第40話:ポテト・コアの暴走と、カロリー・オフの決戦
「……熱い。いや、この空気の乾燥はなんだ。世界が丸ごと『巨大なフライヤー』の中にいるみたいだぞ」
カズキは額の汗を拭い、作業着の胸元を大きくはだけさせた。引き締まった腹筋と、無駄のない筋肉質の体躯が、ポテチ化が進む高熱の乾燥地帯で赤く火照っている。
一行の目の前に広がるのは、かつての美しい草原ではなく、無限に続く黄金色の「ポテチの荒野」だった。空にはジャガイモ型の太陽が輝き、地平線の彼方、世界のシステム中枢である【ポテト・コア】が、天を衝く巨大なポテチの塔としてそびえ立っている。
「師匠、見てください! あそこがアイリスさんの『胃袋』……いえ、システムのメインサーバーですね!」
アリスが杖を構えるが、彼女の魔力も乾燥した空気のせいで「パサパサ」と霧散してしまう。
「カズキ殿、足元に気をつけてください。この地面、少しでも重心を崩すとサクサクと崩れ落ちます!」
クレアがカズキの腕を取り、自身の鎧の重量を支えに彼をエスコートする。
「……アイリス、あそこにパッチを当てれば、お前の『孤独な食事』は終わるんだな?」
カズキの問いに、遠隔投影されたアイリスのホログラムが悲しげに頷いた。
「……ええ。でも無理よ、カズキ。コアの周囲は今、『無限増殖』のアルゴリズムが暴走してる。近づくだけで、あんたたちの装備も『うすしお味』のデータに分解されるわ!」
「増殖のアルゴリズムか……。要するに、処理しきれないデータの蓄積(脂肪)だな。なら、エンジニアとしての解決策は一つだ」
カズキは「アリス・クレア・融合レンチ」を高く掲げ、ルーターの出力を最大にした。
「世界全体の『カロリー・オフ(負荷削減)』を敢行する! アリス、魔力で周囲の水分を強制凝縮しろ! クレア、その水分を闘気で蒸気圧に変えて、コアの『油分』を根こそぎ洗い流すんだ! 『スチーム・デバッグ』を開始するぞ!」
カズキの指示に従い、アリスが涙ぐみながら極大の冷却魔法を放つ。クレアがそれを自らの熱量で爆発させ、巨大な高圧洗浄の霧がポテト・コアを包み込んだ。
「うおおお! 回れ、トルクレンチ! 物理演算のムダを削ぎ落とせ!」
カズキの幸運が、ここで「熱力学の奇跡」を起こす。 高圧蒸気がポテチの壁を透過した瞬間、コアの内部で『真空凍結乾燥』の逆反応が発生。世界を埋め尽くしていた重いポテチのデータが、一瞬で「軽量なコード」へと変換され、空へと溶けていく。
「……嘘。システムの負荷が、みるみるうちに下がっていく……。カズキ、あんた……本当に世界の『ダイエット』に成功したのね……!」
アイリスの声が震える。だが、コアの最深部からは、最後に残った強固な「孤独のバグ」が、黒い焦げカスのような姿で実体化しようとしていた。
「(……まだだ。アイリスの『寂しさ』という名の、最も硬い焦げ(バグ)が残ってる。……これを剥がさない限り、デバッグは終わらない!)」
カズキはレンチを握り直し、細身の体で最大出力の突進を開始した。
それにしても、アイリスの前の管理者はなぜポテチにしたのだろうか…
それは、とある記憶がなくなっていく異世界に転生したとある人間の話になるので、ここでは語られないが、、、、記憶に残したい単純なお菓子だったのだろう。




