第61話 グルルが手こずる強者? 街へ向かってくる謎の気配
『かなりの力を持っている者が、この街の方へと向かって来ている。しかもかなりの速さでだ』
「かなりのちから?」
『ああ、そうだ。戦えば、俺でも手こずるだろうくらいにな』
え? そんなに!? だってグルルは洞窟で、かなりの力の持ち主だったんだよ? 1番はアースで次がマーゴおばあちゃん、その次がシエラかグルルかって感じ。
それだけ強いグルルが、手こずるかもしれないって。どれだけ強い相手が、街へ向かって来ているのよ。
『だからまず、お前たちを避難させることにした。俺はお前たちが避難したのを見届けたら、そいつを確認しに行くつもりだ』
『危ないんだじょ。グルル、1人で大丈夫なんだじょ? 一緒に避難した方が良いんだじょ!』
『それでもし、避難した方に来られたら、それはそれで大変だろう。それに手こずるとは言ったが、別に負けるとは言っていない。もしも戦うことになれば、勝つのは俺だから心配するな』
心配するなって、無理でしょう。今の話の中に、心配しなくて良い話が1つでもあった?
『それに、どうしても、確認は必要だからな』
「なんの、かくにん?」
『奴がやってきた方角がな、シーとクーに関係あるんだ。シー、クー、お前たちにもう1度確認するぞ。お前たちは、ここからちょっと見える、あの森から来たのだな? 間違いないな?』
『うん、僕たち、あの森から来たよ』
『あの森と、街の周りを行ったり来たり。時々街にも入って、それで今日は隠れてた』
『そうか。そしてあの森に、お前たちがゴンおじさんと呼ぶ、強い魔獣がいるんだな』
『うん!!』
『とっても強いゴンおじさん!!』
『バキッでズンッで、モジャモジャでブワッ!!』
『ボスッでブワンで、ヒューンでポスッ!!』
だから分からんって。
「こちらへ向かって来ている者の気配は、お前たちが来たという森の方から現れたのだ」
え?
『お前たちを心配して、ゴンおじさんがここへ来るかもしれないと、お前たちに言われたからな、俺たちはゴンおじさんについて調べていたが。もしかすると、そのゴンおじさんとやらが、やってきた可能性がある』
『ゴンおじさん!!』
『来た!!』
やっぱり!! ゴンおじさんはみんなを守ってくれる、とっても強いおじさんだって言ってたし。それに帰って来なかったら、探しにくるとも言っていたんだもんね。ただ……。
まだ、ゴンおじさんだと決まったわけじゃないから、なんとも言えないけど。それでも、もし本当にゴンおじさんだったら、戦えばグルルが手こずるほど強い相手かもしれないなんて。そこまでゴンおじさんが強いとは、思っていなかったよ。
『それでだ、お前たちに、ゴンおじさんの特徴をもう1度聞こうと思ったんだが……。今の答えが返ってくるということは、これ以上聞いても無理そうだな』
ああ。今、グルルが聞く前にシー君とクー君は、バキッでズンッで、モジャモジャでブワッ!! ボスッでブワンで、ヒューンでポスッ!! って言ったもんね。
『はぁ、仕方がない。お前たちの名前を出せば、本当にゴンおじさんならば止まるか。違った場合は、そのまま戦うことになるだろうが。ゴンおじさんとやらでも、俺の話を聞かずに、戦いを挑まれる可能性もあるからな。どちらにしろ、気を引き締めなければ』
『クー君……』
『シー君……』
シー君とクー君が、何かこそこそ話を始める。
モルーは何度も、グルルに本当に大丈夫なのか聞いて、それからパンを食べて行った方が元気が出るかもと、私にパンを出せって言ってきて。
そんな中、すぐに内緒の話を終わらせたシー君とクー君が、グルルに話しかけたよ。
『ねぇねぇ、おじさん』
『おじさんではない』
いや、今、それどころじゃないでしょう。グルルが戦うって聞いて、こっちはドキドキしてるのに。
『おじさんだよ。あのね、ぼくたちが行けば良いんじゃないかな。えと、おじさんと一緒に』
『何だと?』
『だって、おじさん強いんでしょう? それで、もしかしたら戦うかもしれないんでしょう? だったら僕たち、その時はサッと逃げて隠れるから、さっさとやっつけちゃってよ』
『ゴンおじさんの時は、ぼくたちが戦わないでって言えば、ゴンおじさんは戦わないでくれるはず』
『そうしたら、グルルが戦うのが減るでしょう?』
『それでぼくたちも、ゆっくりゴンおじさんとお話しできるでしょう?』
『はぁ、お前たちなぁ。そんな危険なことを、させるわけがないだろう。お前たちはリアとモルーと一緒に避難するんだ。俺がしっかりと結界も張ってやる。だから大人しく避難していろ』
『えー』
『でもさぁ』
『えー、でも、でもさぁ、でもない。危険な場所へ、小さな者たちを連れて行くわけがないだろう』
『絶対、僕たちが行った方が良いのに』
『そうだよ、ぼくたちが行った方が良いのに』
いやいや、ダメだからね。確かに、ゴンおじさんが分かるのはシー君とクー君だけだし。本当のゴンおじさんなら、シー君とクー君が止めてくれたら、グルルが戦う可能性はぐんと減るわけだけど。
でも、他の誰かだった場合は? それで戦闘になって、シー君とクー君に何かあったら大変でしょう。真っ先に狙われて、もしかしたら……ってこともあるんだよ。
それにグルルは、私やモルーをいつも守ってくれて、ゴンおじさんみたいに、弱い子魔獣たちや他の魔獣たちを守ってくれる、優しい魔獣なんだから。そんなこと、絶対に許さないよ。
『少しは特徴を聞いているからな。その特徴を確認して、様子も見て対応する。ケリー、ライラ、避難する場所はあの部屋だな』
「はい」
『準備は?』
「全て整いました。すぐにでも移動できます」
『それじゃあ、とりあえず移動しよう。行くぞ!』
こうして私たちは、シー君とクー君が文句を言い続ける中、避難場所へと移動したんだ。




