第20話 ついに森へ人間がやってきた!!
その日は洞窟も森も、早朝から大騒ぎだった。何で大騒ぎになったのかって? それは、ついに森へ人間がやってきたからだよ。
私とモルーが起きるのは、いつも太陽が登ってから数時間後くらいなんだけど。まだまだ寝ている時間だったのに、魔獣たちの大きな鳴き声で鳴き始めてね。
ただ、騒ぎが気になって起きたっていうよりも、前日にちょっと夜更かししたもんで、眠いのに煩いなぁ、何なの? と。イライラしながら起きた私。
それで、側にいてくれたシエラに聞いたら、森の入り口に人間が来たって教えてもらって、それを聞いて、私も一気に目が覚めたよね。
最初に森の入り口で人間を待っていた魔獣たちが、人間が来たと知らせるために鳴いて、それから順に、知らせを聞いた魔獣たちが次々と鳴き始めて。それで起きた時には、洞窟も森もすっかり大騒ぎになっていたんだ。
しかも、私にはただ鳴いているようにしか聞こえなかったけど。この鳴き声には、人間がどれくらいの人数で来ているとか、戦闘能力はどのくらいかとか、いろいろな情報が含まれていて、森へ来た人たちが誰なのかまで分かるんだって。
ということで、森へ来たのは、グルルたちに定期的に会いに来ている人たちだったよ。
数日前にグルルたちは、この人たちの話をしていてね。森へ来る人間の中では、この人たちが1番安全だから、できるだけこの人たちに来てほしいって言っていたの。その人たちが来てくれたんだ。
だからグルルは鳴き声を聞いた途端、その人たちを迎えに行っちゃったみたいで、私たちが起きた時にいなかったんだ。
そうして起きた私は、様子を見に行きましょうってシエラに言われて、洞窟の頂上へ。そうしてシエラに言われた方を見ると、何か黒いもやもやした物が見えたような気がして、あれ何? って聞いたの。
どうやらタガットがね、パンのために私を保護してもらわないといけない。だからもし、保護してくれそうな人間が来た時は、襲うんじゃないって、誰でも構わず襲ってくる魔獣たちに、言ってくれていたみたいなんだけど。
ただ、いくらタガットがそういう魔獣たちのトップだと言っても、性格的にそういう魔獣は、襲う時は襲うからね。
だから、そんな危険な魔獣たちから、来てくれた人たちを守るために、魔獣たちがその人たちの護衛をしながら、こっちに向かって歩いてきてるところだって。
野生の魔獣が人の護衛? それってこの世界では普通のことなのかな? ライトノベルや漫画では、見たことないけど、私が読んでないだけかもしれないし。なんて思いながらも、守ってもらえるなら安心だし、まぁ良いかってことで。
数時間後には、この洞窟に着くだろうということで、私は残りの荷物の準備をすることに。いつでも人が来て良いように、荷物の整理はしていたんだけどね。最後の準備をしないとってね。
すぐに私たちの空間へ戻って、ベッド代わりにしていた魔獣たちの最高の毛皮をしまったり、食器をしまったり、どんどん荷物をマジックバッグに入れていったよ。
ちなみに、もし保護してもらえなかったら、私はこのままここで暮らす予定だし。保護してもらえても、ここは私の空間として残しておいてくれるって。
私がパンを作って持ってこられるようなら、この空間は絶対に必要だし、私たち仮の家族の大切な空間だから。そうシエラは言ってくれたんだ。とっても嬉しかったよ。
そうして荷物の準備が終わった頃、今度は魔獣たちが私のところへ来てくれた。お別れになるかもしれないからって、お別れの贈り物を持ってきてくれたんだ。
私はみんなに、突然ここへ来た私に優しくしてくれてありがとう。それから、私を受け入れてくれてありがとうって、感謝の気持ちを伝えたよ。
みんなにどれだけ良くしてもらったか……。本当はパンを置いていってあげたかったけど、これからどうなるか分からないから、置いて行く事ができないのが、本当に申し訳ない。
ただ、もしこのまま街へ行くことができたら。そして今すぐは無理かもしれないけど、その時はいつか必ずペン作りを成功させて、みんなに持ってきてあげるんだ。
と、そんなことを考えていた私。ただ、そんな私の横で、私のマジックバッグに、貰った贈り物をひょいひょいと入れながら、来てくれたみんなに。あれが足りない、これが足りないと、他にも持って来させようとしているモルーの姿が、何とも言えなかったよ。
みんな、最後までごめんね……。
と、まぁ、こんな感じで、準備のバタバタがひと段落着いたのは、森へ来た人たちが、あと少しで洞窟に着くって頃だった。
とりあえず最初は、いつもグルルたちがその人たちと話すために使っている空間で、グルルだけで話をすることに決めていて。私はその間、話し合いが行われている空間の隣の空間にいることになっていたから、その空間へ移動したよ。
『おいらがいないと、ヒトミは何にもできないから、向こうに行っても、おいらに任せるんだじょ!』
「う、うん」
『モルー、あなた向こうへ行って、迷惑かけるんじゃないわよ』
『迷惑なんてかけないんだじょ! おいらお兄ちゃんだもんなんだじょ!!』
年はどう考えても、私の方が上なんだけどね。まぁ、この世界へ来てからっていうなら、確かにモルーの方が、この世界に生まれてから長いから、お兄ちゃんはお兄ちゃんか。私は見た目もチビだしね。
『はぁ、大丈夫かしらね。それに、ちゃんと訴えるのよ。グルルもいるから大丈夫だとは思うけれど、契約していなくても街には入れるとはいえ、最初は渋るでしょうからね』
『もちろんだじょ!! 絶対に諦めなんだじょ!!』
はぁ、ドキドキする。あ、保護してもらえないとか、街へ行けないとか、そのことでドキドキしているんじゃないよ? だって、もしそれがダメでも、私がいられる場所はここにちゃんとあるから。大好きなみんなもいるし。
私がドキドキしているのは、パン作りが当分できないかもしれないってこと。みんながパンのことでガッカリするところを、あまり見たくないから。




