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避難行2晩目:襲撃

わけもわからぬまま避難の集団に加わらざるを得なかった。ただ、唯一の救いはその避難が順調に行っていること。このまま何事もなく避難できればいいのだが……

ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ―


 天幕で気持ちよく寝ていたら外で金属が打ち鳴らされる音が飛び込んできた。寝ぼけ眼をこすりながら外に這い出る。


「ゴブリンだ!ゴブリンが侵入したぞ!」


 その声に今までの眠気も一気に吹き飛んだ。荷物に紛れた武器を探すが混乱してすぐには見つからない。ようやく見つけた剣はすぐに起きてきた小谷君に渡し、自分は手槍を持った。筋力的にもそうした方が良いだろう。


 武器はとったものの、どうしたらよいのだろうか。あたりを見回すとかがり火に照らされて何人もの人が動き回っている。


「藪の中に気をつけろ!」


 数日前に藪の中のゴブリンに奇襲されたことを思い出した。辺りに目を凝らしつつ、何か動くものがないかと探す。心臓の鼓動が高鳴っている。


「じいちゃーん」


 少し離れたところで悲鳴がした。そちらに視線を向けると例の少女の1人が尻餅をついている。はたして、その目の前にはゴブリンが立っていた。さらにまずいことには、そのゴブリンは短刀か包丁のようなものを持っている。駆けつけようとするが距離的に間に合わない。


ガバッ――


 ゴブリンの持っている包丁のようなものが振り下ろされた瞬間に、その女の子に誰かが抱きついた。その包丁はその人の背中に突き立てられたように見える。


「うぐっ」


 その喉の奥でなったような悲鳴は女性の声だった。誰かなど考えている暇はない。今度こそ失敗を食い返さない。そう心に決めながら、もみ合いに突進してゴブリンの脇腹を突いた。その勢いでゴブリンと絡み合いながら倒れたが、手応えはあった。すぐに起き上がって止めを刺す。


「このっ!……」


 自分でも半狂乱なのがわかるほどに興奮して何度も手槍を突き刺した。気づいた時にはゴブリンが息絶えて転がっていた。


「滝本さんっ!」


 駆け寄ってきた山田さんの叫びでようやく気がついたが、女の子を庇って倒れたのは滝本さんらしい。考えたくないことだが、確かに背中あたりに包丁を突き立てられていたはずである……


「あっ……あー!」


 声にならない声を上げている。死んでしまった木下君のことが頭に浮かび慌てて叫んだ。


「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!?」

「お姉ちゃーん。ごめんなさい。ごめんなさい」


 傍らで少女が泣き叫んでいる。


「大丈夫、大丈夫だから……」


 滝本さんがそう答えるが、本当に大丈夫なようには思えない。血を流している部位は肩口付近であるが、かなりの出血量に思える。


「どうした!?」


 隣のパリッセのグループから人が押し寄せてきた。少し遅れて杖をついたパリッセさんがやってきた


「お姉ちゃんが私のこと助けてくれて……で、それで……」


 女の子が泣きじゃくりながらパリッセさんの足元にしがみついた。


「ばあさん、ばあさんはおるかー!?」


 パリッセさんがそう叫ぶと、一人の女性が駆け寄ってきた。半分暗闇の中かがり火に照らされたその顔は確か女の子が花輪を渡していた初老の女性である。パリッセさんの妻であろう。


「お嬢さん!?」


 そう叫んで数瞬の後、状況を理解したようで頷くと、傍らの男に松明を、と指示をして照らさせた。その松明のオレンジの光で分かりづらいが、服が血で染まっているようだ。


「大丈夫。すぐによくなるから」


 大丈夫?どう見ても大丈夫そうではないのだが……その女性はそう言うと懐から何やら本を取り出し眺めている。何をしているのだろうか。中世のまじないかなにかだろうか。これですぐによくなる?そんなわけないだろ。任せてはおけない。こういう時は患部を特定して布か何かで圧迫止血だろうか。とにかく患部を確認しようと近づくと、男の一人が頭を振って自分をどかしてきた。


「なっ……」


 意図をは汲みかね、その男の表情を読み取ろうとしていると何やらおばあさんがつぶやき始めた。


「わが祈り、イシュタルの灯火となりて汝の傷をいやさん…、ヒーリング!」


 その言葉とともに、かざした手から仄かな光が溢れてきた。数十秒ほど経つと瀧本さんのうめき声はなくなり、おばあさんが顔を上げた。


「ふぅ……これで大丈夫」

「あ……」

「傷口は塞がったけど、痛みはまだあるだろうし出血がひどかったから、しばらく動かない方がいいわ」


 これが魔法か。かけられた本人の瀧本さんは見ている側以上に何が起こったのか分からなそうである。ゴブリンを倒せた達成感は全くと言っていいほどない。あるのは、なんとか2人目の死を回避できたという安堵が転がっているだけである。


「パリッセ!パリッセの翁はいるか!?」


 あまりの出来事に頭がついていかない中で遠くからアグスティナさんのらしき叫び声が近づいてきた。


「どうした。ここにおるが」

「ちょっとついてきてくれ。トロールが出たかもしれん」


 その言葉で数日前に仲間を殺されたことを思い出し顔が引きつってしまう。揺れる炎の光で周囲の表情は読み取りづらいが、他の人の表情はどれも似たり寄ったりだった。


 アグスティナさんとパリッセさんが連れ立って話している横で、部下たちが忙しく動き回っている。


「侵入したのは多くなさそうだ。数匹程度だろう」

「念のため、数人ずつのグループに残りがいないか探させている」


 かがり火と松明の炎で揺らめく人が忙しく動き回っているのを眺めていた。一応我々も何か協力しようと武器を各自が持ってみるものの、何をしたら良いかわからず、ただただ眺めているだけであった。


「戦える者は全員かがり火の周りに集まれ、防壁を作る」


 騎士たちがそう呼びかけ回り始めた。戦える者、防壁、とあまり聞きたくない単語が飛び交っている。人の流れに押し出されるように仕方なくかがり火のあたりに足を進めた。


 少し小高くなっている野営地からは、下の方に点在する森や林らしきものが見える。外周にぞろぞろと人が集まり始める中、馬に乗った騎士たち数人が馬上から森の1つを指しながらパリッセさんと何やら話をしている。やはり、この集団のリーダーなのだろう、その先頭にはアグスティナさんの姿が見える。


「今からあの森にいるトロールを誘い出す。たぶん数は10程度。目の前のくぼ地で掃討するが、撃ち漏らしたのがいた場合ここで食い止めてくれ」


 トロールを想像するだけで心臓の鼓動が早くなるのを感じた。周囲の人たちもざわつき始める。


「そりゃゴブリンだけでこの人数を襲うわけないか」

「さっき侵入したのは先走ったヤツか」

「トロールのおこぼれに預かろうって魂胆だったか」


 ただ、周囲の人たちはさほど慌てていない。いや、むしろ落ち着いているようにすら感じる。革の胸当てなどをしている人もみかけるが、ほとんどの人が適当な武器を配られた農夫にしか見えない。あのトロールを、それも10以上の数を被害なしで食い止められるのだろうか。


 騎馬に乗った数人の騎士たちが駆け下りていく。先頭は髪をたなびかせたアグスティナ。固唾をのんでそれを見守る。森に近づくと同時に森に向かって閃光が走った。その直後、騎士たちは森のふちを舐めるように旋回する。魔法や弓矢を森に打ち込んでいるのだろうか。何事かと目を擦っていると、突然森から巨体を震わせたトロールたちが躍り出てきた。


 馬はさらに旋回を続けると、こちら側に戻ってくる。その後ろに続くのはトロールの集団で、一部は手に丸太らしきものを持っている。馬よりは遅いようだが、その巨体とは思えない速度である。人間の全力疾走よりも速いように感じる。あの時逃げ出していても追いつかれていたであろう。そうしなくて良かったと一瞬安堵をするが、あれが集団で向かって来る恐怖が後に続いた。


「誘い出したから、うちらであれを殺せってことか?」


 隣にいた高部君が唸った。槍を持った手にじんわりと汗をかき、緊張で自分が真っすぐ立てているのかわからなくなる。地に足がついていないとはまさにこのことなのだろう。その距離は徐々に縮まってくる。帰ってくる騎士たちの顔が見える距離まで来た時、2つの集団に分離し左右にわかれた。その馬群が左右に分かれたことで後ろから迫ってくるトロールの集団と正面から対峙する形になった。腹を括ろうとするが、恐怖が打ち勝ってしまう。その小山のような怪物の目が認識できる距離になった。距離があるにも関わらず、まるで全てのトロールが自分を睨みつけているかのように感じてしまう。


「パリッセ!」

「ほいほい」


 かがり火の前で停止したアグスティナさんが叫ぶとパリッセさんが気だるそうに応じた。


「大いなるゾショネルの加護により炎の精霊に命ず……、ファイアストーム!」


 そう叫んだかと思うと、坂を駆け上がってくるトロールの集団のど真ん中に何本もの火柱が巻き上がった。あたり一面が明るくなり、人々の表情がはっきりと見える。熱風とともに火の粉が舞い上がってくる中、炎に包まれて断末魔の声を上げるトロールに、自分にまとわりついた炎を消そうと転げまわるトロールがあちらこちらに見える。


「油断するな、窮鼠なんとやらで、突っ込んでくるのもいるかもしれない」


 周囲から喝采が飛ぶ中、騎士の一人がそう叫んだ。武器を取り直して身構えたが、集団の最後方にいた3匹だけがほうほうのていで逃げ出していくだけだ。数匹動くものもいたが、騎士たちが転げまわるトロールに冷静に止めを刺していく。もとの明るさに戻り、人々の表情は分からなくなったが、声は明るく宴のようである。


「さすがパリッせの爺じゃ」

「これなら息子さんたちと一緒に現役復帰できるんじゃないか?」


 薄々気がついていたが、どうやらこの地域の有名人らしい。


「馬鹿いうな。足をやってなくてももう年じゃわい。1発で撃っただけでもうフラフラじゃ」


 周りの雰囲気から察するにどうやら危機は去ったらしい。結局自分たちはトロール相手には震えて立っていただけであった。


「まぁ、あのトロールももう襲ってこんだろうし、安心かのぉ」

「うむ。とは言え。警戒は強化しよう。各集団から交代で見張りを出すようにしてくれ」


 馬からアグスティナさんがそう言って馬から降りてきた。これ以上は寝られそうにないので自分から志願し最初の見張りにつくことにした。途中で高部君が交代をしてくれたが、その後も自分たちの無力さと最善の行動はなんだったのか、何よりもこの世界で今後どうやって生き抜いていけるのかを考えながら眠れずに横になっていただけであった。


週1回の更新を目指していたはずが、少し忙しくなったのと、某ゲームのイベントで時間がとれず……


そして何よりの問題は呪文詠唱とか考えるのがめんどくさくて某名作STGのをそのまま……いつかこれちゃんとしたのに変えます。

あ、ちなみに、一番書きたい話はその某ゲームのように実際の民族紛争("民族"という名称は実はダメなのですが)を元にしたファンタジー物語だったりする

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