第63話 不審者よりも、戻る時は完璧にして戻らなければ(グルル視点)
『さて、どんな奴が来るか。ゴンおじさんとやらではなく、敵だったのならば、サッサと倒し、リアたちのところへ戻りたいが。俺でどれだけ対応できるか』
リアたちには、俺は負けないと言った、もちろんそれは嘘ではない。俺が負けるはずがないからな。だが……、リアたちに伝えた以上に、ここへ向かっている奴は強い。深めの怪我の1つや2つするだろう。
それをリアたちには見られないように、回復してから戻らなければ。もしもそのまま戻れば、リアに泣かれてしまう。以前洞窟で、怪我をしたまま戻ったら、どうしたの? 何ですぐに治さないんだと、かなり泣かれてしまった。
しかも自滅したと言えば、それこそさっさと治さないとダメだろうと、そのあと少し口を聞いてもらえなくなってしまったし。
そのため、それまでは、いつも寝床に戻ってから、ゆっくり怪我を治していたのだが。何かあった時は怪我を治し、体を綺麗にしてから戻るようにしたんだ。
モルーは、まぁ、怪我をして戻っても、動けるなら大丈夫だろうと、あまり気にしないが。いつだったか、俺にしてはかなりの怪我を負った時があったのだが。その時など、さすがに心配してくれるかと思いきや、怪我を見た瞬間ひと言。
『もう少し訓練した方が良いんだじょ』
と、心配されるのではなく、そう言われたからな。しかも自分と訓練した方が良いと、何故かモルーの訓練に付き合わされ、シエラとマーゴに笑われる羽目に……。
だからもしも怪我をしたまま戻れば、今度洞窟に帰った時になんと言われるか。絶対に怪我を見せるわけにはいかない。
「どう? まだ近づいてくる?」
『ああ。今までよりは、少々遅くなったが』
「そう、でも止まってはくれないのね」
『いいか、どうしてもというから、連れて来たんだ。自分の身は自分で守れよ。まぁ、お前の力ならば、そう簡単にどうにかなるとは思っていないが』
「分かっているわ。その約束で連れて来てもらったのだから。もしも、その誰かと交渉することになったら、私もいた方が良いかもしれないでしょう? それが、シー君とクー君が言っていた、ゴンおじさんなら尚更ね」
俺の背には今、オリヴィアが乗っている。俺は最初、もちろん俺だけで確認をしに行くつもりでいた。
俺に何かあった時、もしもジェイコブやオリヴィアたちまで共に来ていて、やられてしまったら? リアとモルーに悲しい思いはさせたくなかったからな。
それと、もしものことがあって、リアとモルーが洞窟へ帰りたいと言えば、洞窟まで送って行く者が必要になる。
一応今のところ、信用できる人間はジェイコブたちだけだ。そうなれば、なるべくジェイコブたちには生きていてもらわなければ。
しかし、行く直前、オリヴィアが連れて行けと言ってきたのだ。もしもゴンおじさんとやらだった場合、保護のことをきちんと説明したいのと。今のシーとクーの状況も、人間としてしっかり説明したいと言ってな。そして、これは私の、人間の義務だと譲らず。
その言い争いをしているうちに、例の不審者がどんどん近づいて来てしまい、結局俺が折れることになってしまったんだ。
まぁ、ジェイコブが付いてくるよりも、オリヴィアがついてくる方が、奴には対抗できるだろうが。なにしろオリヴィアの戦闘能力は、その辺の人間と違うからな。そう簡単にやられるとは思えない。
まったく、人間というのは、こうも引き下がらない生き物なのか。だが、連れて来てしまった以上、いまさら途中で降ろしたりはしない。まぁ、ゴンおじさんではなかった場合、どんどん攻撃してもらおう。
さて、あとは、その問題の不審者だが。
『はぁ、そのゴンおじさんの特徴があれではない。確認するところから大変だ。どうせ向こうも、俺たちの気配に気づいているだろうからな。そのまま攻撃されるかもしれん』
「茶色い目に、大きさは2メートル以上だけれど、小さくもなれるのよね。そして魔法も物理的に攻撃も得意と」
『それ以外が、ボスッでブワンで、ヒューンでポスッ。バキッでズンッで、モジャモジャでブワッだからな。何の役にも立たん』
「あれには、さすがに私も笑ってしまったわ。きっと何を聞いても、音で返ってくるんでしょうね。それでも一生懸命考えてくれたのよ。これもちゃんとした情報よ」
『あれがか。どこをどう聞けば、あれが情報になるんだ』
「きっと見れば分かるはずよ!!」
『はぁ。……止まるぞ』
俺は木が多く生えている場所で止まり、様子を見ることにした。この様子だと、あと数分で、奴はここまでくるだろう。
「あとどれくらい?」
『数分だろう。隠れても意味はないだろうが、一応な。戦うことになったら邪魔になるかもしれんが』
「大丈夫よ。その時は私が一瞬で、この辺の木を吹き飛ばすから。そしてあとで木を植えれば良いわ。そのままにしたら魔獣達が困るでしょうからね」
『吹き飛ばす?』
「ええ。ここからあそこくらいまでなら、1度か2度の攻撃で……」
『……ああ、そうか。その時は頼むな。……やはりおかしいだろう』
攻撃の範囲がおかしい……。 俺の攻撃とまではいかないが、どう考えても攻撃の範囲が広ずぎる。
「え? 何か言ったかしら? 風の音で聞こえなくて」
『いいや、何も』
……オリヴィアだけでも大丈夫なのでは?
はぁ、さて、どんな者がやってくるか。できる限り早く確認をし、やることになったら、ささっと終わらせたいものだ。
リア、モルー、待っていろ。俺はなるべく早く戻るからな。




