16.魔術の授業
次の日は午前中が必須科目、午後が実技、今日は魔術だった。魔術は私も得意です。アデーレさんに学院入学に向けて勉強を教わっているときも「私は魔術だけでも合格するだろう」と言われていました。
魔術の先生はエメさん、この学院の卒業生とのこと。学院を卒業後王宮魔法士をしていたとのこと、結婚はしていないらしい。そのあたりは言わないのでよくわかりません。横でクラスの女子がしゃべっているのが聞こえました。
貴族の女子はそのあたりの情報には敏感らしい。ひょっとすると学院の教師は誰が独身で、だれが既婚者がすべて把握しているかもしれません。
「今日は皆さんの実力が知りたいので、順番に自分の得意な魔法を的に向けて放ってください」
こう言われて、順番に魔法を放っていった。たいていは的に当たって終わり。そんな感じ。魔術は男子も女子も大差ないように見えました。
貴族が終わると私たち平民、このあたりはいくら学院では貴族と平民は平等と言われても、貴族を前にすると気後れする。
ジェフが魔法を放った。入学試験の時と同じ、的に当たって終わり。私の順番になった。実力を示してもいいけれど、そんな事をして貴族に睨まれても困る。ほかの生徒と同じ、的に当てて終わりにした。込める魔力を少なくすれば私も弱い魔法が放てる。
みんなが魔法を放ち終わると
「皆さんの実力は、だいたい同じ、的に当てる程度ですね。しかし、これでは実際には役に立ちません。的を破壊できる程度にならないと、魔獣を相手にしたときや、盗賊に襲われたときなどは役に立ちません。
これからは私と一緒に強い魔法が放てるように練習しましょう。それともう1つ大事なことがあります。それは早く魔法を放つことです。
詠唱すれば強い魔法が放てますが、斉唱しているときに攻撃されるとやられてしまいます。とにかく魔獣の動きは早いです。詠唱している間に襲ってきます。だから、弱くても無詠唱の方か効果的な場合もあります。
これからは皆さんも無詠唱で魔法を放つ練習もしましょう。
先ほど皆さんに魔法を見せてもらいましたが、無詠唱で魔法を放っていたのは、ティナさんだけでした。ティナさんもう1度魔法を放ってくれますか」
目立たないはずが目立ってしまった。仕方がないので、前に出て、もう1度魔法を放った。一瞬で魔法が的に届く。
すると先生が、
「これくらいだと魔獣が襲ってきたときに、とっさに魔法を放つこともできます。それではこれから皆さん、もう1度、今度は詠唱せずに魔法を放ってください」
再度、生徒が順番に魔法を放った。威力が半減している。的まで届く生徒はまれです。その後先生は幾つもの的を並べて、生徒に無詠唱で魔法を放つ練習をさせた。これで今日の授業は終わりでした。
授業終了後私はクラスのみんなに
「ティナさんすごい、どうやったら無詠唱で魔法が放てるの」
と聞かれたので、
「私の家は鍛冶師なので、父の手伝いで工房にいるときは、鉄の温度が冷えてくると、その場で火魔法を行使して鉄の温度を保つ必要があるので、詠唱している時間などありません。そうやっているうちにできたので何故と言われてもよくわかりません」
と答えた。
たいていのクラスメイトには好意的に受け取られたようですが、一部生徒には「平民のくせに」といった悪意を感じるときもありました。このまま貴族に睨まれたらどうしようと思いました。
ジェフにそんな話をすると
「そんな事はないと思うよ。みんなティナのことがうらやましいだけだよ」
と言われました。なんかジェフが真剣でないのが寂しかった。
学院の帰りに、花時計のところによって、
「花時計さん、今日わたし授業で魔術を行使したんだけど、なんかクラスの一部の人間にねたまれたみたいなのですが、どうか問題が起きませんように」
と祈った。
花時計に気持ちをぶつけたら、気持ちが楽になった。いつもの自分に戻れたような気がした。




