表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/45

第41話:孤独な管理者と、温かいパッチ

「ふぅ……ふぅ……!」


カズキは、蒸気で白煙が立ち込めるポテト・コアの最深部へと到達した。そこは、世界中のポテチデータが凝縮された、巨大な『黄金の焦げカス』が渦巻く空間だった。 その中心に、アイリスの姿が浮かび上がっている。だが、彼女はホログラムではなく、悲しげな瞳を持つ実体だった。


「来るな、カズキ! これ以上近づけば、あんたもポテチのデータに還元されて、私が食べちゃうしかないのよ!」


アイリスの周囲からは、無数の『焦げ付いたポテチ』がミサイルのように飛来する。それは、彼女がこれまでに「一人で処理しきれなかった孤独」の具現化だった。


「……それが、お前の言う『一人で大丈夫』か? 見ろよ、処理しきれなかったゴミデータ(孤独)が、こんなにも世界を汚してるじゃないか!」


カズキは、アリスとクレアの魔力と闘気を纏った融合レンチを構えた。

「一人で食べる飯は、味気ないだろ! 誰にも迷惑をかけないなんて、この世界で一番の『非効率なバグ』だ! みんなで協力すれば、ゴミデータなんていくらでも消去できるんだぞ!」


「そんなこと……っ!」


アイリスが反論しようとしたその時、カズキは一気に距離を詰め、融合レンチを焦げカスの中枢へと叩き込んだ。


ゴォォォォォォォォォォォォォォン!!


「——パッチ適用デプロイ!!」


レンチが発する光が、焦げカスを瞬く間に分解していく。それは、物理的な破壊ではなく、孤独なバグを「共有可能な喜び」というデータへと書き換える、『愛の再定義プログラム』だった。


「っ……これは……! 私の、心の……データが……っ!」


焦げカスが光の粒子となって砕け散る中、アイリスの全身からも黒いノイズが剥がれていく。

「私は一人で十分だった……。カズキがいなくなっても……っ!」


「違うだろ、アイリス」


カズキは、目の前で揺らめくアイリスの手を取り、そっと握った。

「お前は、本当は『誰かと一緒に食べる』にしたかったんだろ? 世界のデータは、一人で抱え込むもんじゃない。みんなで共有して、みんなで笑い合えば、どんなバグだって乗り越えられる」


カズキの言葉が、アイリスの心に温かいパッチを適用した。 彼女の顔から、管理者の冷たさが消え、一人の少女としての温かい表情が戻る。


「カズキ……」


アイリスの体から、最後の孤独のバグが剥がれ落ちた瞬間、ポテト・コアはまばゆい光に包まれ、世界全体に「再起動リブート」の信号が送られた。


「(……オールグリーン。システムの根本的なバグを解消。これでもう、この世界がポテチになることはない。……多分)」


カズキは安堵の息を吐いた。 コアから脱出すると、外の世界は、元の美しい草原へと戻っていた。空には澄んだ青が広がり、爽やかな風が吹いている。


「やった! 世界が元に戻った!」

アリスが歓声を上げる。

「カズキ殿、さすがです! あなたこそ、この世界の真の『メンテナー』です!」

クレアも目を輝かせる。


その中で、アイリスだけは、まだ少し恥ずかしそうに目を伏せていた。

「……カズキ。あのさ……。もう、ポテチの無限増殖バグは起こさない。だから……時々でいいから、あんたの持ってるポテチ、私にも一口ちょうだい?」


それは、管理者アイリスが初めて見せた「共有」という名の人間らしい願いだった。


「当たり前だろ。……寂しい時は、いつでも言え。そしたら、お前が飽きるまで、僕がポテチを食べてやるよ。僕、細身だけど意外と大食いなんだぞ」


―――ガタ!!

その時二人の少女が無表情で立ち上がったと同時に

カズキの言葉に、アイリスは満面の笑みを浮かべた。 世界の危機は去った。アイリスの孤独な戦いも、これで終わりだ。


だが、ルーターの画面には、まだ一つのメッセージが残されていた。 『——通信確立。異世界からの着信あり』


それは、カズキが元の世界へ帰るための、最後の扉。 しかし、その扉の向こうには、彼がこの世界で見つけた「大切な居場所」が、彼を待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ