこれらの荷物が軽く感じられた。他の生徒を見ると、男子は余裕でこれらの荷物を担いでいたが、女子はしんどそうである。
ジェフを見るとジェフもしんどそうに荷物を持っている。
「ジェフ、少し荷物、持ってあげようか」
「いらない、俺の荷物は俺が担ぐ。ティナにはティナの荷物があるだろう。なんでそんなに余裕があるのだ」
「分からない、いつも工房でハンマーを振っているせいか、力が付いたみたいで、荷物があまり重く感じられない」
「そうだな、工房の仕事はきついもんな。俺にはまねできない」
「ねえジェフ、私たち食事の準備は一緒にしない。ジェフが鍋に水を張ってくれたら私が温めるから」
「そうだな、そうすると水を汲みに行かなくてもいいし、薪を拾いに行かなくてもいい。一緒にするか」
ティナとジェフはテントを並んで張って、テントの前で、料理を始めた。石で竈を作ると、カバンから大きな鍋を出して、その上に置いた。するとジェフが水を出してくれた。ティナが火魔法で鍋の水を温めると、その中に持ってきた食材を入れた。
しばらくするといい匂いがしてきた。クラスのみんなはやっと薪拾いから戻ってきたところぐらいだった。
「早いな、確かにジェフの水魔法だと水を汲みに行かなくてもいいし、ティナの火魔法だと薪を拾いに行かなくてもいい、最強の組み合わせだな」
こう言ってもらうとすごくうれしい。
その後、ジェフはみんなに請われて他のみんなの鍋にも水を出していた。私も火魔法でみんなの鍋の水を温めてあげた。薪は夜の見張りの際に使うことになった。私たちは薪を拾ってきていないので、私が火魔法で温めた分みんなの拾ってきた薪を分けてもらった。
「今日はジェフと一緒だね」
「そうだね」
「なんか幼いころに戻ったみたい。よく花時計の公園で遊んだね」
「そうだね、そう言えば小さい時はよくティナは俺の家に泊まりに来たな」
「なつかしいね」
2人で過ごしていたらルナとレムがやって来た。「お邪魔虫が来なくていいのに」と思ったが、どうも彼女たちはそそのまま居座るようだ。
「何話していたの」
「昔のことだよ。俺とティナは幼馴染なんだ」
「そうなの、ジェフは商会の息子だよね、私の商会にも来たことあったよね」
「そうだな、レムの商会に父親に連れられて俺も行ったことがあったな」
「そうね、だから私たちも幼馴染ね」
どうも、レムは無理やりジェフの幼馴染になりたいようだ。ここは負けるわけにはいかない。
「私たちはいつも一緒に花時計の公園でおままごとをして遊んだのよ。ジェフが夫役で私が妻役、ジェフは私の作る料理がうまいと言っていつも褒めてくれたわよ」
「それ遊びでしょ」
軽くいなされた。
なんかイライラ来る。何とかしないと、でも話はルナやレムの方がうまい。特に商売の話になると私はついていけない。
夜が更けてきたのでもう寝るようにとの指示を受け、ルナとレムは自分のテントに戻っていった。
「ジェフのバカ。ルナとレムぐらい追い返せばいいのに」
「そんなわけにはいかないよ、ルナとレムはうちの大事な取引相手、喧嘩するわけにはいかないよ」
その夜は不貞腐れて寝た。誰にでも愛想のいいジェフが不満だった。




