第22話 まさかの出会いと、衝撃の真実(ジェイコブ視点)
「それで、本当のところはどうなんだ。ここには俺たちしかいないんだ。お前が分かっている限りのことを教えてくれ」
俺はオリヴィアとルーシャン、テオドールにローザだけを残し、他の者たちには空間から出てもらうと、すぐに話を始めた。
「はぁ、本当に驚いたわ。まさかここに小さな子がいるなんて。あなたたちが保護してくれて。本当に良かったわよ」
『俺たちも突然のことだったが、最初から、ヒトミがここに現れた瞬間から、ヒトミに害がないことは分かっていたからな。すぐに保護しようと思ったんだ。が、俺のお腹の音で、脅かしてしまってな。あの時は悪いことをした』
「お前の腹の音は相変わらずか」
『気配を消す時には、さすがに音を抑えるんだが、ヒトミが考えていたよりも小さな人間だったから驚いてな。それに良い匂いがして、思わずお腹を鳴らせてしまった』
「腹の音を自由に抑えることができるのも、おかしいんだがな。それで、ヒトミをここに送った人間を、本当に見ていないんだな」
まったく、この森へ来てから、驚くことばかりが起きていたが、まさかこんな森の中心の洞窟に、幼児がいるとは思わなかった。しかも、保護者と思われる者のせいで、突然ここへ送られて来たなどと、どれだけ怖い思いをしたか。
しかし、グルルたちが気づいて保護してくれたのは、本当に運が良かった。彼らとは長い付き合いだが、彼らほどこの森で、この洞窟で、ゆっくり話ができ、俺たち人間のことを理解してくれている魔獣たちはいないだろう。
これは人間がしでかしたこと。このあとは俺が責任を持ち、ヒトミのことをしっかり保護しようと思っている。
だが、ヒトミのことがあったにせよ、森が静かなことと、ヒトミが関係あるとは思えない。これから詳しくヒトミのことを聞くが、これについてもしっかりと聞かなければ。
『ああ、誰も見ていないし、ヒトミ以外の気配を感じることもなかった。シエラと、タガットも同じだからな。まず間違いないだろう』
「そうか。それでヒトミはそのことについて、ここへは魔法で送られてきたと言ったんだな」
『そうだ。間違えて送られてきたと言っていたぞ。よくミスをするとも言っていたな。ミスが多すぎてダメなおじさんだと。が、別に悪い人じゃないとも言っていた』
「人を別の場所へ送ることができる魔法など、聞いたことがないな。皆はどうだ?」
俺の問いに、全員が首を振る。
「そんな魔法があれば、国家級の魔法で、今頃研究の対象よ」
「だな。それに、国から新しい魔法だと発表されれば、今頃世間は大騒ぎだ」
「ヒトミの家族は、そのおじさんだけなんだな」
『ああ、かなり前に死んだらしい』
「そうか。ならばヒトミにもう少し詳しく話を聞き、なるべくそのおじさんとやらを探して、今回のことの責任を問いたいところだな。それに、おじさんというのも、本当のおじさんなのか、怪しいところだ」
「そうね。あんなに小さな子を危険な目に合わせるなんて、ちゃんと責任は取らせないと」
と、話をしている時だった。グルルとシエラが急に神妙な面持ちになり、そして何か言いたげな様子で、俺たちを見てきた。
何だ? グルルたちがこんな様子を見せるのは、初めてじゃないか? オリヴィアが洞窟でやらかしてしまい、どう処理をするか、皆で頭を抱えていた時でさえ、こんな雰囲気にはならなかった。
「……あなた」
そんなグルルたちの様子に気づいたのは、俺だけではなかった。オリヴィアも、ルーシャンも目で俺に、グルルたちの様子がおかしいと伝えてきたため。俺は小さく頷くと、グルルたちに話しかける。
「どうした? 何か話したいことがあるのか? やはりヒトミのおじさんとやらのことで、問題が?」
『いや、なんだ。問題というかな。ヒトミの話は半分は本当で、半分はおそらく、本当のことを話していないだろう。というか、話せないんだろう』
「半分本当? 半分は嘘だということか?」
急に何を言い出すのかと、思わず顔を顰めてしまう。今までの話は、なんだったのかと。
『いや、今言っただろう。話せないんだと』
「話さないのではなく、話せない?」
『ああ』
「どういうことだ? ヒトミは、そのおじさんとやらに脅されていて、本当のことを話せないということか? やはり早く、そのおじさんとやらを探し出し……」
『そうじゃない』
俺の話に、食い気味に返してきたグルル。まったく、一体何なんだ。
『……おそらくだが、そのおじさんとやらを探すのは、ほとんど不可能だろう。そして、その男は本当のおじさんではなく、ヒトミには自分の正体について明かさないようにと、そう言っている可能性が高い』
「……どういうことだ」
『力のある者たちは、それを感じていたのだが……おそらくヒトミは『神の愛し子』だろう。そして、ヒトミをここへ送り届けるのに失敗したのは、神だろうな』
「はっ!? 神の愛し子だと!!」
「おいおい、本当かよ」
「あんなに小さな子が……」
まさか、ヒトミが神の愛し子だと?
神の愛し子とは、神に選ばれた特別な存在で、神から特別な加護と愛情を受けて生まれた者のことだ。普通の人間よりも強い力や不思議な運命を持ち、その存在自体が奇跡とされている。
そのため、もし神の愛し子が現れたと分かれば、悪用しようとする者たちから守るため、国はすぐに保護に動く。世界にとって大きな祝福であり、同時に、神の愛し子を守ることは、大きな責務でもあるのだ。
そんな特別な存在が、ヒトミだと言うのか!? あんなに幼き者が……。
何年かに1度、時には数100年に1度現れる神の愛し子は、成人女性であることが多い。多いというか、こんなに幼い神の愛し子が、これまでに現れたことがあっただろうか。本当にヒトミが神の愛し子ならば、初めてのこととなり、かなりの騒ぎになる可能性が高い。
『だから俺たちは、お前たちのことを待っていた。お前たちにヒトミを託すのが最善だと思ったからな』
「ああ、ああ、本当に助かった。まさか神の愛し子だとは。お前たちが言うのだから、間違いないだろう。だが、街へ戻ったら、一応しっり調べなければ」
『ただな……。神の愛し子だと分かれば、ヒトミの自由はなくなるのか? そんな話しを前に聞いたことがあったのだが』
『もし、それが本当なら、私たちはヒトミを、あまりあなたたちの元へやりたくないのよ』
「あ、ああ、自由か。そうだな、基本は神の愛し子の望み通りになると思うが。何かあるのか?」
どうにも衝撃が大きすぎて、話しに集中できない。が、次のグルルたちの話でまた少々頭を抱えることになってしまった。
『実はな……』




